115話 黄色い覚醒
ライトの剣技がコバルトに襲いかかる。コバルトはどうにか反応することはできたが、もはや対応は間に合わなかった。ああダメだ。これはこのまま斬られてしまう。俺の負けだ。コバルトは直感でそれを感じ取った。
しかしコバルトはこの時、無我の境地にいた。負ける?この俺が?今まで誰にも負けたことのない俺が?メイズにもハンタにも勝った。戦いの相性はあるとはいえ、初めての種族だったとはいえ、自分より格下のこのライトに負けるのか?
ライトの剣がものすごくゆっくり動いているように見える。ああ、ダメだ。どうあがいてもこれには対応できない。俺は自分が以前より成長したこと、そしてライトが今まで戦ったメイズやハンタより実力は下だったこと、そしてライトには負けるはずがないと思い手を抜いていたことが仇になったのだ。
けど、いくら相手との相性が悪かったとはいえ、ここで負けていいのか?ライト相手に敗北するようではこれから先のクロムや赤魔族との戦いに勝ち抜いていけるのか?ライトは味方だから命は取らないけど、これが敵であれば俺はここで死んでいるぞ?コバルトは自分に言い聞かせた。
(そうだ、俺はこんなところで負けるわけにはいかない!味方だから、相性の悪い獣族だから、手を抜いていたから、そんなのは理由にならない、ここは戦場だ、負ければ死ぬ!俺は、俺は絶対に負けちゃならない!)
コバルトが心でそう決意をし、小さく呼吸をすると、右手に持っている剣でライトの斬りかかりに即座に反応した!それはあまりに一瞬の出来事であり、ライトもクリームも全くその動きが見えなかった。
ギン!という音がなり、ライトの剣技をコバルトは受け止める。なんだ!?何が起きた!?ライトはあまりの速い反応に何が起こったのか理解できなかった。
(な!コバルト!完全な死角からの不意打ちにこうも反応したのか!?ば、馬鹿な!?完全に打ち取ったはずだったのに!?なんだこの反応速度は!)
「絶対零度!」
ライトが驚いていると、コバルトは即座に魔力を流し込み、ライトの剣と両腕が凍りついた。そしてそのまま左腕でライトの顔面を思いっきりパンチした。
ドッコォーン!!という音と共にライトは口から血を吹き出し宙に舞った。そしてコバルトは瞬時に宙に移動し、ライトの上をとった。
「ライト!これで終わりだ!氷蓮斬!」
コバルトはそのまま血を吐いて宙に浮かんでいるライトを上から斬りつけた。
ザン!という音と共にライトは宙で斬り付けられ、下に吹っ飛んだ。そしてそのまま地面に叩きつけられて、その場で気を失った。
「ライト!」
クリームの声が室内に響き渡る。コバルトは地上に降りるとハアハアと息を切らしてライトを見ていた。ライトは白目を向いてぐったりしていて、体には斬られた跡がある。
「ライト!大丈夫!?」
クリームが駆け寄ってライトの様子を見る。ああ大丈夫だ、気を失っているが命に別状はない。それにしてもコバルトをここまで追い詰めるとは!ライトも確実に以前より強くなっているなとクリームは思った。
「クリーム、すまない。気を失っているだけだ。俺もここまでやらなくちゃ、ライトには勝てなかった。回復魔法をかけてやってくれ」
「う、うん、コバルト、お疲れ様。あとは私に任せて」
クリームはライトを抱き抱えると、回復魔法をかける。大丈夫だ。気を失っているが致命傷は負ってない。
(やっぱりコバルト、ちゃんと手加減してくれたのね。そうよね、だってメイズをも切り裂いた斬撃だもの。ライトだって本気でやってたらきっと死んでたわ)
クリームがそう考えていると、コバルトは不思議な感覚に包まれていた。なんだ?あのライトから斬撃を受け止めた時のあの感じ、そう、あれはたしかメイズから攻撃を受けて死を決意した時と同じような感覚だった。なんというか、自分の中にある、新しい力の扉が開いたような。
コバルトは新たに芽生えた新しい力に高揚していた。あの一瞬でライトの攻撃を受け止めた自分。一体あれはなんだったのか?コバルトは疑念を抱きながらもただただ自分に力が溢れてくるような感覚をひしひしと感じ取っていた。




