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「本当、助かった。さすが、タケルちゃん。どうなることかと思ったけど、俺の思った通りだ」
お城の縁側で、いつかのようにレイくんと並んで座っている。
渡り廊下の向こう側では、やっぱりいつかのようにハチローくんもいるけども。
今回の呼び出し理由は、お礼を言うためらしい。
あれから、ハチローくんのストーカー行為は治まってきている。
他のブシよりちょっと多いくらい。
でもシフトの時間は比較的守っていて、夜番でもない限りお城に行くこともなくなった。
「まあ、ハチローくんが頑張ったからっていうのが一番大きいけどね」
「タケルちゃんがそばにいてこそでしょ」
「……そうだったら、まあ、うん」
ハチローくんもそう思ってくれるなら嬉しいけども。
レイくんが照れてるわたしをニヤニヤと見てくる。くそ、ちょっと恥ずかしい。
話題を変えるためにも、いつか家族から送られてきた写真をレイくんに見せる。
お父さんとお母さんの写真には懐かしいとニコニコと笑っていたが、なぜかミコトの写真にはゲラゲラと笑いだす。本当なんなんだ、あんたたちは。
それを見て、ふと思い出した。
「ねえ、レイくん。わたしとハチローくんっていつ離婚すればいいの?」
「えっ! 別れるの!」
ニヤニヤ写真を見ていたレイくんが顔を上げた。
真ん丸な目が、さらに丸くなっている。
「それはそうでしょ。元々、ハチローくんのストーカー行為を止めるための結婚でしょ」
そして、今、ハチローくんの行動も気持ちも落ち着いたみたいだし。
「十三歳の子供との結婚はさすがに犯罪すぎるから、できるだけ早く別れたいんだけど」
「いや、それは……」
レイくんは渡り廊下の先にいるハチローくんを見た。
さすがに距離があるから、ハチローくんはわたしたちが何を話しているか分からないだろう。
「一応聞くけど、タケルちゃんってハチローのこと嫌い?」
「そんなわけないでしょ」
しっかりしてるし、かっこいいし、かわいいし。ちょっと真面目過ぎるし、レイくんに一途すぎるところはあるけど、それも悪いわけではないし。嫌いになるところもない。
「それならこのまま結婚しててもよくない?」
「だから年齢差が」
「気になるのって年齢だけ?」
「もちろんそれだけじゃないよ。ハチローくんのことは好きだけど、そういう好きじゃないし、ハチローくんだってそうでしょ。そもそも結婚はちゃんと好きな人としないと」
「……この世界では利益のための結婚が多いんだけど」
「え、レイくんもそうなの?」
ホムラ様なんて立場だったら政略結婚的な? なんらかの思惑がからんでいるとか?
「おれは違うよ! おれは恋愛結婚! チサのことがちゃんと好きだから……って、おれのことじゃなくて! ハチローになんて言って離婚するつもり?」
「え?」
「元々はモモジやおれに頼まれた結婚だから、って? それは理由にはならないよ。あいつだっておれが言ったから結婚したわけだし」
「でも、そもそもその命令をするはめになった原因がなくなったわけで……」
レイくんはどこか憐れむようにわたしを見た。
「ハチローだって結婚を命令された理由は分かっているかもしれないけど、その理由がなくなったら離婚とは考えてないんじゃない? むしろこれからは結婚生活を大切にしようと思っているかもしれないよ」
「いや、それは……。でも、話が違う。わたしはただこう、従弟の子を面倒見るみたいな感じで、ただ家族みたいになるって感じで……夫婦になるつもりはないんだよ」
「でも、もう夫婦でしょ?」
「ちっがう!」
否定にも力がこもる。
「だいたい命令で結婚したんだから、離婚しろって命令すればいいだけでしょ!」
「えー……二人、お似合いだと思うし、ハチローが落ち着いたっていってもまだ安心できないし、もう少し夫婦生活続けられない?」
確かにまだちょっとハチローくんのことは心配って言えば心配だけど……。
「でも、このままズルズルと続いていても、お互いによくないと思うんだけど。お互いに好きな人が出来たときとか……」
「え、タケルちゃん、好きな人いるの?」
「いないよ。今はいない! 将来的な話!」
「いないならいいじゃない。もうしばらく続けてよ。ハチローのためにも」
レイくんは優しいお兄ちゃんの顔で言う。
ハチローくんもこういうところに懐いたのかもしれないなんて思っていたのに……。
「それにおれ、そんな酷い命令したくないし」
なに言ってんだ、こいつは!
「最初に! もう! 酷い命令をしてるんだよ!」
「なにをしているんだ!」
思わずレイくんの頬を引っ張ると、ハチローくんがとんでもない形相で走ってきた。
だから怖いって、その顔!




