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エルの共有によって得た情報に対する疑問は二つ。
一つ、さっきの話を典拠とするなら、日本から転移してきた人間の中に魔女か魔法使いがいたことになる点。
二つ、魔女や魔法使いが人間ベースの存在だとすると、こちらの異世界にも人間が存在していなければならないという点だ。
まあ人間にしか魔法が使えない訳ではないかもだけど、俺の知ってる唯一の魔女ルサーリアの見た目は完全に人間だったからな。この異世界に人間がいてもなんら不思議はないはずだ。
いやなんなら寧ろいない方が不自然な気もするな……。
でもその辺は一人で深く考え込むより、エルに聞いたほうが早いな。
『エル──』
先に述べた疑問をエルに問い掛けてみた。
『まあ、当然の疑問だネ。ほら共有しておいたんダヨ。ただしいっぺんに詰め込むと良くないから、まずは一つ目なんダヨ』
『ありがとう』
────ふむふむ。
まず転移してきた人間に魔法を使える者がいたかどうかだけど、結論から言えばいたようだ。
どうやら地球側にも魔法の素養を持った人間はいるそうだ。
しかしあちらには魔力という概念が無いのでそれらは普通の人間と変わらない……ように見えるがそうではないらしい。
魔法使いとは言わずも、霊能力者、占い師、超能力者、預言者、例を上げればキリがないくらい存在する胡散臭い肩書きを持った方々、それらが地球にもいるのは周知のことだろう。
だけどあの人達の中には稀に本物が紛れている。
科学では証明のしきれない事件や事象ってのは世界に色々とあるんだろうけど、それらに関わってたり、解決したりしてきたのがその『本物』の能力者達であり、それらこそが魔法の素養を持った人間なのだそうだ。
素養を持つ人間が異世界に転移すると、魔力という概念に触れることによってその才能はさらに開花するらしい。
その辺りは先祖返りに近いのかもしれない。
と言うことはだ。紫スキルを付与された六人の中に、本物の超能力だか霊能力だかを持ったとんでもない人間がいたことになる。それもエルを貰えるくらい最上位のだ。
自身で魔法という名の超常を創造し行使できる魔法使いと、無尽蔵の知識共有媒体であるエリクシル。
他にどんな使い魔がいるのか知らないけど、それでもその組み合わせは反則クラスと言えるくらい強力なのではなかろうか。
エリクシル、またもや俺には過ぎたる物だったか……。
そしてこれは俺が当初に考えていた通り、「紫スキル所有者はスキルを与えられる前から凄い人間である」という予想に当てはまる。
そうなってくると紫スキル保持者で唯一生存している星澪奏紗は、スキル以外に一体どんな凄い才能を持っているのか俄然気になってくる。
きっとそれは彼女が手に入れたエクストラスキルに直結する事は間違いないだろうから。
まあ、ここで考えても意味ないか……。
『しかし闇の手、救世の翼、それにエルもか、知れば知るほど俺には宝の持ち腐れと言って差し支えないスキルだな』
『いきなりドウした? 今更気づいたのか凡夫クン』
『うるせえ。……って言ってもこれまでのどの戦いでも自分の凡庸さは身に沁みたよ。どれか一つでもスキルを完全に使える才能があれば、もっと楽にここまでこれたんだろうって思うしな』
自分でも珍しいくらいに愚痴を吐いてしまっている。俺は普段から他人にあまりこういう話をしたくないんだけど……まあこいつ人間じゃないからいいか……。
『なんだヨ、そんなコトか。僕は今まで色んな魔女や魔法使いを見てキタけど、生き残るのに必要ナノは才能だけじゃないんダヨ。凄い才能があるのにすぐに死んだ子もいたし、才能以上の実力を身につけて長生きした子もいたんダヨ』
『ふーん、でもエルを呼び出せるくらいだからみんな凄い奴らなんだろ?』
『まあネ、差はあれど皆平凡の枠には収まらない子ばかりダッタさ。だけど大成して長く生きた子に共通してたのはどんな時でも考える事を止めないトコだったカナ、どんな事でも諦めて思考停止なんてしないノサ。そういう意味じゃおまえは今のところホンのちょっぴりだけど見所がアルと言って良いんダヨ』
なんだよ、いきなり。こいつに誉められるとほんのちょっぴりでも嬉しくはあるな……。
『ちなみにおまえの才能は今マデの僕の契約者の中で圧倒的最下位だけどナ』
『落とさなきゃ気が済まないのかよ……まあいいよ、知ってるし。いや愚痴って悪かったな。じゃあもう一つの情報も共有してくれるか?』
『わかった、いま共有したんダヨ』
────なるほど。
この異世界に人間はいるのか、その疑問の答えは……。




