300話 桜色に染まる桜の木
チェリーに連れられ、お茶屋に入った三人。中に入ると、ピンク色の髪をした舞妓さんがたくさんいて、三人を歓迎してくれた。
「お客さん、ようこそおいでやす桜色の国へ。まあまあ、今日はいい天気どすえ。縁側でお茶でもいかがですか?」
三人はチェリーと舞妓さんに連れられて、そのままお茶屋の縁側に案内された。そして庭には灯籠があり、ししおどしもあった。まさに花街のお茶屋だ。そしてその縁側からは街の中央にある巨大な桜の木がよく見えて、桜がきらびやかに散っていた。
「ああ、なんとも美しい風景だ。しかし、ああやって桜が散ってしまえば、もう見れなくなってしまうのだな。桜は美しいが儚い。だが、それもまた一興か」
コバルトがまるで詩人のように何か呟いていた。ライトはどこかそんなコバルトに違和感を感じ取った。何かがおかしい。コバルト、何かに毒されているような?そんな気がしていたのだった。
「お待たせいたしました。さ、こちらをどうぞ」
チェリーが、やってきて三人にお茶と茶菓子を差し出す。コバルトは以前、チェリーが紫の国で作ったチェリーパイかと思いきや、違った。なんとそれは洋菓子ではなく、和菓子だった。
「さ、桜餅‥!」
そこに出てきたのは、ピンク色の皮であんこをくるみ、さらにその皮を桜の葉っぱで包んだ桜餅だった。桜餅は関東と関西で形が違うが、こちらに出てきたのは関東に馴染みのある桜餅だ。
「はい、桜餅です。どうぞ。この桜色の国の名産で、あとこちらは桜ティーです」
チェリーは桜餅と一緒に、真っ白な陶器に桜の絵が描かれている湯呑に注がれた、桜ティーを出してきた。そして薄いピンク色の液体にの上に、ちょこんと桜の花びらが乗っていた。桜の木から桜の花びらが儚く散るお茶屋で出された桜餅と桜ティー。まあ、桜づくしでなんとも風情なものだ。
「わあー!桜餅だ!美味しそう!いただきます!」
ピュアが嬉しそうに桜餅を食べる。コバルトもライトも同じように桜餅を食べた。ああ、中の甘いあんこに桜餅の皮と桜の葉っぱのしょっぱさがなんともマッチしていて、美味しかった。
「チェリー様ぁ〜!チェリー様はいらっしゃいますか?」
三人が、お茶を楽しんでいると、急に外から大きな声が聞こえてきた。どうやらチェリーになにか用があるようだ。
「ん?なんだ?騒々しい。今は青魔族の方々におもてなしをしているというのになんのようだ?」
「いやはや、チェリー様!もう街の中央のシンボルの巨大桜がみな散ってしまわれたのです!せっかく今盛り上がっているのに、これでは続けられません!」
一匹のピンク色をしたウルフがお茶屋に入ってきてチェリーに叫ぶ。どうやら酔っ払っているようで、まともに呂律が回っていなかった。
「そうか、わかった。今行く。皆様、騒がしくて申し訳ありません。少し席をはずさせていただきます」
「ん?チェリー?どうするんだ?桜が散ったとか言っていたが」
ライトがチェリーに尋ねると、たしかに街の中央にある、巨大な桜は先程、すごい風が吹き、桜吹雪が吹き荒れ、皆散ってしまっていた。しかし、桜は儚く散ってしまうのが運命なのだが、一体何をするつもりなのだろう?
気になったライト達はチェリーに許可をとり、後についていった。そして一同が巨大な桜の木の下につくと、そこには酒に酔っ払って宴会をしているたくさんのピンク色の魔族達がいた。
「おお!チェリー様!お待ちしておりました!ささ、よろしくお願いいたします」
「ああ」
チェリーは何かを頼まれると、ただ一言だけ返事をして、魔力ポケットから何かをだした。それはなんと大きな臼と、中にピンク色をした灰が入っていた。ん?なんだ?こんなものをだしてどうするつもりなのか?ライトは不思議だった。
チェリーがそのピンク色の灰を手に掴み、握ると、なんと桜の木に向かって思いっきりまき出した。風にのって灰が飛び、なんと枯れ木に花が咲き、桜の木がまた桜で覆われた!
「おおー!チェリー様!ありがとうございます!これでまた、お花見が続けられます!」
チェリーの不思議な灰の力で再び花が咲いた桜の木。みるみる生命力に溢れ、まるでそれは再び命を吹き込まれたかのようだった。
(うわー!すごいすごい!花が咲いた?なんだあれ?はなさかじいさんか!いや、花さかイタチだな)
コバルトはただただ、チェリーが花を咲かしたその光景に見惚れていて、ぼーっと見ていた。ピュアも同様。桜が再びパッと咲いたそのシーンをみて、ただただ感動をしていた。すごーい、まるで魔法みたい!キレー!と。
二人が新しく咲いた桜に見惚れている中、ライトだけは、恐ろしさを感じていた。失われたはずの花に命を吹き込んだチェリー。一体何だこれはと、どこか不気味さを感じたのだった。




