第5話 『フリートーク・三回目 渡 秋葉』
また席を移動すると、次に向き合ったのは渡 秋葉だった。
俺は正直、彼女に対面するのが一番気まずかった……!!
大学三年生の時に、俺から話を切り出して別れた。最初で最後の彼女だ。
「……久しぶり」
移動してきた俺に、秋葉は控えめに左手を振りながら笑顔で迎えてくれた。
普段はぱっちりした瞳が 笑うと綺麗な弧を描く「にんまり」という表現がぴったりな笑顔。
懐かしさに胸が苦しくなる。
「飲み物なくなってるじゃん。今のうちに頼もうよ。何がいい?」
そう言って、彼女は注文用のタッチパネルをもつ。
「あ、ああ、じゃあ生ビール……」
「オッケー」
「……今、マネージャーなんだね」
「そう、所属してたところにそのまま拾ってもらった。裏方も楽しいよー」
秋葉は俺と同じ大学に通いながら、アイドル活動をしていた。大学一年生の時、俺はSNSで見つけて、ちょっと可愛いなと思っていた地下アイドルのライブにフラッと行ったことがあった。秋葉原の小さな箱でライブを見ていたら、その水色の衣装の子に見覚えがあった。
――あれ、同じクラスの渡さんでは……?
次の日、俺はデリカシーや配慮などというものは思い浮かばず、
次の日教室で、秋葉に「『チェリーボーイズ・アタッカー』のライブ見に行ったんだけど、これって渡さん?」と直球で尋ねてしまった。彼女はアイドル活動を隠していたようで、
しばらく目を泳がせた後 顔を真っ赤にしてうなずいた。
そこからなんだか秘密を共有する仲になり、
彼女がアイドル活動のために欠席する時には代返したり、
テスト勉強のフォローをしたりするうちに仲良くなり
俺たちは付き合った。
クラスではいたって地味に、顔を隠すように前髪を下ろして、メガネをかけて地味なトレーナーばかり着ていた彼女だったが、ステージの上では猫耳とフリフリのミニスカートをはいて踊っているギャップ、そして俺だけが彼女の秘密を知っているという優越感はたまらなかった。
だが、彼女との付き合いに、次第に息苦しさを覚え、大学3年生の時に俺から別れを切り出した。
「応援してもらったのに、ごめんね」
俺は首を横に振った。アイドル時代は童顔と低身長を生かしたロリキャラだったのに、そう言って笑う彼女は、ひどく大人びて見えた。
そして落ち着いた声でこう続けた。
「さっきの第一印象ゲーム……坂口君を選んだの。未練がましい、かな……?」




