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死なない皆と死んじゃう自分【異世界ファンタジー】  作者: 暇人
第一章 親水王国《エグゼルト》

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第八話 魔法を使ってみよう

セイア活躍回。あと司頑張れ回。

 三人はリュシアの家へ戻った。


 家に入ると、司はさっそくリュシアへ尋ねた。


「んで、試してみなきゃ分かんないんだろ? 魔力ってどうやって分かるんだ?」


「一番簡単なのは、魔道具を使う方法です」


「魔道具で分かるのか?」


「はい」


 リュシアはそう答えると、部屋の隅にあるタンスへ向かった。


 引き出しを開け、そこから小さな魔道具を取り出す。


 手のひらに収まる程度の大きさで、中央には小さな石のようなものが埋め込まれている。


「これです」


「へぇ……」


 司は興味深そうに魔道具を見る。


「これに手をかざすだけでいいのか?」


「はい」


 リュシアは魔道具をテーブルの上へ置いた。


「赤色に光れば魔力はありません。緑色に光れば、魔力があります」


「なるほど」


「ただ、一度で反応しないこともあります」


「そうなの?」


「はい。たいていの場合は、二、三回試せば分かります」


「じゃあ、やってみるか」


 司は魔道具の前に座った。


「こう?」


「はい。そのままで大丈夫です」


 司が魔道具へ手をかざす。


 しかし──。


「……?」


 何も起こらない。


「光らねぇな」


「そういうこともあります」


「魔力がないってことじゃないのか?」


「まだ分かりませんよ」


 リュシアが微笑む。


「もう一度やってみましょう」


「分かった」


 司は一度手を離し、もう一度魔道具へ手をかざす。


 すると──。


 魔道具の中央にある石が、淡く光り始めた。


「……ん?」


 次第に光は強くなっていく。


 そして、はっきりとした緑色の光を放った。


「おお……!」


 司が目を見開く。


「これって……」


「はい」


 リュシアが頷く。


「司さんには、魔力があります」


「……俺に?」


「はい」


 司は自分の手を見る。


「本当に?」


「本当です」


 リュシアは笑顔で答えた。


「魔力があることは、これで確認できました」


「そっか……」


 司は少し嬉しそうに魔道具を見る。


「じゃあ、俺も魔法が使えるってことか?」


「それは、まだ分かりません」


「え?」


 司が振り返る。


 セイアが静かに口を開いた。


「魔力があることと、魔法が使えることは別です」


「……そうなのか?」


「はい」


「魔力があるのに、魔法が使えない人もいるのか?」


「います」


 セイアが頷く。


「私もそうです」


「……あ」


 司はセイアを見る。


「そういえば、セイアは魔法が使えないんだったな」


「はい。ただ、魔力はあります」


「なるほど……」


 司はもう一度、自分の手を見る。


 自分の中に魔力がある。


 それは分かった。


 しかし、魔法が使えるかどうかはまだ分からない。


「じゃあ……」


 司は顔を上げる。


「俺が魔法を使えるかどうかは、実際にやってみないと分からないってことか」


「その通りです」


 リュシアが頷く。


「でしたら──」


 司は立ち上がった。


「試してみようぜ。魔法が出せるか」


 リュシアとセイアが顔を見合わせる。


「そうですね」


「はい」


 こうして司は、初めて魔法を使うことになった。


 ◇〇◇


 三人は庭へ出た。


 さっそくリュシアが魔力について説明する。


「魔力というのは、生まれ持った容量があります。その範囲内なら、鍛えることで魔力を増やせます」


「つまり、魔力を増やすこともできるってことか?」


「はい。そういうことです」


「最初から多い人もいるのか?」


「はい。人によって違います」


「なるほどな」


 司が頷く。


 続いて、セイアが魔法について説明を始めた。


「魔法は、属性との相性があります」


「相性?」


「はい。人によっては、八属性すべての魔法を使える人もいます。逆に、特定の属性しか使えない人もいます」


「へぇ」


「それに、同じ属性でも熟練度によって使える魔法は変わります」


「じゃあ、強い魔法を使うには?」


「より高度な魔法を使うには、その属性との相性が良く、なおかつ十分な魔力が必要です」


「なるほど……」


 司は少し考える。


「まあ、とりあえずやってみようぜ」


 司は前を向いた。


「んで、魔法ってどうやって出すんだ?」


「まずは氷から始めましょう」


 リュシアが答える。


「目の前に氷が出るところを想像してください」


「想像するだけ?」


「はい。あとは氷との相性が良ければ、魔法が発動します」


「分かった」


 司は目の前を見る。


 氷。


 目の前に氷が出現するところを想像する。


「…………」


 何も起こらない。


「……出ないな」


「もう一度やってみましょう」


「おう」


 二回目。


 やはり何も起こらない。


「……難しいな」


「もう一度です」


「分かった」


 三回目。


 司が目の前に氷が現れるところを強くイメージする。


 すると──。


 ぽんっ。


「……ん?」


 司の目の前に、小さな氷が現れた。


「……おお」


 司は目を丸くする。


「これが魔法か?」


「はい。これが魔法です」


 リュシアが嬉しそうに頷く。


「意外と……ちっちゃいんだな」


「最初はそれくらいでも普通ですよ」


「そうなのか?」


「はい。練習すれば、もっと大きなものも出せるようになります」


「へぇ……」


 司は目の前の小さな氷を眺める。


「ほかの魔法も試してみようぜ」


「もちろんです」


 リュシアが頷く。


「風なら風が吹くところを、斬撃なら斬撃が飛んでいくところを想像してみてください」


「分かった」


 司は次々と試していく。


 風


 水


 草


 土


 斬撃


 雷


 しかし──。


「……出ない」


 何度試しても、氷以外の魔法は発動しなかった。


 司は再び氷を試してみる。


 すると、今度はすぐに小さな氷が現れた。


「……やっぱり氷だけだな」


「氷との相性が良いんですね。司さんは」


 セイアが言う。


「そうみたいだな」


 司は目の前の氷を見る。


「じゃあ、もっと大きいのも出せるのか?」


「試してみますか?」


「いいな」


 司は少し離れた場所へ移動する。


「今度はもっと大きな氷を想像すればいいんだな?」


「はい」


「分かった」


 司は目の前に、大きな氷が現れるところを想像する。


 すると──。


 ドンッ。


「うおっ!?」


 司の目の前に、高さ五十センチほどの氷が出現した。


「……意外とデカいもの出せるんだな」


 司は目の前の氷を見上げる。


 そして、ふと気づいた。


「……あれ?」


「どうしました?」


「いや」


 司は氷を見ながら呟く。


「五十センチって……」


 日本と同じ単位。


 この世界でも、メートル法が使われているらしい。


「まあ、それは今はいいか」


 司は再び氷へ視線を戻す。


「これ、もっと大きくできるのか?」


「はい」


 セイアが答える。


「大きなものなら、十メートルほどの氷を出せる人もいますよ」


「十メートル!?」


 司が目を見開く。


「そんなの出せるのかよ!?」


「はい」


 セイアは静かに頷いた。


「もっと練習すれば、司さんにもできるかもしれません」


「……マジか」


 司は目の前の氷を見る。


 小さな氷から始まった。


 けれど、まだまだ大きくできるらしい。


「……魔法って、すげぇな」


 司は少し嬉しそうに笑った。


「なぁ、リュシア。これって攻撃にも流用できるよな?」


「はい。もちろんできます。例えば、氷で相手の身動きを封じるのも、空中から氷を飛ばして相手に当てるのも、剣にして攻撃することもできます」


「んじゃぁ、やってみないか?」


「そうですね。やってみましょう」


 セイアが頷く。


 司もそれに応じる。


「まずは……棒状にしてみるか」


 剣を作るための基本として、まずは棒状の形を思い浮かべる。


「……こうか?」


 司が念じる。


「うおっ! 出た!」


 司の手の中に、氷でできた棒が現れる。


「そのイメージです」


 セイアが頷く。


「これからは私が教えますね」


「頼む」


 どうやら、ここからはリュシアよりも魔法に精通しているセイアが司に教えるようだ。


「では、次は剣の形を思い浮かべてみてください」


「剣か……」


 司は、頭の中に剣を思い浮かべる。


 細長い刀身。


 柄。


 そして、刃。


「……」


 念じる。


 しかし──。


「……出ないな」


「もう一度やってみましょう」


「分かった」


 司は再び目を閉じる。


 もう一度、剣を思い浮かべる。


 だが、何も起こらない。


「……二回目もダメか」


「焦らなくて大丈夫ですよ」


 セイアが静かに言う。


「形をより具体的に想像してみてください」


「具体的に……」


 司はもう一度、剣を思い浮かべる。


 今度こそ。


「……出て来い」


 そう願った瞬間──。


 司の手に、一本の氷の剣が現れた。


「……!」


「できましたね」


「うおっ! 出た!」


 司は嬉しそうに氷の剣を眺める。


「ちゃんと剣になってる……」


「はい」


「すげぇな、これ」


 司は剣を持ったまま、少し考える。


「……試しに、何か切ってみてもいい?」


「構いませんよ」


 リュシアが頷く。


 司は庭の隅に生えている草へ近づく。


「じゃあ、ちょっとだけ……」


 氷の剣を振る。


 スッ。


 草が綺麗に切れた。


「おお……!」


 司が目を見開く。


「結構切れ味いいんだな。スパッと切れる!」


「そうですね」


 セイアが剣を眺める。


「例えば、それに雷で電気を通せば、相手を感電させることもできます」


「さらっと恐ろしいこと言うなぁ、セイアは」


「そうですか?」


「そうだろ」


 司は苦笑する。


「んで、次は何作ってみる? 剣は出たし」


「盾とかどうですか?」


 リュシアが答える。


「盾かぁ……」


 司は氷の剣を見る。


「これで攻守両方できるってことか」


「できたらですけどね」


「じゃあ、やってみるか」


 司は剣を消さず、そのまま盾を思い浮かべる。


 丸い盾。


 腕を覆える程度の大きさ。


 しっかりと身を守れる形。


「……」


 念じる。


 すると──。


「おっ」


 今度は一度で成功した。


 司の目の前に、氷の盾が現れる。


「出てきたな」


「すごいですね」


 リュシアが微笑む。


「一度でできました」


「さっきより簡単だったな」


 司は盾を眺める。


「というか……」


 ふと気づく。


「さっきから作ったもの、全然溶けないんだけど」


「そりゃぁ、魔法ですから」


 セイアは不思議そうに首を傾げる。


「……?」


 まるで「当たり前ですよ?」とでも言いたげな表情だった。


「当たり前ですよ?」


 リュシアまで頷く。


「……そうなの?」


 司は二人を見る。


「じゃあ、これってどうやって崩すんだ?」


「念じるだけです」


 セイアが答える。


「念じるだけ?」


「はい」


「じゃあ……」


 司は氷の盾を見る。


「壊れろ」


 そう念じた瞬間──。


 パキッ。


 氷の盾に亀裂が入った。


 そして、そのまま崩れ落ちていく。


 続けて、先ほど作った棒や氷の剣も次々と崩壊していった。


「……おお」


 司はその光景を眺める。


「本当に消えた」


「はい」


「これも魔法なんだな……」


 司は自分の手を見つめる。


 ついさっきまで、自分には無縁だと思っていた魔法。


 それが今は、自分の意思ひとつで形を作り、そして消すことができる。


「……なんか、ちょっと楽しくなってきたな」


「ふふっ」


 リュシアが小さく笑う。


「それなら、もう少し練習してみましょうか」


「おう!」


 司は再び魔力を集中させた。


To be continued

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