109話 黄色は警戒色
コバルトはその騒動が収まった後も、なかなか震えが止まらず、緊張が解けなかった。ここは戦場ではない、街中だ。平和なはずの街中が一瞬にして戦場に様変わりする。それはずっと平和な街中にいた彼には刺激の強い話だった。
コバルトのその様子を見てクリームがそっと手を握る。コバルト、大丈夫だからね、怖くないよ、と。
「コバルト、驚いたか?これが他国の現状なのだよ」
ライトが震えているコバルトに話しかける。どこか思い詰めたような様子だった。
「青は安全。緑も青に含まれるな。あの二国は安全な象徴さ。だけど黄色はどういう意味を持つかわかるか?」
「ああ、『注意』だろ?」
コバルトがライトに返す。
「そうだな。生物で言うと蜂だ。あれは体が黄色と黒でできているだろう?黄色と黒は警戒色と言ってな、外敵に目立ちやすい色は「自分に手を出すと危険である」ことを伝え、捕食者を寄せつけない効果があるんだ。たしか人間界にも「シャダンキ」ってものがあるんだろう?あれも同じだ」
(シャダンキ?ああ、遮断機のことか。確かにそれも黄色と黒だ)
そういうとライトはくるりとこちらを向き、コバルトの方へ向かい、ポンと腰をたたいた。
「これからまた色々とあると思うが、覚悟をしておけ、赤い国はもっとひどいぞ。ここはまだ可愛いもんさ」
ライトはそういうと、その後サルファーに取り次いで寝床を紹介してもらった。とりあえず今夜泊まる場所を確保するためだ。
「サルファー、すまない、今夜泊まる場所が確保できていないのだが、いい宿はあるか?」
「もちろんでございます。せっかく出会えたのも何かのご縁ですし、いいお宿をご紹介させて戴きます」
サルファーは自分がアプリコットと繋がっていることを、ライトに見抜かれないかと冷や冷やしていた。そして同時にライトは薄々感づいていた。このサルファーは何かしら上と繋がりがある。こいつを伝わっていけば楽に黄色い国の幹部たちに接触できるかもしれないと。
その後、サルファーは街中にある、黄土色色でできた四角い建物の宿に二人と一匹を招待した。中はとても広く、アジアンチックなインテリアと、全体的にベージュ色で統一された部屋を紹介した。
「へえ!これはなかなかいい部屋ね!ほんと、砂漠の国にきたって感じ!」
「ああ、二つ部屋借りられてよかったな。値段も安くしてもらえたし、なんだか砂漠の国っていってもいい宿あるよな」
「あれ?そういえばライトは?」
コバルトとクリームが話していると、ライトの姿がない。どこかへ行ってしまったのだろうか?
そして一方こちらはサルファー。
店の裏口にいると、バサバサバサと一匹の黄色い鳥が腕に降りてくる。伝書鳩で通信機の役割をしているカナリーだ。目が金色に光ると、アプリコットにつながった。
「こちらサルファー、アプリコット様。一同は無事、先導した宿に泊まることになりました」
「ご苦労だった、サルファー、何か変わった様子はあるか?」
「いえ、今のところはありませんが、実は街中で暴動がありまして、それを私が止めたところ、少しライトに勘付かれた様子でした」
「勘付かれただと!?そうか、だが街の治安維持はお前の責務だからな。これは致し方ない」
「はい、申し訳ありません、よろしければ今夜刺客を差し向けて確保いたしますか?」
「よせ、そんなことをしても無駄だ。いいか、あいつらは上級魔族だ、前にもいったがお前の敵う相手ではない。絶対に手を出すな!そしてお前の命を優先しろ!」
「はい、ありがとうございます、アプリコット様」
サルファーはそういうと通信を切り、カナリーはバサバサバサと飛んで行った。
サルファーは店のカウンターに戻った。そしてそこで考え事をしていた。ライト達を見張っていたが、いつ自分の正体がバレるかもわからない。危険だ。
「ふう、しかし通信して話すのも楽ではないな。いつ話を聞かれるか、神経を尖らせなくてはいけない。転送魔法で直接話せればいいのだが」
「誰と話をしていたんだ?」
サルファーがカウンターで頬杖をついていると、後ろから声がした。慌ててくるりと振り替えるとそこにはライトの姿があった。
「あ、ラ、ライト・・・!」
サルファーはライトを見て背筋が凍りついた。いったいいつからここにいたのだ!?どこから入った!?そして気配も全く感じなかった。
ライトはその場から一瞬で移動し、ステッキから刀身を抜くとサルファーの喉元に刃を当てがった。
「動くな!正直に答えろ!誰と話をしていた!?貴様、やはり上と繋がっていたのだな?誰の命令で俺たちを監視していた?」
サルファーはライトに刃を突きつけられて命の危険を感じ取った。速い!全く反応できなかった!そしてダメだ。強い、強すぎる。とても自分が相手になるレベルではない。下手をすれば上官のアプリコット様以上の強さだとその時確信したのだった。




