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異世界召喚されたんだけど、なんか様子がおかしい  作者: よく知らんロボ
第一部 異世界にて

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 『救世の翼(エル・メサイア)スキル、“未来視”を発動』


 とにかく今は考えながらトライ&エラーを繰り返すしかない。

 奇襲がほぼノーダメだった時点でノクスに対する突破口はまだ開けてないんだから。


 さっきは攻撃を仕掛けることに集中し過ぎた。次は潜影も使わずに、回避に専念しながらなるべく奴の気を引いて牌谷さんの攻撃を支援だ……。


 だけど回避すらも難しいことがすぐに証明されてしまう。相手を翻弄する間も無く、また俺の首はまた飛んだ。


救世の翼(エル・メサイア)スキル、“未来視”を停止』


 ※


 ノクスの間合いはなかなかに広い。

 ナイフの刃渡りは十五センチくらいだけど、手足が長い分見た目よりも伸びてくるような錯覚を受ける。


 それでも感覚強化を動体視力に集中すればかわせない事もない。


 それくらいには慣れてきた。


 何故ならもう百回くらい俺の首は飛んでる。


 ノクスの攻撃を避ける練習をしながら、挑んでは殺されを繰り返しつづけているのだ。


 俺がどれだけ凡人と言えども、これだけ繰り返せば流石に避ける時のコツくらいはなんとなく掴めてくる。


 手先を見てはダメだ。このレベルの速さで攻撃を繰り出す相手では、どれだけ動体視力がよかろうが俺の筋力じゃ身体がついてこない。


 相手の目線、体幹や重心の動き、肩や軸足の運び、武器の位置、そいつ特有の癖、相手の全体を捉えた上で攻撃の起点となる動きを掠め取り、狙いを予測して一手先に動く。


 昔どっかで聞いた宮本武蔵の「観の目」ってやつなのかな、一点を見るんじゃなく、見るともなく全体を感じて流れを読む。


 それを意識し始めて、ようやく奴の攻撃を避けることができるようになってきた。

 もちろん感覚強化があればこそだけども。


 それにしても、超高難度の死にゲーをやってるような気分だ。

 数回避けた後には毎回瞬殺されている。一回にかかる時間は十秒に満たないから魔力はそんなに減ってはいないのが幸いと言えるけど……。


 ※


 施行回数は千回を突破した。

 この頃になると回避するだけに留まらず、鉈で受け流したり、フェイントを読んだり仕掛けたりして撹乱できるくらいにはなっていた。

 それでも深入りし過ぎればすぐに首が飛ぶ。でも首ならまだ良い、痛くないから。

 腕や脚を切り落とされたり、腹を裂かれた時は激痛に悶絶しながら死んでいくしかない。あれが一番キツかった。


 まあそれは置いといて、残りの俺の魔力残量はおよそ三割。この戦いで判明したのだけど、未来視は短時間で使用を止めた時の方が魔力消費量は圧倒的に少ないようだ。


 それでも身体能力に影響を及ぼさないギリギリの残量が三割、ここらで本番に挑まなければ元も子もない。


 この回で潮時か……。


 思考を巡らせながらノクスの一刀、二刀とを躱した次の瞬間、ニヤついたノクスの野郎と目が合う。


 ここだろ、お前、次は左で俺の首を狙うよな……。


 予測の通り、ノクスは左の斬撃で目の前の小首を両断する。


救世の翼(エル・メサイア)スキル、“未来視”を停止』


 戻ったか……。よし、これからが本番だ。


 不思議と緊張は無い。千回を超えて命のやり取りをしたからだろうか、ノクス(こいつ)とはちょっとした知己にでもなったような感覚だ。


 さあ、やるか。


「牌谷さん、潜影は使いませんからガンガンやっちゃって下さい」

「え!? う、うん、解った!」


 ノクスは余裕の笑みを浮かべ口を開く。


「おや、急に魔力が激減しましたね。何か企んでますか?」

「さあ、どうっすかね……」


 この台詞は未来視あっちで何回も聞いたな。動揺を誘っても無駄だ、さあ前に出るぞ。足を踏み出せ。


 最初の一撃は千回やって千回とも同じ箇所を狙ってきた。この位置関係と奴の体重移動から見て、右から来る首への撫で切りか。これはもはや躱せない訳がない。


 次に来るのは顔を狙った右の切り返し。それで視界を遮りながら動脈狙いの左の袈裟斬り。


 うん、予測通りにノクスは動き俺はそれを悠々と回避。まだ、余裕だ。


 それに今回は、さっき攻撃の依頼を伝えた牌谷さんから操血の刃が高頻度でノクスへと飛んでくる。


 血刃とナイフがぶつかる度に、薄暗い部屋に火花が舞い散る。


「くっ! 血の刃、小娘ですか……。」


 これなら俺も攻撃に加われる。上半身への攻撃に気を取られている隙に足を狙う鉈の斬撃を見舞う、が硬い靴の裏で受け止められる。


 失敗したらすぐに引く。

 追撃はしない。

 深追いして何度も痛い目を見たからな。


 今、俺がもう一度「攻め」を選んでいたらその腕を切り落とすつもりだったのだろう、ノクスの怪しく輝く目付きが物語っている。


「やりますね。まるで達人のような身のこなし……、いやどちらかと言えば私の動きを知っていると言った方がいいでしょうか……。どこかでお会いしてますか?」

「さあどうだろう、ネタは明かせないっすね……」

「ふふ、少し面白くなってきましたねぇ」


 やっぱ怖いな、ここからは未体験の未来だ。

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