116話 青の呼吸
戦いが終わると、二人と一匹は闘技場から出て、宿へと戻った。クリームはライトに回復魔法をかけ続けた。そして一定時間が経つと、ようやくライトは目を覚まし、二人と顔を合わせた。
「ライト!よかった!気がついた!?」
「ライト!大丈夫か!?」
クリームとコバルトがライトに話しかける。ライトは二人を見ると、ふっと表情を緩めてコバルトにこう言った。
「コバルト、またもう一段階強くなったな。今のお前はメイズよりも一段階強い魔族だ。逆に俺はメイズより一段階弱い魔族だがな」
「ああ、ライト、ありがとう。お前も最初あった時よりもずっと強くなったな。あの変身能力を自由自在に操れるようになっていて、まさか元に戻ってああやって攻撃してくるとは思わなかったよ」
「ああ、あの能力はコントロールが効かなかったが、ずいぶんできるようになった。変身を解いてもああやって動けるのがわかって不意打ちに出たんだが、ははは、コバルト、お前には通じなかったな。あの一瞬で呼吸を使えるようになるとはな」
「呼吸?」
ライトの発言にコバルトは驚いた。呼吸?一体それはなんだ?何か新しい力なのか?と。
「そう、呼吸だ。『青の呼吸』転生者だけに与えられた特別な力。ロイヤル前国王もこの力を使うことができた。これは無我の境地に立たされた時にでる、火事場の馬鹿力のようなものだ」
「火事場の馬鹿力か・・・」
コバルトはその言葉を聞いて何となく理解できた。呼吸。たしかに普段から息を吸ったり吐いたりしている。そして追い詰められたあの一瞬で恐怖の中、小さく深呼吸をすると、体が勝手に反応したような感覚を覚えている。
「超一流の戦士で、半分人間の血を持つお前たち転生者だけに許された力だ。我々普通の魔族にはない。とうとうお前もあの力を使うことができたようだな。よかった。これでもう俺がお前に教えることもすることも何もない。やるだけやった。あとはクロムに挑むだけだな。おそらくはあいつも呼吸を使うことができるはずだ」
「ああ、たしかイチローも体が勝手に動くと言っていたな。それと同じような現象か。ライト、お前が命をかけて体を張って俺に教えてくれたんだ!どうもありがとう!」
イチロー?またなんかよくわからないことを言っているがまあいいやとライトは思った。そしてライトも自分もレベルアップしてい事に気づき、戦うべく相手と決着をつけなくてはと思った。
(アプリコット、待っていろ、今の俺ならお前に負けない)
ライトはベッドに寝たままステッキをギューっと握りしめていた。もっとだ、もっと俺は強くなれる!そしていつの日か、師範をも超えてみせると、この時心に誓ったのだった。
コンコンとドアのノックがなる。はーい。とクリームが返事をするとドアがガチャリと開き、サルファーが顔を出した。
「失礼いたします。ご夕食の準備が整いました。まだ夕方前ですが、ご支度ができましたのでご案内に参りました。あと三時間後ほどにお召し上がりになられると思います」
「ああ、サルファー、どうもありがとう。あなたとても親切なのね。ここの宿主でもないのに」
「いえいえ、クリーム様。あなた方は客人ですのでお気になさらず。そういえばご夕食の前にご入浴されるかとは思いますが、ここから少し離れた場所に、貸し切りの温泉がありますのでよろしければご利用致しますか?私のつてでしか入れない特別な温泉なのですが」
温泉!?そう聞いた瞬間、クリームは何やらワクワクが止まらなかった。緑の国でもハンタと一緒に入れた温泉。もしかしたらもしかしたら?
「はい!是非入りたいです!私温泉大好きで!」
「かしこまりました!では係りのものに連絡しておきますね。あとすみません、あちらの温泉は男女混浴となっておりまして。貸し切りにしておきますので別々に入られる場合は時間帯をずらしてお声掛けくださいませ。コバルト様、クリーム様、ライト様でご予約を取っておきます」
(こ、混浴!?)
クリームの目がギラリと光る!混浴!?やった!嬉しい!もしかしたらコバルトと一緒に入れるかもしれない!と。
「ああ、混浴か、めんどくさいな。じゃあ俺先に入ってくるからでたらクリームが交代で来てな。サルファー、一応俺が最初の予約者ってことで」
「かしこまりました。コバルト様」
コバルトがそう言って勝手に予約を取ってしまったのでクリームがズーンと気が落ちてしまった。あーあ、どうもこの人はこういうことはサクサク話進めちゃうんだからと。
(け、けどもしかしたら、入れ違いになったら・・!って、そんなの無理よね。だってでたら交代って言ってるもんね)
ということで夕食まで時間がないので先にコバルトは温泉に向かうことにした。クリームは何かあるかなと期待をしてはみたが、どうせ何もないだろうと半ば諦め状態でコバルトを見送っていた。




