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異世界召喚されたんだけど、なんか様子がおかしい  作者: よく知らんロボ
第一部 異世界にて

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「だあぁぁぁぁぁぁ!!」


 迫るノクスの左肩に、たける牌谷さんの渾身の薙ぎ払いが炸裂。けどさすがに一刀両断とはいかないらしい。


「ふん、小癪な」


 ノクスは体毛を硬質化してそれを受けきる。さっきとは比べ物にならない質量の一撃ではあったものの、ノクスの巨体は多少体勢を崩した程度。それに毛並みの性質上、斬撃には滅法強いようだ。



 ノクスはそのまま強引に距離を詰める。

 小回りの利かない大剣なら超近距離に持ち込んだ方が有利と判断したのだろう。


 勢いのままし掛かるように牌谷さんへと牙を向く。


「かかったね」

「なにっ?」


 牌谷さんがしてやったりと悪戯な笑顔を見せると、ノクスの動きが止まる。それと同時に彼女は少し後方へ飛び退いた。


 よく見れば極細の操血の糸が蜘蛛の巣のように編まれ、ノクスを絡めとっている。

 どうやら牌谷さんは事前に造り出していた操血の網を足元へ忍ばせていたみたいだ。


 そしてノクスが不用意に近寄ったのを見計らってそれを浮き上がらせ、奴を捕らえたのだ。


 彼女は昨日「血球は形状を変えると遠隔で自由に動かせなくなる」と言っていたけど、どうやら今はできるらしい。

 

 それはスキル強化中の恩恵なのか、それとも牌谷さん自身のスキル練度が向上したからなのかは解らないけれど、今の彼女の強さはスキル出力の上昇だけに留まらないようだ。


「こんなちゃちな糸ごときで……」


 ノクスは慌てる様子もなく全身の体毛を硬質化し身を震わせ、刃のようなその切れ味で操血の糸を断ち切っていく。


「十分……!」


 牌谷さんの目的は拘束ではなかった、数秒の足止めでよかったのだ。


 素早いノクスに生じさせた隙。


「密度を上げて、硬度と重量を最大に……」


 その間に彼女の手にしていた大剣は巨大な深紅のハンマーへと形状を変えていた。

 それを両手に握り、身体をひねって回転、ハンマー投げの要領で先端部の速度を最大限まで引き上げていく。


「斬れないんならぁ、ブッ叩く!!!」

「なっ──」


 ドゴッ──と重い衝撃音が、広く堅牢な室内に木霊する。


 よっしゃ! どたまにクリーンヒットォ!

 流石です牌谷さん!


 遠心力によって速度、硬度、重量を最大限まで引き出された戦槌の一撃は、やや斜め下からノクスの左顎に直撃。そのまま全力で振り抜かれた。

 ぶっ飛ばされた巨体は、十メートル程先の石壁へと叩きつけられ床へと落ちる。


 石壁は相当な威力で打ち割られたように破壊され、崩れた破片が横たわるノクスの身体へバラバラと降り注いだ。


「やりましたね! いやぁ心配する必要なかったですかね」


 うん、取り越し苦労だったか。結局、牌谷さんだけで終わらせちゃったな。


 そんな気の抜けた俺の呼び掛けに、牌谷さんが声を張り上げる。

 

「まだだよ! 多分、尻尾でガードされた……!」

「えっ!?」


 彼女の言った通り、瓦礫から立ち上がりほこりを払うように身を振るわすノクス。

 上顎に生えた鋭い牙は今の衝撃で片方、左側が欠けている。口にも血が滲み、足には若干の痙攣が見られる。

 そして防御に使った尻尾は骨が折れたのか猫の鉤尻尾のようにひしゃげていて、どう見てもノーダメージでは済まなかった事だけは解る。


「もし人型の状態で食らっていたら粉微塵に粉砕されていましたね……」

「くそっ、しぶとすぎ……」


 不味いな、ノクスはこれで牌谷さんの手の内をまた一つ把握したことになる。次は今みたいな不意打ちはできない可能性が高い。

 正面からの正攻法じゃまだノクスの方にがあるかもな……。


 やっぱりこっち(・・・)も予定どおりにやった方がいいな。


「牌谷さん、もう少しだけ頑張れますか!?」

「大丈夫! まかせて!」

「小男は何をする気ですか……、まあいい。小娘の方が楽しそうですしね」


 よしもうちょっとだ。

 俺は何してるかと言うと、ノクスにバラバラにされたルサーリアの死体を集めてきている。

 しかし、切断された人間の手足を平気で持ってる自分にも今更ながら少し驚くな。

 随分この異世界に順応してきたらしい。


 それにしても、なんだろ。この手足を持ってると触れている手や肌がビリビリするな。この感触はもしかして……。


「ログ……」


『毒物耐性発動』

『猛毒を検知、分解中』


 この人、身体そのものが毒なのか……?

触れただけで猛毒が流れ込んできてるってことだよな。なんか小説とか漫画に出てくる武術の毒手みたいだな……。


 あぁなるほど、闇の魔獣が吐き出したのはこれが原因か。


「おい、おまえ。サリーの身体をどうスルつもりなんダヨ」

「すまん説明はあとだ」


 よし、パーツは集まった。どうするつもりかと問われれば勿論、生き返らせるつもりだ。


 今この状況でこの魔女ほど頼りになる存在は居ないだろう。まあ何事もなく味方になってくれればだけど……。


 牌谷さんは……。


 善戦してはいるけど、やはり押されている。ケガをしていてもノクスのスピードとパワーは健在らしい。


 急げ、時間はどうだ……。


『聖女の祈り』

『現在使用不可:制限解除まで五秒』


『四』


『三』


『二』


『一』


『制限解除』


 よし。やるか。



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