第十一話 魔道具を使ってみよう
言ってなかったけど今の親水王国は秋と冬の節分ぐらいの設定です。
司が起床する。今度は朝早くに起きてしまったようだ。
「ん~……」
なるべく小さい声で二人を起こさないように伸びをする。床に足を付け、洗面台で顔を洗う。
「今日はちょっとだけ良い朝食を造ってやるか」
そう思うのだった。
─────────
司が朝食──ポトフを作っているときに、リュシアが起きてきた。
「おはようございます。司さん」
少し低めのトーンで話しかけてくる。
「おはよう。リュシア。顔洗ってきな」
そう言われ、リュシアは洗面台へ向かう。
────────
司が朝食を作り終えたとき、セイアが起きてきた。
「おはよう。セイア。今日は遅いな」
「起きてはいました。起きては」
「つまり、布団の中でダラダラしてたってことだな。まぁ、とりあえず朝食食べようぜ」
「そうですね。顔を洗ってきます」
司はダイニングに温かいポトフを置いた。
「頂きます」
いつの間にか戻ってきていたセイアと、先ほどから座って会話をしていたリュシアが言う。
「頂きます」
司も続く。
「んで、今日は魔道具の練習をするんだったよな?」
「そうですね。まずは王都のほうに行って魔道具を買いましょう」
「王都……か」
司は思い出す。セイアが沈んでいた水路と、リュシアが暴力を振るわれていた路地裏。
「苦い思い出しかねぇな。まぁ、いいけど」
─────────
司たちは朝食を食べ終え、外に出る。
「王都はあっちの方ですね」
司たちは王都のほうへ歩いていく。
「やっぱでけぇな。王都なだけあって」
「そうですね」
「反応薄くない!?」
「見慣れてますし」
「そうですね」
セイアが同意する。
「あ、ここの魔法専門店、よくねぇか?」
「そうですね。司さんもそういうの分かるんですね」
「ふいんきっていうか、なんとなくっていうか……」
「雰囲気です」
「あ、まぁ、これよく間違えるから」
「間違えません。リュシアさんも間違えたことないですよね?」
リュシアは首を縦に振る。
「まじかよ……」
「まぁ、そんなことより、ここに入りましょう」
司たちが魔法専門店に入ると、
「いらっしゃいませ。何をお探しでしょうか?」
獣人の店員が話しかけてくる。
獣人でも雇うんだ。
そう思いながら、話に応じる。
「氷属性に合う属性ってありますか?」
セイアが問う。
「雷属性か風属性です」
店員が答える。
「ありがとうございます」
何気ない日常の一部。だけど、それがなぜかいいと感じる。
「誰が氷属性なのですか?」
店員が聞く。
セイアが司を指さす。
店員が司のつま先から頭頂部まで見つめる。
「では、こちらの魔道具などどうでしょうか?」
「どうやって使うんだ? これ」
「その杖は、先端に何かを触れさせれば、その物体に帯電させることができます」
「名前とかないのか?」
「司さん。せめて敬語を使ってください」
セイアに諭される。
「分かったって」
司が言う。勿論、分かっていないときの言葉だ。
「はぁ。しょうがない人ですね」
セイアがため息をつく。
「いえいえ。敬語じゃなくても大丈夫なので」
店員が言う。
「ないですね。商品番号ならありますが」
「んじゃぁ、これ試させてくれない?」
「分かりました。じゃぁ、こちらの試用スペースでお試しください」
司は氷を出す。もちろん、迷惑にならないサイズだ。そして、杖の先端で氷に触る。
「これって、本当に帯電してるかどうやって確かめんの?」
「そうでしたね」
セイアが言う。
「じゃぁ、司さんの体で試してください」
「えぇ、俺!?」
なんて言いながら、しぶしぶ触る。
「痛っ……いけども……まだ大丈夫な痛さ」
「出力が弱いからですね」
店員が補足する。
「んじゃぁ、他に氷魔法に合う属性の魔道具ってある?」
司は店員に杖を渡しながら言う。
「氷属性に合う属性……風と雷の魔道具ですね。こちらに来てください」
店員に促されて進んでいく。
「こちらがおすすめです。風魔法で、杖を中心に半径2m程度の範囲に風が吹きます。杖を振る強さによって風の強さは変わります。あと、自分には影響はありません。使ってみますか?」
「試させてほしい」
司はそう言うと、店員からその棒状の魔道具を受け取った。
司はふと思う。
杖もあるけど、魔道具って想像と違う形だ。
そんなことを思いながら、周りに人がいない試用スペースへと移動し、杖を強く振る。
──そうすると、半径2m以内の木がすべて折れた。
「は?」
「──お客様。本当に風魔法は使えないのですか?」
「え? 使えないけど? その場で念じても何も吹かない」
「ちょっと私にもやらせてください」
店員が言う。
そうして司は、その棒状の魔道具を店員に渡す。
店員が結構強めに魔道具を振る。
微風が吹く。
「微風だな」
「微風ですね」
リュシアとセイアも頷く。
「俺がやったときだけ強くなる……ってことか」
「どうやらそのようですね」
「もう一度、少し強く振ってください」
司は言われた通りに強く振る。
半径2mの円状に、20cm程度の穴が開く。
「は?」
司は思わず声を漏らす。
リュシア、店員、セイアは全員、言葉が出ないほど固まる。
「……整理するよ? 今、強めに振ったらここに穴が開いた。どういうことだ?」
「どういうことでしょう」
「どういうことなのでしょう」
「どういうことなのですか?」
店員、リュシア、セイアが、それぞれの言い方で答える。
「あー、じゃぁ、さっきの雷の杖も……やってみるか?」
「そうですね」
店員は司に杖を渡す。もちろん、出力は最大だ。
天井まで届く氷を形成する。天井はコンクリートのため絶縁してくれる……はずだ。
氷に杖で触れる。氷の周りに熱気が出る。
思わず飛びのいてしまうほどだ。
「……は?」
全員の声がそろった瞬間だった。
少し落ち着いた時。
「つまり、俺の魔力が異常な可能性があるってことか?」
「そういうことです。貴方が魔道具を扱った時だけ異常な出力が出ます」
「そうですね。魔道具は魔力を感知して出力が変わる、いわば熟練度の関係ない魔法みたいなものです」
セイアが補足を入れる。それに司は感心する。
「では魔力測定器を持ってきますね」
店員が奥の方に入っていった。
「セイアも魔道具使ってるんだろ? こういう出力が出ることってあるのか?」
「ないですね」
即答する。
「そうだよね~。あ、リュシアって魔道具使ったこと、ある?」
「ありますが……やっぱりその司さんみたいな出力は……」
「そうだよなぁ……」
雑談をしている間に店員が魔力測定器を持ってくる。
「これは最大魔力を図るものです。手をかざして、そのまま魔力を体の中で巡らせてください」
「最大魔力って何だ?」
魔力測定器がボンッと音を立てて壊れる。
「……え?」
「エラーですね」
「図り切れません。これでは」
「最大魔力というのは生まれ持った魔力の許容量です」
「魔力の……許容量? あと、この測りきれないっていうのは何なの?」
「えーっとですね、あなたの最大魔力が多すぎて測定しきれないということです。試しにそこの白髪のあなた。やってみてください」
リュシアが促されて手をかざす。
「図れましたね」
「リュシアって魔力結構あるよな?」
「それは現在最大魔力量が司さんよりも多いだけです」
「現在……最大魔力量……?」
「現在蓄えられる最大の魔力の量です。今の体の魔力量を現在魔力量といいます。この前の魔法の練習の時、疲れたとおっしゃっていたのは現在魔力量が減っていたからです。ポーションや自然回復で出来ます」
「んじゃぁ、現在最大魔力量って増やせるのか?」
「増やせます。魔法を使う。要は魔力を使えば勝手に増えていきます」
「便利なもんだな」
「そうですね」
「んで。俺の魔力は半端ないってのがわかったんだけど、日ほ……武装大国だと魔力なんて感じたことがなかったけど、なんでそんなにあるんだ?」
「生まれ持った確率だからです」
「確率ってことか……魔法を使えるかどうかって、どういう要因が多いのか?」
「遺伝か才能ですね」
「そうか」
「お客様は武装大国でどのような魔法教育を?」
「あー、武装大国は魔法を使わないんだよ」
「そうなんですね」
「前に言ってましたね」
リュシアが言う。
「そうだな」
「ところで、先ほど使用していた魔道具では、あなたの実力に見合わないので、性能の高い魔道具にしますか?」
「あー、確かにそっちの方がいいな」
「ではこちらへ」
店員に案内され、高級魔道具コーナーに来た。
「値段……たっか!」
「今日ぐらいいいですよ。魔道具は一生ものですし」
リュシアが言う。どうやらお金はあるようだ。
店員が言う。
「この3つがおすすめです」
一つ目は風属性の本、二つ目は雷属性の杖、三つ目は雷・風属性の杖。
「本に触れながら魔法を放ってください」
言われた通りに司は氷を出す。出た氷の周りに、とても強い……先ほどとは比べものにならない風が吹いた。どうやら効果は半径3mの円の内部のようだ。その内部には50cmほどの穴……大穴が開いた。
「は? 強くねぇか?」
「これが出力最弱です」
「え?」
次に雷属性の杖を差し出す。
「対象に向かって振ってください。そうしたらそこに雷が落ちます」
言われた通りに氷に向かって振る。雷が落ちる。施設が停電する。それに、そこには大きな氷の塊が降り注ぐ。
「これも……やべぇな」
「つ……次は複合……です。やります……?」
「やる……か」
「では、この杖は雷の落ちた場所に雷が1分間降り注ぎ、その間、対象はその場に風で拘束された状態になります」
言われた通りに氷に向けて振る。直後、明るい閃光と轟く轟音が響いた。
氷は一瞬で木っ端みじんになった。魔法で造られたとはいえ、この出力には耐えられないようだ。
「これも最弱出力ですね」
「……これ、この人に売っていいのですかね」
「うん。俺も買っちゃだめだと薄々思ってるけど、複合の買うわ」
「分かりました。お会計38,900ペーレになります」
ペーレ……この国独自のお金の単位だ。1ペーレが100円である。ということは、約390万円の買い物だ。
「リュシア、払える……か?」
「大丈夫です!」
魔道具を購入する。そして司たちは店の外に出る。
「あー、これ使って何しような」
「魔法の練習です」
「そりゃぁそうだけどな?」
「とりあえず家に帰りましょう」
司たちはリュシアの家に向かうのだった。
To be continued
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