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異世界召喚されたんだけど、なんか様子がおかしい  作者: よく知らんロボ
第一部 異世界にて

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 まずは視界の少し先にそびえる魔王城を目指して歩く、目算でおよそ数百メートルと言った距離だろうか。


 少し進むと、木々を掻き分け城へと向かって伸びる林道の入り口へと辿り着いた。


 足元を照らしてくれていた煌々と輝く星明かりも鬱蒼とした木々に遮られてしまっていて、その道はほぼ真っ暗闇だ。

 この辺りには照明器具も設置されていないから余計に暗いな。


 とは言え、俺の強化視覚と牌谷さんの魔族由来の強力な夜目ならこれくらい特に問題はない。


 道すがらグールとおぼしき臭いや気配を感じとる事があったけど、俺が一定の距離まで近寄ると奴らは死体だけ残して一目散に逃げ出していく。

 穢霊えいれいとやらに感情があるのかは知らないけど、さっきの一件でどうも俺は恐怖の対象として認識されたらしい。


 まあ()というより闇の魔獣がと言うのが正しいんだろうけど、どちらにせよありがたい。


 十分くらい歩いただろうか、あの長い階段を登りきっても息一つ切らしてなかった牌谷さんの呼吸が僅かに荒い。


「大丈夫ですか、少し休みましょう」

「ううん、大丈夫。……安心して、今度は強がりじゃないから」

「…………わかりました。疲れたらいつでも言ってください」

「うん」


 さっきの治療も応急的な事しかできてはいないのだから、まだ全快に至らないのは無理もない。


 うーん、急ぐべきか休むべきか……。


『そうだ、エル』

『なんだヨ』

『この世界の今日の日の出はいつか解るか?』

『解るサ、でもちょっとこの時期は特殊だカラ関係資料も共有しとくんダヨ』


 なんだよ特殊って……、まあいいか。


『ありがとう』


 ──ふむふむ。


 結論から言うと次に日の光が差すまで残り一時間ちょっと、思ったより切羽詰まっていたようだ……。


 それと、日の出の時間とは少し違う話になるけど、エルに貰った知識によれば贄の夜とはこの異世界のとある自然現象に乗じた祭事である事がわかった。

 贄の夜が始まった日から最終日を迎えるまでの期間、この魔族の国がある地域では大陽があまり顔を出さなくなるそうだ。

 昼が無くなる現象、つまり白夜の逆。地球で言うと極夜のようなものだろうか。


 簡単に言うと、年に一度、大陽の存在が薄れる三日間を利用したどんちゃん騒ぎ、それが贄の夜なのだそうだ。


 地球では極寒の高緯度地域でしか見られない極夜だけど、異世界ではこんな気候のよいところで似たようなことが起こるようだ。


 どういう自然のメカニズムかは解らないけどもこれは好都合……と思ったけどそうでもないらしい。


 なぜなら贄の夜の間はあくまでも日光が薄くなる程度であり、完全な夜闇が続く訳ではないからだ。


 日が昇っている時間帯になれば夕暮れや明け方くらいの日差しは差し込むらしく、僅かでも日の光があるのなら潜影は使えないと考えた方がいいだろう。

 

 色々と説明したけど話を戻そう。

 重要なのは始めに言った通り、日の光がそのかすかな薄明かりをこの世界に差し入れるまで残り一時間と少ししかないという点だ。


 もっと早くエルに聞いておくべきだった……、こうなると一気に選択肢は狭まってしまう。


 エルの知識共有で魔王城の敷地内に日光を遮断してくれそうな場所は幾つか把握してはいる。だけどそこが本当に完全に遮光された人気ひとけの無い安全な場所かどうかは、実際に行って確認してみないと解らない。

 だけどこのだだっ広い大きな城だ、今はそれらの場所を歩いて回って確認してる時間は無いし牌谷さんにもその体力は無いかもしれない。


 付け加えるなら狭い部屋もダメだよな、せっかくの潜影も予期せぬ接触の確率が上がる窮屈な場所じゃゆっくり休息などできはしないだろうし。


 うーん、どうしようか……。


 彼女の手を引き、魔王城への道すがらしばらく黙って考えを巡らせる。

 すると閃きと言えるかは解らないけど一つ妙案は浮かんできた。


 そうだ、一ヶ所だけ確実に日光が遮断されていることが確約されている広い場所がある。


 そこなら魔族さえ居なければ休息には持ってこい……のはず。



 ※



 よし林道を抜けたぞ、やっと魔王城に戻ってきた。


 空はまだ暗いけど、影を潜め始めた星明かり達が夜明けが近いことを告げてくる。

 それでも贄の夜はまだまだ隆盛を極めているらしく、魔王城の周りを練り歩く魔族の数は全然減ってはいない。


 でもここまで来ればあと少しだ。


「もうちょっとで休めるとこにつくので頑張ってください……」

「うん、大丈夫……」


 周囲に気をつけながら、小声で話す。


 思ったより牌谷さんの声に力があって安心した。


 これならなんとかなる、そう思いながら進む方向を指で刺すと彼女はうなずく。

 近くの階段を上がり、躍り出たのは闘技場に行く前に通った二階の遊歩道だ。


 そう言えばここで魔女が夜空を見上げていたな。まだ何時間かしか経ってないのに、もう何日も前の事のように感じるよ。

 なんだかんだあの時の俺よりは少しは成長したんだろうか。


 少し感慨にふけりながら見覚えのある通路を遡るように進んだ。


 そしてとうとう辿り着いた。


 スタート地点、スキルの抽出施設だ。


 未来視で見たノクスがここはもう調べたような感じの事を言っていたからな、アイツがここにいる可能性は低いと思う。


 刑事ドラマなんかでは現場百篇なんて言うけど、魔族にそういう気質が無いことを祈るよ……。

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