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異世界召喚されたんだけど、なんか様子がおかしい  作者: よく知らんロボ
第一部 異世界にて

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『そ、それ、何本くらい飲んだらヤバいとかあるのか……?』


 さすがに魔族化が自分の身に降りかかるとなると狼狽を隠しきれない。エルの毅然とした態度と、いつになく真面目な視線が余計に不安を煽ってくる。


『やっぱり飲んでたのか……。いったい何本飲んだんダヨ?』

『三本……』

『三本!?』

『ヤバいの!?』


 ビビって涙目の俺を見て、エルはプークスクスと静かに笑いだしやがった。


 こいつ……からかいやがったな……。


『エル……お前なぁ……。まあ、大丈夫ってことだよな。ハァ、良かった』


 なんて不謹慎な奴だと思ったけども、何も言う気にならない……。

 人間、本気で安堵した時って怒る気にもならないよな。


『まあ、そう言うコトだネ。魔族化した当時の人間達は本当にとんデモない量を飲んでイタからナ。ただ、無闇に飲むヨウな物じゃナイのは理解してた方がいいんダヨ』

『それは、ごもっとも。肝に銘じておくよ』

『それはソレとして、おまえそのスキル剤どうやって手に入れたんダヨ?』

『あー、それは──』


 抽出施設ここでの出来事はあんまり人に語りたくない思い出だったけど、エルにはありのままを説明しておいた。

 嘘を言って格好つけるのは違うし、何よりエル(こいつ)は人間的な道徳とか正義感みたいなものは持ち合わせていなさそうだったからだ。


 見殺しにしたとか、情けないとか、自分でも解ってる事を改めて他人から言われるのはしんどい。だけどエルはそう言うのには無頓着という感じがしたからな。


 過去に可愛がっていた魔女が死ぬ話を平然と語るあたり、そもそも人間とは思考からして違うんだろう。


 そんな相手だから安心して話せたってのが大きい。

 うーん……自身の心情とはいえ、思いつらねてみるとなんとも情けない……。


 それでも俺はこういう小さい人間だから仕方ないか。

 

『そう言うコトか、運が良いナ。なんで僕がおまえみたいなモブに召喚されたのか、そんなモブからなんで一流冒険者みたいな気配を感じるのか不思議だったけど納得いったんダヨ』

『いちいち落とすよなお前、否定できないのがムカつくけど。まあそう言う訳で、どの場面でも飲まなきゃ死んでたって訳だ。俺も自前でエクストラスキルが貰えるくらい優秀だったらとは思うよ』


 その言葉にエルはまた真面目な顔で返してくる。


『何て言うか、おまえはちょっと自信が無さすぎるんダヨ』

『いやいや、いきなりなんだよ。俺をモブ扱いしてる奴の台詞とは思えないぞ』

『僕は良いんダヨ。奇跡の存在でアル僕から見れば殆どの人間はモブだからネ』


 なんと言う暴論……。ジャイア◯かよ、ある意味尊敬するわ。


『だけどおまえは人間ダロ。人間は自信に満ちてる時が一番パフォーマンスが高いからナ』


 言いたいことは解る。しかし俺は自信などというものをこの年齢まで持った事など一度もない。

 そもそも何かに打ち込んだり、自信が得られるような相応の努力をしたことが無いんだから仕方ないのだけど。


『そうは言ってもな、凄い人を見ると自信は無くなるよ。俺みたいな凡人は特にな……』


 その上、小賢しいというか物分かりが良いというか、上を見てはすぐに「自分には無理だ」「時間の無駄」だと何事もすぐに諦めて怠惰な生活を送ってきた。

 それが一番時間の無駄だって解っていたんだけど本当の意味では解ってなかったんだろうなぁ、過去の俺。いや今も大して変わっちゃいないか。


『なら他人と自分を比べなければ良いんダヨ、時には視界を狭くして自分だけを見るのも大事サ。上を見上げて自信を失くすくらいナラ見上げない方がまだマシなんダヨ』

『まあ、確かに……なのか?』


 うむ、人外にガチ説教されてるな……。微妙に納得させられてるし……。


『そうすレバ自分だけの自信みたいなモノが育つかもシレないしナ』

『そう言うのは考えた事がなかったよ。自分を信じて突っ切るって事だよな……』


 俺の物差しは基本的に他人との比較だったからな。自分の中に絶対的なものが無いのだから当たり前だけど。

 だからエルの言うことは、割りと刺さった。


『まあ時に人間はソレを過信とも呼ぶけどナ』

『いやどっちだよ!?』

『自信を持つのも自分を疑うのもバランスが大事って話なんダヨ、おまえは自分を疑う方に偏り過ぎダ』

『それは……確かにそういうとこはあるけどな、でもなんでいきなりそんな話なんだ?』


 その問いに、エルは牌谷さんの方へパタパタと飛び寄っていくと、冗談めかしで、それでいて眼差しだけは真剣に口を開く。


『おまえがしっかりしナイとキヅナちゃんが死んじゃうダロ。女の子が死ぬところはあんまり見たくないんダヨ』


 男なら良いのかよオイ。

 しかしそこは全くと言っていいくらいブレないんだな……、でも。


『うん、たしかに。今、俺の役割ができるのは俺しかいないしな。牌谷さんの為にも頑張ってみるよ……。あれ……、ヤバい……目蓋が……』


 スキル情報を大量に取り込んだ時みたいな強制シャットダウンの感覚だ……。

 エルと情報を共有し過ぎたせいかな……。

 いや……、もともと満身創痍でもあったっけ……。


『すまん……ちょっと……寝……』

『ああ、ゆっくり休んだらいいんダヨ』


 ────。

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