108話 黄色い暴動
「とりあえずさ、せっかくだから街を回ろう!何か情報収集できるかもしれないし!」
「ああ、そうだな」
クリームが元気がなさそうなライトの手を引っ張ってそこから街へ繰り出す。コバルトはその様子を見て微笑ましくなった。ああ、クリーム、ライトのことすごく気遣っているな、優しいやつだ。
その後、二人と一匹はとりあえず街を見て回った。砂漠の中にそびえ立つオアシスのような街、さんさんと照りつける日光の下、砂に反射して熱気がむわ〜っと湧いてくる。
「あーあちいあちい、緑の国と違って黄色い国は砂漠だからあちいな」
ライトが汗をかきながら杖で全身を覆う。細かい氷の粒をパラパラと出して涼んでいるようだ。肌寒い緑の国とは違い、こういう場所では氷の能力は役に立つ。
コバルトもライトの真似をして魔力の氷で涼む。クリームにも同じようじかけてあげた。それにしても急に環境が変わり、体調を崩さなければいいがとコバルトは少し不安になっていた。
ガッシャーン!
次の瞬間、ものすごい音が辺りに響く。何だ何だとあたりがガヤガヤしている。
「やんのかコラ!てめえ!」
「上等だこの野郎!表へ出ろ!」
通りに面しているバルのような店の中から大きな声と共に、二人の魔族が出てくる。一人は大柄な獣族の熊で、もう一人は頭からツノの生えたオーガだ。どちらもガラが悪そうだ。
すると突然、その黄色をした大柄の熊が手に持っているテキーラか何かの瓶をオーガの頭に思いっきり打ち付けた。
バリィーン!という音と共に瓶が砕け散る。オーガはそれに痺れを切らし、頭から血を流しながらそのまま熊に頭突きをする。熊はそこから吹っ飛び倒れ込んだ。
「おぉー!始まったか!やれやれ!」
わーという大衆の声とともに大柄な二人の魔族による大喧嘩が始まった。周りにいた魔族はものすごくエキサイトしていて誰も止めようとはしなかった。
「お、おいライト!なんか始まったけど、誰も止めなくていいのか?」
「ああ、コバルト、放っておけ、こんなことはこの国では日常茶飯事だし、大衆もこれを見るのが面白くて集まってきてるんだよ、それに見ろ」
ライトがそういうと、周りに集まっていた魔族が何やら嬉しそうに金を出し合いながら話をしている。どうやら賭け事をしているようで、どっちが勝つか、みんなで金をかけて予想しているようだ。
「俺はあっちの熊だな!あっちの方が力がありそうだ」
「俺はオーガだな!やっぱり悪魔族の方が頭は回るだろう。鬼だし力もあるだろうしな」
黄魔族たちはワイワイしながら嬉しそうに金を出し合っている。そしてその二人の魔族は取っ組み合いの喧嘩になり、なぐりあったり、蹴飛ばしあったり、もみくちゃになりながら血を流しながらものすごい死闘を繰り広げていた。
そしてとうとう、その熊の魔族の突進でオーガはそこから吹き飛び、字面に倒れて気を失った。すると大衆がわーっと大いに盛り上がった。こうしてこの戦いは大柄の熊の勝利に終わったのだ。
その後、血塗れになって倒れているオーガに熊が酔った勢いで殴りかかろうとするが、誰も止めに入らない。もはや気を失っている相手に攻撃すればそれこそ死んでしまうだろう。
「おい!ちょっと待て!」
コバルトが止めに入ろうとすると、次の瞬間、後ろからサルファーが現れた。
「その辺にしておけ」
サルファーは高らかにあげた熊の右手を掴み、ギューっと力を入れて、止めに入った。
「ああ?何だてめえは!」
するとその熊は酔っ払った勢いでサルファーを睨みつけ、左手でぶん殴ろうとした。
サルファーは手を離し、くるりと宙に舞うとその熊の背後についた。そして熊がサルファーの方を向くとサルファーは右手を構え、熊の胴体に思いっきり右手でパンチを打ち込んだ。
「あ・・!がが・・」
サルファーに打ち付けられた熊はその場で泡を吹き、失神してばたりと倒れ込んだ。そして再び大衆がわーっと喚起に包まれた。
「さすがはサルファーだ!」
「ああ!やっぱりあいつは強いな!」
どうやらこの辺りで、彼は有名人のようで暴動が起きたときの取り締まりとして、街を管理しているようだ。ライトはその一連の流れを見ながら、サルファーをじっと見つめいていた。
(なるほど、そこそこ強いな。中級魔族か。あれくらいの実力があれば、この辺りの治安維持を任されている感じか)
ライトの視線に気付いたサルファーは二人と一匹の元へ向かい、ペコリとお辞儀をすると、丁寧にこう言った。
「どうもどうも、騒がせいたしました。お見苦しいところをお見せいたしまして申し訳ありません」
「ああ、サルファー、すごく強いんだな。俺は驚いたよ」
「ああ、いえいえ、私などまだまだ」
サルファーがそういうと、近くにいた他の黄魔族に、何やら指示を出し喧嘩していた二人をそこから運び出した。そして周りにいた野次馬どもは賭けに勝ったものや負けたものでガヤガヤしていたが解散し、皆その場を後にした。
そしてコバルトはその様子を見てものすごく驚いていた。敵国とはいえ、青い国や緑の国とまるで違う、陽気な国だとは思ったが、まさか日常的にこんなことが起こるとは。そして実力でははるかに自分の方が上なのにも関わらず、平和な街中で突然このようなことが起こった現状に、震えが止まらなかった。




