299話 桜色の花街
突如、コバルト達の前に桜吹雪とともに姿を現した、赤魔族ナンバー4のピンク色のイタチ、チェリー。
ライトはチェリーを見るなり警戒をし、ステッキを構えた。
「チェリー!き、貴様一体なぜ」
ライトがガタガタと震えながら、居合の構えをし、フーっと威嚇した。ライトにとって、チェリーは得体の知れない相手で、恐怖の対象でもあったのだ。
「ライト?と、いいましたね。とりあえず今は交戦の意思はありません。どうぞ剣をしまってください」
ライトの物凄い威嚇にも、全く物怖じもせず、冷静に対応するチェリー。ライトだけでなく、コバルトもその様子に不気味さを覚えた。
「そうよ!ライト!落ち着いて!きっとこの子は悪い子じゃないわ!私にはそんな気がする!」
ピュアがライトをなだめる。ライトは逆立てていた毛を、ふっと下ろし、威嚇をやめ、帽子をとって冷静に挨拶をした。
「これはこれはチェリー様。私としたことが大変失礼いたしました。改めてよろしくお願いいたします」
ライトがふっと、我に返ったようにチェリーに挨拶をした。いかんいかん。俺としたことが、つい、とライトは気を取り直した。警戒は解くことのできない相手だが、ここではやめておこう。そう判断した。
「はい。こちらこそ唐突に申し訳ありません。ピュア?と言いましたね。どうもありがとうございます。とりあえず皆様とお話がしたくこちらまで出向きました。ささ、どうぞこちらへ」
チェリーはそう言って、三人を案内し、一緒に桜並木を歩いた。
「うわー!す、すごい!絶景だな!」
コバルトは桜色の国の入り口の、美しい桜並木を歩き、その景色に感銘をうけた!す、すごい!もう冬にはいるというのにこの暖かさ、そしてハラハラと儚く散る桜吹雪。なにか、学校の入学式を思い出すような気分になった。
「すべて、ソメイヨシノです」
チェリーが突然、口を出す。ソメイヨシノ?ああ、桜で最もメジャーな木だ。ピュアはどこかそれを覚えていたが、なぜチェリーがソメイヨシノを知っているのか、それが不思議だった。
「はい、皆様。到着致しました。ここが、桜色の国です。ようこそ、桜色の国へ」
美しい、ソメイヨシノの桜並木を抜けると、そこはなんと、今まで見たことのないような、和風の古民家が一軒一軒立ち並び、その間には一本一本、桜の木が生え、ハラハラと桜が散っていて、みな、和風の衣装を着ていて、そしてピンク色の魔族ばかりだった。
「うわー!なにこれ綺麗!すごーい!まるで京都みたい!」
ピュアがよくわからないセリフをはく。京都?たしかに今までの国とは違い、西洋の造りの町並みではなく、古い、和風な作りの街だ。そしてあちこちで桜が咲き乱れ、街の中央には、一本の巨大な数十メートルあるであろう、巨大な桜がそびえ立っていた。
「あの桜、凄いな。まるで五重塔だな。うん、そうだ。ピュアの言う通り、春の京都に来たみたいだな。舞妓さんもいるし」
コバルトが顔を赤くしてポーッと眺めている。たしかに、街の至るところに、髪がピンク色の舞妓さんがいた。いや、舞妓さんというより?
「あれは、遊女か?」
コバルトが和服を着た、舞妓さんなのか、遊女なのかわからない女をぼーっとしながら見惚れている。ピュアはそんなコバルトの様子を見て、ふくれっ面をしていた。
「ほう、コバルト様。よくお気づきになられましたね。はい。こちらは遊郭と花街が合併したような場所です。まあ、そのような造りにしているのですが、コバルト様もよろしければいかがですか?」
「ないない!コバルトには必要ない!何言ってるのよ!チェリー!」
ピュアが物凄い勢いでチェリーに食って掛かる。おーこわ、顔が鬼のような形相になり、頭から今にも角が生えそうな勢いだった。だが、そんなピュアの剣幕にも、チェリーはまったく動じることもせず、淡々としていた。
「そうですか、残念です。では中でとりあえずお茶でもいかがですか?」
チェリーはまるで態度も表情も変えず、三人をお茶屋へ案内した。す、すごい、まるで春の京都の花街だ。そんな中で三人はお茶をすることになった。
(花街だと!?馬鹿な!なぜ赤い国にこんな地区がある?そしてなぜ我々をここに招いたのだ?チェリー?一体何を考えている?)
ライトはチェリーの思惑が理解できなかったが、とりあえず一緒にお茶をすることにした。もちろん警戒は解かなかったが。そしてコバルトは、その春の陽気と、きらびやかな花街の遊女や舞妓さんたちを見て、ふわふわな気持ちになり、遊郭で遊びたいとか、脳内お花畑状態になっているのだった。




