第7話 『きみは誰?』
「じゃあここで、十円玉ゲェェぇぇムッッ!!!!!!」
トイレに行って少しスッキリしたのか、顔色が少し戻った田中が人差し指を高くつき上げ、新たなゲームを提案した。
「十円玉ゲーム? 何それ」
「ルールは簡単。みんなに十円玉を用意してもらいます。俺が「はい」か「いいえ」で答えられる質問をします。その質問に対して「はい」だったら表に、「いいえ」だったら裏にして十円玉を置いてください。十円玉は誰のものかわからないようにシャッフルするので、誰が答えたかはわかりませーーーーん!」
「まずは~好きだった人と合コンで再会したことがある人!」
俺は思わず噴き出した。なんだそのピンポイントな質問!
「いやいやいや、ないだろ」
「フィクションの見過ぎ」
佐藤くんと鈴木くんがやいやいと田中に対してツッコむ。だが。
【結果:はい 5人】
「え!??? 打率高くね!???」
佐藤くんと鈴木くんがおののく。俺が顔を上げると、秋葉と目が合った。秋葉は恥ずかしそうに口元に手を当てて、笑った。
「ちょっとエッチな質問しちゃお~~! ワンナイトしたことがある人」
「おい、田中酔いすぎだぞ!」
「別にいいわよ」
俺が制止しようとしたら冬子がふん、と鼻を鳴らした。
【結果:はい 2人】
「おお~~~~~」と男性陣が声を上げる。
俺が顔を上げると、冬子が俺に向かってチュッとリップ音を鳴らした。
「童貞、もしくは処女である!」
【結果:はい 2人】
……おお!? この結果は!?
秋葉と冬子と俺と田中は除くとして、他の四人の誰かが処女か童貞…? ごくりとつばを飲み込み、俺はそちら側のテーブルを見やると、佐藤くんと鈴木くんが恥ずかしそうにもじもじしていた。お前らかい。
「じゃあ~最後! この合コンで~気になってる人がいる!」
合コンの定番質問。
【結果:はい 8人(全員)】
「おお~! 盛り上がってきたあ!」
とりあえず「はい」にしておくのが定石ではあるが、俺はこの回答にドギマギした。
顔を上げると、全員とーー目があった気がした。
「俺、ちょっともう一回トイレ行ってくる……」
田中がそう言って立つと、俺の隣の空いた席に冬子がやってくる。俺と冬子、その正面に春奈と夏帆が座る席配置になった。
「坂口さんは、誰が気になってるの?」
「ええっうーんそうだなあ……」
直球な問いかけに僕は歯切れの悪い返事をする。女性陣三人の前で、どういう答えが正解なのか分からない。
「迷ってるんだったら、この後、私と一緒に二次会いこうよ」
冬子は積極的だ。机の上に乗り出すような形になると、豊かな胸が強調される。
「へっ!? 俺?」
俺は男性陣を見やった。佐藤くんと鈴木くんは、秋葉が一人で相手をする形になっている。通常の合コンならどこかのタイミングで、誰が誰を狙っているかすり合わせするので、このタイミングでの二次会の誘いに俺は答えかねていた。
「ちょっと、冬子さん抜け駆け良くないよ~。ねえ、坂口ぃ。あたしと行こうよ」
春奈が冬子との距離を離すように、俺の肩を掴んで自分のほうに寄せて見せる。胸が頭に当たる。
「坂口くん、私ももうちょっと話したいな。実はもう終電がなくって」
夏帆も参戦してきた。高校時代のヒロインの誘い。当時の自分からは考えられない。
3人からのお誘いに、俺の頭はパンクしていた。なんでみんなこんな思わせぶりなことをしてくるんだ!?
その時、
「創くん!」
誰かが俺を呼んだ。




