第九話 魔法を使ってみよう その2
魔法回。長くなる予定。
「なぁ、リュシア。この魔法って剣みたいに攻撃にも流用できるよな?」
「はい。できますよ? 例えば地面から氷の棘を出したり、空中からその氷の棘を飛ばしたりすることもできますね。あと、この前みたいに氷の刃で人を刺すこともできます」
「いや、氷の刃はちょっと……」
「そうですか。便利ですのに」
「それより、まずはその地面から氷の棘を出すってやつやろうぜ」
「では、念じてみてください」
司は念じる。
一回目。失敗。
二回目。失敗。
そうやって数回やると、地面から小さい棘が出る。そのまま続ける。
もう数回やると、地面から氷の棘が出る。それがその辺の木に刺さる。
「これなら攻撃に使えそうだな!」
「そうですね」
セイアが答える。
「んで、これを飛ばすこともできるのか?」
「想像してください。魔法は想像です」
司は棘が空中に出て飛ぶ想像を固める。そして、出ろと念じる。
すると今度は一度で小さい棘が飛んでいった。
かと思えば、途中で横にそれて落ちてしまう。
そこからも失敗を繰り返し、十数回やったその時。
今度はまっすぐ前に飛んでいき、その先の木に刺さる。
「これ、人に当たったら痛そうだな」
「はい。絶対痛いと思います」
リュシアが答える。
「では、さっきみたいに防御にも使ってみてください」
司は一度やったことなので、体をすっぽり覆えるほどの盾を作る。
「できたぞ。というか、これって大きさ変えれば……」
「やってみてください」
大きな壁のような氷をイメージする。
司たちの目の前に氷の壁ができる。
「複数人を守れそうですね」
セイアはそう言いながら氷を触る。
かなり頑丈な模様。
「というか、リュシアって魔法使えるのか?」
「使えますよ。風と治癒魔法を」
リュシアは、試しに目の前にある氷の壁を風で切り刻む。
「強……怖……」
司は、この世界に来て何度目か分からない恐怖を感じた。
「というか、治癒魔法も使えるんだよな?」
「使えますよ」
リュシアは、試しに司の指先の怪我を治してみせる。
「確かに治ったな。痛みもない」
セイアが解説を始める。
「そうですね。治癒魔法は完全に術者の熟練度と魔力に左右されます。なので、今リュシアさんがやったような指先の怪我のような軽い怪我しか治せない人と、腕が吹っ飛んでも治せるような人がいます」
「腕吹っ飛んでも治せんの? すごいけど怖いな」
「そうですか? まぁ、武装大国では魔法は少ないですしね」
「まぁ、本題に話を戻しまして。これって応用できるよね? 想像が大事ってセイアも言ってたけど、形をもっと変えれば、避けられない初見殺しの技ができるんじゃない?」
「初見殺し……?」
「あー、初見で対応できない技ってこと」
「そういうことですか」
セイアが納得する。
「それなら簡単にできますよ。それこそ、上の方から氷の塊を落とすだけでも、その初見殺し……? とやらに当たると思いますし」
「確かに」
そうだな。
「んじゃぁ、もっと自由に考えていいのか」
「そういうことになります」
司が複数を出す練習をする。
氷の棘を複数出す、氷の棘を複数飛ばす、盾や壁を複数作るなど、様々なことを試していく。
「よし。できた!」
「よかったですね。司さん」
司が作った氷をつかむ。
「これって、やっぱり普通の氷じゃないよな。それに、もっと頑丈にしたり、密度を高めることってできるのか?」
「できますよ。魔法によって作られたものなので」
「元から普通の氷よりも密度高いけどな」
「そうですね」
司は、魔法の練習を進めるたびに「楽しい」という感情が芽生えてくる。
日本ではできないこと。
手から氷が出てくる。
氷が宙を浮く。
「魔法って……楽しいなぁ」
「でも、無理はしないでくださいね」
セイアが水を差す。
「わかってるよ」
時間が経つのは速い。
昼はリュシアの家に一度戻って食べた。
だが、そろそろ夕方だ。
夜まで練習というわけにはいかないので、リュシアの家に戻ることになった。
「というか、ちょっと……いや、大分疲れたな」
「そりゃぁ、魔力を使いましたから。一応、魔力は生命維持にも必要ですし」
「使い過ぎたら倒れるってこと?」
「そりゃぁ、そうですね」
セイアが答える。
司は気を付けることにした。
リュシアの家に司たちは帰宅した。
「ただいま」
「ただいま……?」
「あぁ、これも武装大国の文化。行くときは『行ってきます』、帰ってくるときは『ただいま』っていうの」
「そうなんですね。ただいま」
リュシアが真似をする。
「ただいま」
セイアも真似をする。
「んじゃぁ、さっそく夕食作ってくるわ」
「わかりました」
司が手際よく煮込み料理を作っていく。
カレーだ。
「はい。カレー」
「んじゃぁ、手を合わせて。いただきます」
「いただきます」
リュシアとセイアも続く。
────────
「んじゃぁ、食器洗うかぁ」
司はシンクに移動して、スポンジに洗剤をつけて洗っていく。
一応、現代日本並みの科学レベルなだけあって、洗剤は排水管を流れている間に中和されていくらしい。
「よし。終わり」
司は手についた泡を流して、椅子に座る。
「んで、今日の魔法。どうだった?」
「よかったです」
「初めてにしては、よかったと思います」
「俺はやっぱ、想像が大事だと思ったな」
「そうですよ。魔法は想像。そうやって学校でも教えられます」
「学校で魔法教えるの!?」
「はい」
セイアの話を要約すると、日本の学科に似たような制度であるらしい。
親水王国を筆頭に、魔法が一般的な国々は基本的にこの方針を取っているらしい。
「あと、魔力を使うと疲れるんだな」
その言葉を聞いて、リュシアが魔力回復のポーションを差し出す。
「なんか毒っぽい」
「慣れればおいしいですよ」
セイアもうなずく。
司は勇気を出して飲み干す。
「あ、意外とおいしい……かも」
「ですよね」
「当たり前です」
「ちょっと回復したわ。明日も練習するだろ? 何する?」
「効率的な魔力の使い方がいいと思います」
「そうだな。それがいいと思う」
「んじゃぁ、そろそろ寝るか」
「そうですね」
三人一緒にベッドに入って寝たのであった。
司は今日のことを思い返す。
「──……魔法って、奥が深いんだなぁ」
そんなことを思いつつ、眠りに落ちる。
To be continued




