110話 黄色い潜伏
ライトに喉元に刀身をあてがわれているサルファーは震えと汗が止まらなかった。ダメだ、どうすることもできない。ここは正直に答えるしかない。
「正直に答えろ!誰の命令だ?命までは奪いはしない。ゴールドか?アプリコットか?」
「ア、アプリコット様だ」
「そうか、やはり貴様、アプリコットの手の者だったのか!言え!アプリコットは何を企んでいる!?」
「私は正直に話した!とりあえず剣を下ろしてくれ!」
サルファーはそういうと、ライトは言われた通り剣を下ろし、刀身をしまった。そして腰にステッキをしまうと一歩下がってフッとため息をついた。そしてサルファーをギロリと睨みつけた。
「わ、悪かった、悪かった。私はアプリコット様の命令でただお前達を監視していただけだ。特に何かしろと指示を受けたわけではない」
「ハン、初めからくさいとは思っていたが、とうとう尻尾を現したな。まあいい。どうやら嘘はついていないようだ。それはわかる」
ライトがカウンターの席にゆっくりと座り、とりあえず落ち着くと、サルファーはその場に尻餅をついてヘタっとなってしまった。どうやら命まではとらないだろう、助かったようだ。
「ここは黄色い国だ。俺達が変装をして潜り込んでいることを、他の黄魔族にバレればめんどくさいことになる。この街でゆっくりと情報収集もできなくなるだろう。だから俺達も問題を起こす気はない。ただ貴様がもし少しでも俺たちに危害を加える、または不審な動きを見せたらその時はわかっているな?」
ライトが威圧的な態度でそういうとサルファーは尻餅をついたままガクガクと震えながら涙目で何度もうなづいた。ライトが怖い。目がギラリと光り、禍々しいオーラを出してくる。こんなのと戦ったら自分なんか一捻りだろう。
「よろしい。では俺は宿に戻る。あとそうだ。とりあえず二人だけで戦う場所が欲しいのだが、近くにあるか?そこを借りたい」
「ふ、二人だけで戦う場所だと?近くに使い古した闘技場のような場所はあるがいったい何のために?」
サルファーが問いただすとライトの目がギラリと光る!サルファーを威圧している。それ以上何も聞くなと。
(ヒ、ヒィ〜)
サルファーは涙目になりながらそれ以上何も聞かなかった。ライトが怖い。怖すぎる。やはりアプリコットの手の物とバレた以上、ヘタな動きはできない。
「とりあえずアプリコットには、特に変わった様子はないと伝えろ。そして何かしら指示を受けたらその時はきちんと俺に報告するように。先ほども言ったが少しでも不審な動きを見せたら分かっているな?」
サルファーは震えながら何度もコクコクとうなづいた。そしてライトは部屋を出て宿に戻った。サルファーはあまりの恐怖に長い間そこを動くことが出来ず、その場でガタガタと震えていた。
(た、助かった。どうやら命だけは助かったようだ。あ、あれが青魔族最強の戦士か、恐ろしい)
ライトは宿に戻ると、とりあえずその日は休んだ。初めての黄色い国の遠征で二人と一匹は疲れていた。青い国や緑の国とは違う気候。そして環境。この場に早く馴染めなければ戦いも厳しくなるだろう。そんなことを考えていた。
「コバルト、ちょっといいか?明日お前に用がある。室内闘技場をサルファーに借りたからとりあえず明日、そこまで来てくれ」
「ん?何だライト?闘技場?戦いでもするのか?わかった」
ライトは何かコバルトに用があって戦う場所を借りたようだ。そういえばこの国に来てからまだ戦ったことはないが、何かしらライトの考えるところがあるのだろう。
(むー、ライト部屋二つ借りちゃって!もう!どうせならライトが一部屋使って私とコバルトでもう一部屋使いたいのにぃ!なんてきゃー♡)
クリームは初めての遠征で、コバルトと一緒に来れたことが嬉しくて仕方なかった。夜寝ている時も時々一緒にいたいと部屋をノックしようとするが中々勇気が出なかった。
(あーあ、やっぱりハンタみたいにはできないなあ、私。まあ今日はせっかく違う国に来たんだし、みんな疲れてるだろうかゆっくり休もう)
クリームはそう言って部屋に戻って就寝した。その日違う環境の国に来た二人と一匹は疲れによってぐっすり眠り込んだ。こうしてコバルト達の初の遠征「黄色い国」は幕を開けたのだった。




