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異世界召喚されたんだけど、なんか様子がおかしい  作者: よく知らんロボ
第一部 異世界にて

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 ノクスが消し飛ばした瘴気とヘドロは、すぐにまた二人の周辺を覆い尽くそうとしていた。

 俺の魔力量とは比べ物にならないんだろう。魔方陣さえ展開してあれば、あれらをほぼ無尽蔵にこの場へ供給できるってことか。


「いくら消してもキリがないと……消耗戦ですか。芸はないですが厄介ではありますね魔女殿・・・


 魔王の呪縛らしきものが安定したのだろうか、ノクスはどこか落ち着きを取り戻している。


「やっぱり、昔のノクスじゃ……ないね。安心して、時間は掛けない。これ以上、君が無様を晒す前に……すぐに殺してあげる。箱庭の楽園(ミニチュア・エデン)……出てきて」


 ルサーリアさんが寂しげに呟くと、召喚が発動。すると瞬く間に周囲がその様相を変えていく。


 あっという間に壁や石畳は見たことのない毒々しい植物で覆い尽くされ、そこでうごめくのは気味の悪い蟲達。

 地球あっちのダイオウグソクムシやフナムシみたいな形をしたのや、ムカデやウデムシにヒヨケムシっぽいやつ、多種多様なグロテスク系の蟲がウジャウジャいる。しかもデカい。どれも四、五十センチくらいだ。


 空中には人の頭くらいある丸まったダンゴムシみたいなやつもフワフワと浮遊している。


 俺達がいる場所には申し訳程度に石畳の領域が残っているけど、それを境界線にしてこのだだっ広い部屋のほとんどはおぞましい者達で埋め尽くされてしまった。


「随分、手入れ、出来てなかったんだな……少し荒れてる。でもみんな、元気だったみたいだね……良かった」


 まさに怖気おぞけが走る光景……。横に座る牌谷さんは「ひぃぃぃぃ」と小さく叫びながら全身総毛立って顔を青くしている。


 正直、俺も平静を保つのでやっとだ……。あまりの気持ち悪さになんとか声を上げないよう必死にこらえている。

 怯える女の子の横で俺までビビってたらカッコ悪いから頑張ってみた……。


 ただ、その中でルサーリアさんだけは一人嬉しそうに笑顔を浮かばせている。

 なんなら寄ってきたダンゴムシを撫でたりなんかして、その様子はなんとも和やかだ。


「エ、エル。こ、これは一体……」

「これはサリーの……、まあ共有した方が早いんダヨ」


 ────なるほど。


 これは一言で言うならルサーリアさんの家庭菜園だ。しかもかなり大きめで本格的なやつ、もはや農園と言えるだろうか。


 どうやらここの蟲や植物は彼女の食材であり、観賞用の箱庭でもあるようだ。

 そしてここにある全ては何かしらの毒物を有している物ばかり。

 そもそも呪毒湿原とやらが有毒の生物や植物しか生息していないそうで、ルサーリアさんがそこで掻き集めてきたものをここで育成してるらしいから当然と言えば当然なんだけど。


 しかし魔女って言っても身体的には普通の人間と変わらない筈だよな。

 なんで食べても平気なんだろ、いろんな意味で……。

 それと彼女の身体に触れるだけで毒に浸食される理由がよく解った気がする。


 まあ、家庭菜園なんて長閑のどかな例えを出してはみたけど、実際のところはそんな生易しい空間ではないようだ。


 先程とはうって変わって瘴気の霧などは微塵も漂ってはいない。

 一見すると澄んだ空気のように見えるその大気は魔女のスキル毒と同じ魔力毒素がふんだんに含まれており、一呼吸でもすれば一瞬でお陀仏。足を踏み入れればまさしくそこは死地。


 火山や温泉地帯なんかの窪地に硫化水素が留まった危険な場所があったりするけど、あんな感じかな。いや触れただけでも毒に犯されるのだからもっと危ないな。


 試しに境界線を越えるまで手を伸ばし、何も無いように見えるその空気に触れてみると、すぐにそれは証明された。


『毒物耐性発動』

『免疫獲得した猛毒を検知、常態パッシブ効果を発動』


 良かった、俺は既に耐性があるようだからなんとかなるらしい。しかし牌谷さんは間違いなく立ち入ったらあかんやつ……。


「クロさん、キヅナさん。た、楽しそうだからって、二人は絶対に入ってきたら……駄目だよ」

「は、はいぃ!」


 本当は入ってきて欲しいんだろうか……少し残念そうにモジモジしながら忠告してくるルサーリアさんに対して、激しく首を縦に振りながら返事をした牌谷さん。「頼まれても絶対に入りません」そんな顔だ。


 楽しそう、ね……。あれはマジで言ってるな。


 エルからの共有情報と、あれを箱庭の楽園(ミニチュア・エデン)などと命名したあたりから察するに、彼女にとってあの場所は、『自給自足生活を目指して田舎に移住した人が丹精込めて造り上げた自慢の観光農園』くらいの感覚なのだろう。

 ハッキリ言って俺達から見れば箱庭の地獄(ミニチュア・アビス)だ。

 うん、俺もムリだわ……。


 緊迫した空気が一瞬弛んだけど、ノクスだけはそうもいかないようだ。


「これは呪毒湿原の……、生きて出るには貴女あなたを殺すしかなさそうですね」

「さあ、今のノクスに……できるかな。君は毒が効かないんじゃなくて、寄せ付けないようにしてるだけだから。そのうち……尽きる」


 ルサーリアさんの言葉通り、ノクスの黒い魔力は先程とは比にならないくらい激しく波打っている。

 空気中の高濃度の毒素を中和する為に、魔力が大量に消費されているのだろう。


「ならばその前に終わらせるだけです!」


 足場が整ったことでノクスは元の俊敏さを取り戻している、それはルサーリアさんとの距離を一瞬で詰めるほど。


「あ、そっか。足元が泥じゃ……なかったね」

「死ねっ!」


 気の抜けたようなルサーリアさんだけど、そんな事はお構い無しにノクスの爪牙が襲い掛かる。


「えっ!? ルサーリアさん!?」


 まさかの窮地……っぽい状況に牌谷さんも身を乗り出して声を上げた。

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