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死なない皆と死んじゃう自分【異世界ファンタジー】  作者: 暇人
第一章 親水王国《エグゼルト》

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閑話 異世界の常識

司可哀そう回です。残虐描写が含まれます。

 王都の大通りを歩き、しばらくすると人通りも少なくなってきた。


「もうすぐです。私の家はこの先なので」


「へぇ、結構歩くんだな」


「そうですね。王都は広いですから」


 司は辺りを見回す。


 先ほどまでの賑やかな大通りとは違い、少し静かな道になっている。それに、足元の石煉瓦の舗装も少し古くなっている。


「……ん?」


 その時だった。


「おい」


 前方から、男の声が聞こえた。


 道の真ん中に、数人の男が立っている。


「……なんだ?」


 司が足を止める。


「そこの白髪のエルフ」


 男の視線がリュシアへ向く。


「……私ですか?」


「ああ。ちょっと付き合えよ」


「……嫌です」


 リュシアが一歩下がる。


「なんだよ。いいだろ? 減るもんじゃねぇし」


「嫌だと言っています」


 男が近づいてくる。


 司はリュシアと男の間に入った。


「……嫌がってるだろ」


「あ?」


「聞こえなかったのか?」


 司は男を睨む。


「嫌だって言ってるんだから、やめろよ」


「……人間のくせに、偉そうに」


「は?」


 男が手を上げる。


「司さん!」


 リュシアの声が響いた。


 次の瞬間――


「――氷よ」


 男の手から、冷気が噴き出した。


「……っ!」


 司が目を見開く。


 空気中の水分が一瞬で凍りつき、鋭い氷の刃が形成される。


「なっ……!」


 司が身を引こうとした、その瞬間。


「司さん!」


 リュシアが司の前に飛び出した。


 司の身代わりに、リュシアが司を押し飛ばし、前に出る。


 その瞬間だった。


 氷の刃が、リュシアの胸を貫いた。


「…………」


 刺された箇所とリュシアの口から血が噴き出す。


 石煉瓦が瞬く間にリュシアの血で染まる。


 飛び散った血が、司にもかかった。


「…………え?」


 司の声が漏れる。


 リュシアの身体から力が抜ける。


「リュシア……? ……なぁ。リュシア?」


 そのまま、リュシアが地面に倒れた。


「……リュシア? ……起きてくれよ」


 司は動けなかった。


「おい……」


 返事がない。


「リュシア……?」


 司が駆け寄り、身体を抱き起こす。


「おい、しっかりしろよ……! ……なぁ。冗談だろ? なぁ」


 手が震える。


 胸から流れる血が、司の手を赤く染めていく。


「……嫌だ……嫌だよ……リュシア」


 司の声が震えた。


「こんなの……」


「司さん……」


 セイアが後ろから声をかける。


「……離れてください」


「なんでだよ!」


「…………」


「早く助けないと……!」


 司はリュシアを抱きしめる。


「誰か……医者……!」


 だが、周囲の人々は騒ぐこともなく、ただその光景を見ている。


「……なんで……人……エルフが死んでるだろ」


 司には、それが理解できなかった。


 人が死んだ。


 目の前で。


 なのに、どうして誰も慌てない?


「……リュシア」


 司は何度も名前を呼ぶ。


「起きろよ……」


 返事はない。


「なぁ……」


 その声は、もう泣きそうだった。


 しばらくして――。


「…………ん」


「……え?」


 腕の中で、リュシアの指が動いた。


「……リュシア?」


 ゆっくりと、リュシアが目を開ける。


「……司さん? ……どうしたんですか? そんな、死んだ人が復活するのが当たり前じゃないみたいな視線」


「…………」


 司は言葉を失った。


「どうしたんですか?」


「…………いや」


 司はリュシアの胸を見る。


 そこには、さっきまで確かに開いていた傷がない。


「……お前……」


「はい?」


「さっき……死んだよな?」


「……はい」


「…………」


「死にましたね」


「…………」


 リュシアは不思議そうに首を傾げる。


「司さん、どうしたんですか? ……え、死んだだけですよ……ね?」


「いや……だって……ってか、死んだだけ……って言えないでしょ」


 司の顔が引きつる。


「普通……死んだら……」


「?」


「……死んだら……」


 リュシアがきょとんとする。


「復活しますよ?」


「…………」


 司は固まった。


「……は?」


「え?」


「……復活?」


「はい」


 リュシアは当然のように頷いた。


「死んだら、復活するものですよ?」


「…………」


 司はしばらく何も言えなかった。


 そして――。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


To be continued

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