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死なない皆と死んじゃう自分【異世界ファンタジー】  作者: 暇人
親水王国《エグゼルト》

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第四話 生活の基盤

今回はほのぼの/キャラの心情多め回です。

 路地裏を抜けると、そこには先ほどまでとはまるで違う景色が広がっていた。


「……すげぇ……」


 司は思わず足を止めた。


 広い通りの中央には水路が流れ、その両脇をたくさんの人が行き交っている。


 建物の間からは別の水路も見え、その水は日の光を反射してきらきらと輝いていた。


「ここが……王都?」


「はい。《エグゼルト》の王都です」


 リュシアが答える。


「水路、多いな……」


「親水王国ですからね」


「それにしても……」


 司は周囲を見回す。


 人間だけではない。


 獣のような耳を持つ人や、角の生えた人、そして長く尖った耳を持つエルフまでいる。


「……本当に、亜人が普通にいるんだな。あ、あとあの獣人は迫害されない……のか?」


「どちらも、はいとお答えしましょう」


 リュシアが頷く。


「《エグゼルト》では珍しいことではありませんから」


「そっか……」


 司は隣を歩くセイアを見る。


 先ほどまで意識もなく倒れていたとは思えないほど、彼女は静かに歩いていた。


「セイア、大丈夫?」


「はい。もう大丈夫です」


「無理してない?」


「大丈夫です。助けていただいたうえに、これ以上ご迷惑をおかけするわけには……」


「迷惑って……」


 司は少し困ったように笑う。


「そんなに気にしなくていいって」


「……ですが……」


 セイアは少し俯く。


「本当に、本当にありがとうございます」


「もう何回目だよ、それ」


「……すみません」


「ほら、また謝った」


「……あ」


 セイアが少し恥ずかしそうに口元を隠した。


 その仕草を見て、司はふと思う。


「……なんか」


「はい?」


「セイアって、妙に上品じゃない?」


「…………」


 セイアの動きが止まった。


「え?」


 リュシアもセイアを見る。


「……そうですか?」


「うん。なんていうか……」


 司は少し考える。


「お嬢様みたい」


「…………」


 セイアは黙り込んだ。


「……セイア?」


「……気のせいです」


「いや、絶対なんかあるだろ」


 セイアは目を逸らした。


「…………気のせいですって」


 その反応を見て、司は確信する。


「……やっぱり、お嬢様なの?」


「…………違います」


 答えるまでに、少し間があった。


「今の間は何!?」


「さあ……?」


 リュシアが小さく笑った。


 3人は大通りを歩いていた。


 司は辺りを見回しながら、目に入るものすべてを興味深そうに眺めている。


「なぁ、リュシア」


「はい?」


「この街って、やっぱり結構大きいの?」


「そうですね。《エグゼルト》の中でも、この王都は特に大きな街です」


「へぇ……まぁ、そりゃぁ王都ってついてるしな」


 王都……日本でいう首都みたいなものか。


 道の両側には様々な店が並んでいる。


 食べ物を売る店や、服を売る店。見たことのない道具を並べている店まである。


「……あれ、何?」


「魔道具ですね」


「魔道具?」


 アニメとかで見る魔道具か?


「はい。魔力を使って動かす道具です」


「魔力……」


 司は少し考える。そして、自分に魔力があるかどうかも気になった。


「やっぱり魔法ってあるんだな」


「はい。珍しくありませんよ」


「すげぇ……んで、魔法ってどういうのがあんの?」


 司は店先に並んだ道具を眺める。


「魔法には大きく分けると8つの魔法があります。1つ目は風魔法。2つ目は水魔法で、3つ目は草魔法、4つ目は土魔法、5つ目は斬撃魔法、6つ目は雷魔法、7つ目は回復魔法、8つ目は……うーんと、氷魔法です!」


 すると、隣からセイアが口を開いた。


「それは水温を調整する魔道具ですね」


「え?」


「火を使わずに水を温めたり、逆に冷やしたりできます」


「……二人とも詳しいな」


「え?」


 司はセイアを見る。


「いや、なんでそんなこと二人は知ってるの?」


「……一般常識です」


 二人が答える。


「一般常識?」


「はい」


 セイアは何事もなかったかのように前を向く。


「……リュシア」


「はい?」


「セイアって、普通のエルフ?」


「さあ……?」


「さあって」


 リュシアは少し笑った。


「私もセイアさんのことは、あまり知りませんから」


「……そうなの?」


「はい」


 司はもう一度セイアを見る。


 すると、セイアは何かの店の前で足を止めた。


「……あ」


「どうした?」


「いえ……」


 店先に並べられている焼き菓子を、セイアがじっと見ている。


「……食べたいの?」


「…………」


 セイアは少しだけ目を逸らす。


「……少しだけ」


「なんだ、普通に食べたいんじゃん」


「……申し訳ありません」


「だから謝らなくていいって」


 司は店を見る。


「リュシア、これっていくら?」


「え?」


「この焼き菓子」


「……1個2ペーレですね」


 ペーレ?…まぁいいや


「じゃあ買おう」


「えっ」


「セイアも食べたいんだろ?」


「ですが……」


「いいから」


 司が店へ向かおうとすると、セイアが慌てて止める。


「待ってください!」


「ん?」


「その……私、持ち合わせが……」


「俺もないけど」


「…………」


「……あ」


 司は固まった。


「そういえば俺、こっちのお金持ってないわ」


 リュシアが呆れたように司を見る。


「司さん……」


「いや、仕方ないだろ! この国に来たばっかりなんだから!」


 セイアは思わず小さく笑った。


 その笑顔を見て、司も笑う。


「……まあ、いつか買ってやるよ」


「……はい」


 セイアは嬉しそうに頷いた。


 その仕草は、やはりどこか上品だった。


 しばらく歩いていると、リュシアが足を止めた。


「司さん」


「ん?」


「そういえば……司さんは、これからどうするんですか?」


「どうするって?」


「住むところです」


「…………」


 司は固まった。


「……ない」


「ないんですか?」


「うん」


「お金は?」


「……ない」


「…………」


 リュシアが困ったような顔をする。


「司さん……」


「いや、仕方ないだろ。この国に来たばっかりなんだから」


「それは……そうですけど」


 司は頭を掻く。


「食べ物も買えないし、泊まるところもない。そもそも俺、この国でどうやって生活するんだ?」


「……そうですね」


 リュシアが考え込む。


「でしたら、私の家に来ますか?」


「え?」


「しばらくでしたら、泊めてあげられます」


「いや、それはさすがに……」


「司さんにはセイアさんを助けてもらいましたから」


「でも……」


「それに」


 リュシアは微笑む。


「このまま司さんを一人にするのも心配です」


「……」


 司は少し黙った。


「……じゃあ、お言葉に甘えようかな」


「はい」


「ありがとう、リュシア」


「いえ」


 そのやり取りを、セイアは少し離れたところから見ていた。


「あの……」


「ん?」


「リュシアさんのお家に行くのですか?」


「そうなるみたい」


「……そうですか」


 セイアは少し考える。


「では、私も……」


「セイアも?」


「はい」


 セイアは当然のように頷いた。


「私もリュシアさんのお家に行かせていただいてもよろしいでしょうか?」


「もちろんいいけど……」


 司は首を傾げる。


「セイアって、帰るところないの?」


「…………」


 セイアの表情が僅かに曇った。


「……今は、ありません」


「……そっか」


 司はそれ以上聞かなかった。


「じゃあ、一緒に行こう」


「……はい」


 セイアは小さく笑った。


 3人は再び歩き始める。


 王都の大通りを歩く司の隣には、リュシアとセイアがいる。


 ほんの少し前まで、一人でこの世界に放り出されたと思っていた。


 それなのに今は、二人と一緒に歩いている。


「……なんか、不思議だな」


「何がですか?」


「いや……こっちの話」


 司は笑った。


 そして三人は、王都の街並みの中へと歩いていった。


To be continued

読んでいただきありがとうございました。

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