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異能兵士全盛の時代を迎えた異世界、エクストラランク量産を目論んだ大国はある設備を完成させていた。
それはあのスキル抽出装置だ。
俺が見たのとは違う、もっと古くて未完成なものだけど用途は同じだ。
違う点があるとしたら抽出した後の使い方だろうか。
この時代の紫スキルポーションはまだまだ粗悪で、俺が飲んだ時のようにスキルを習得できる程の精製はできていなかった。
そのぶん毒性も弱いため、特殊な溶液で薄めたうえに少量であればだれでも直接飲むことができたらしい。
それはスキル強化剤と呼ばれていた。
飲むことによって一部のスキルの性能を向上させることができるという代物だ。
ただし素材となるのはエクストラランクなどの強力なスキルを保持する者である。
強化スキルを持った兵を増やす為にエクストラという天賦の才を持つ者を犠牲にしていたら意味がない。そう疑問に思ったけど、抽出対象は戦争で手足を奪われ戦闘能力を失った傷痍軍人や、スキル出力の落ちた年嵩の引退老兵達だったそうだ。
国はそのような不要となったエクストラスキル持ちの兵士を、手厚く保護するという名目で城内の施設へ監禁、抽出炉へと放り込み殺害し材料とする。
そうしてスキル強化剤の製造を繰り返した。
まさに戦力の再利用を目的とした常軌を逸する蛮行である。
しかしその効果は絶大であり、強化異能兵を有する大国は僅か十数年で大陸を統一したのだった。
それから少し時が経ち、奈落迷宮の誕生からおよそ百年。ダンジョンの様子も以前とは様変わりしていた。
見た目や内観は特に変わりないのだが、以前ほど鉱石や貴金属が掘れなくなってしまったのだ。それはシンクロニシティ的に全てのダンジョンで同様にして起こった現象だ。
単純に堀り尽くしただけなのかもしれなかったけど、はっきりとした原因は解ってはいなかった。
ある人はスキル習得を願うことによって現れる女神像が怪しいとか、またある人はダンジョンそのものが人間の乱用に怒っているのではないか、などと誠しやかに人々は噂した。
ダンジョンはただの鉱窟ではない、人の欲を食らってより深くなる生き物なのだと言う話が世に広まっていたからだ。
少し話が逸れたが、鉱石が掘れなくなった人々はこれからどうすればいいのか不安に駆られていた。
しかしその問題はすぐに解決される、突如としてダンジョンの最奥に下層への降り口が現れたからだ。
深い階層ならまだ鉱石や貴金属があるのではと考えた人々はこぞって下層を目指した。
その公算は間違っていなかった、深い階層にはより純度の高い鉱石や価値のある貴金属が埋まっていたのだ。
だがその代わり、危険度は以前とは比べ物にならない。層が深くなるほど魔物も狂暴かつ強力になるし、滞在期間も以前のような日帰りではなくなるからだ。
下層探索が始まった当初は相当数の犠牲者がでたものだが、そこはスキルを会得した今時っ子達。
慣れてしまえば多少強くなった程度の魔物なぞどうってことはない、むしろ下層探索は優秀なスキルを持つ人間にとってはそれを活かせる派手で見栄えがよく稼ぎもいい仕事として注目され始めるのだった。
次第に彼らは、青色以上かつ探索や戦闘に特化したスキルを持った者を先導者に据えて複数人でパーティーを組み、ダンジョンへと潜り戦利品を持ち帰るルーティンを生み出す。
そんな探索活動がテンプレ化されると、それが各地で大流行し始めた。
ダンジョンは基本的には国家の管理下にあるため戦利品は国営ギルドによって管理されてしまうが、それでも慣れた者や実力のあるの者に限れば個人の実入りは普通に働くよりよほど旨みがあり、何より一流になれば有名人として憧れの的にもなる。
その辺りが流行の理由だったようだ。
いつの時代も一見して華のある仕事は人気があるってことだな。まあ底辺は報われそうにないけど……。
まあこれはあれだ、ファンタジー物なんかでよく見る冒険者稼業というやつだ。
ここからは大冒険者時代の到来である。
冒険者達は競ってダンジョンの深層を目指すのだった。




