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異世界召喚されたんだけど、なんか様子がおかしい  作者: よく知らんロボ
第一部 異世界にて

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 強化剤の材料は相変わらず人間だ。


 しかしその頃には材料となる人間はエクストラスキルを所持しいなくても良いとされていた。

 エピックスキルやレアスキルを持つ人間素材と魔物の肉を調合することによって、以前と同程度の品質の物を造れるようになっていたからだ。


 これが生産量を増やすことのできた大きな要因である。


 材料となる人間にはスラムの住民や敗戦国の難民、ダンジョンで死んだ引き取り手の無い冒険者などを使った。

 この時代の人間はほとんどがスキルを習得しているので、レアやエピックのスキル持ちであれば比較的簡単に手に入ったのだ。

 魔物肉は言わずもがな冒険者が勝手に持ち帰ってくれる。


 多くの冒険者達はそうして造られた魔物成分たっぷりの薬物を常用し、加えてダンジョンで魔物食も行っていた。

 彼らは知らず知らずの内に魔物という異物を体内に取り込み過ぎたのだ。


 そして事件当日。


 場所は深層に程近いダンジョンの中層であった。

 いつものようにレイがスキル強化剤を数本飲み干した時、異変は起こる。


 彼は突然苦しみだすと、そのまま意識を失い倒れ込んだ。

 だがすぐに起き上がると、心配して駆け寄った仲間の一人の首を掴み、頚椎を引きり出す程の勢いで引き千切り殺害。


 オーバードーズで極まった身体強化スキルの膂力りょりょくは、吐き気を催す程の残酷な人間の殺し方を可能にしていた。


 その後は想像するまでもない。

 悲鳴をあげ逃げ惑う残りの三人のうち二人をあっという間に惨殺。

 死体は全て人間の形を留めていなかったという。


 残った最後の一人は女性のメンバーであった。必死に逃げる彼女であったが身体強化された相手に足で敵うはずもない。


 レイは狩りでも楽しむかのように彼女を捕まえると、本能のままに強姦した。

 女性は恐怖のあまり抵抗する気力すら無く、何度も犯され続けた。


 破壊衝動と性欲が満たされたレイは腹が空いたのだろう、あろうことか仲間の死体をむさぼり始めたそうだ。


 そこへ異変を察知して駆けつけた当時の最上位冒険者パーティーによってレイは討伐されたのだが、討伐時の彼の外見はもはや人間の姿ではなかった。


 頭髪は抜け落ち、筋肉は膨張、肌は灰色がかった色に変色し、口と手には鋭い爪と牙。それをレイだと認識できたのは首から下げたギルドの認証タグがあったからだ。


 冒険者レイ・グラント。彼こそが恐らく魔族の原型となる最初の一人だと、エルは考える。




『ここの討伐シーン、見てきたみたいに周囲の様子が鮮明に頭に写るな』

『この場面は断片的な情報を集積したものじゃナク、僕が実際に見てキタからネ』

『どおりで……。ちょっと吐きそう…………ということはつまり──』

『そう、最上位パーティーにいた魔女がこの時の僕の契約者サ。優秀な子だったヨ、僕の契約者の中デモ五本の指に入るくらいなんダヨ』

『いや、エル指無いじゃん』

『おまえの知識に合わせた表現なんダヨ。そんなコトも解らないカラおまえはモブなんだゾ?』

『ぐっ……』


 ちょっとツッコミ入れるとすぐ辛辣に返してきやがる……。まあ、言い返したらまた何言われるかわからんから黙っとこう……。


『おまえもモウ知っテルだろうケド、この魔女もこの後スグに死んじゃうけどネ』

『まあな、酷いもんだな……』


 本当に酷いもんだった。


 この後はもう誰でも予想がつくと思うけど、魔族化の連鎖が起こる。

 オーバードーズしていた奴らは勿論、用法容量を守って常用していた人間もだ。


 それはレイの魔族化に呼応するように日に日に増えていく。

 夜の街中や、皆が寝静まっているような時間に変異する人間もいたから余計にたちが悪かった。


 上位の冒険者と言えど、パーティーメンバーと組んでいなければ強さの本領は発揮できない。

 それに夜の物陰から背後を取る者や、寝込みを襲撃する明らかに狡猾な者もいた為、彼らがいくら個の力量で勝っていようと抗う術なく殺された者も多い。


 魔族の襲撃は日を追う毎に激化。

 大国も慌てて兵を出したが、相手は一流冒険者ですら殺してしまうような連中だ。

 戦争の終わりから数年が経ち、訓練もほどほどの気の抜けたような兵士達では歯が立つ訳がない。


 こうして大陸の覇者であった大国の首都は魔族の国に……、いやこの時点では魔族の生息地と言った方がしっくりくるか。

 そんな混沌とした魔族の生息地へと僅か数日にして変わり果てたのだった。


 余談ではあるけどレイに犯された女性メンバーはその後、あの時に身籠ったと思われる子供を産み落として自殺した。


 生まれてきた子供は異形であったそうだ。


 これで魔族始まりの話は一旦終わりだ。

 

『いや重いって……。しかし、一つ街が落とされたくらいでそんなに増えるもんなのか魔族って?』 


 当然の疑問だろう、あくまでも魔族が発生したのは広い世界の一部なんだからな。


 でもエルは良い質問だとばかりに得意気だ。


『それはスキル強化剤の技術が他の大陸や島国ニモ輸出されテタのが一番大きな理由なんダヨ』

『なるほどそれで世界中で魔族が発生して、千年以上掛けて今の情勢まで人間を追いやったわけか』

『そうサ、まあ細かい事を言えばモット紆余曲折あったけどナ。デモ良い勉強になったダロ?』

『いや絶望しかねえわ、何のためにこんなもん共有してきたんだよ!?』

『戦う相手の事は知ってオイた方がイイだろ? それとコッチが本題だけど、おまえが持っテル物がどういう物かも解ってた方がいいんダヨ』

『──! 知ってたのかこれの事……』


 鞄から取り出した紫スキルポーションを見せると、エルは真面目な顔に戻って話を続けてきた。


『それは、お前が思ってるよりずっと危険な物なんダヨ。昔の強化剤ほどじゃナイけど魔物由来の成分は今も使われているンダ』


 マジか……。俺、魔族化とかしないよな……?

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