107話 青い看護婦
「50年前、色彩戦争が終わった時、青魔族はどうにか今の領土、島国に逃げ出すことをでことなきを得た。しかし、それには数多くの犠牲を払った代償だ。俺の師範もその犠牲となった一人だ」
ライトは当時のことを俯いたまま辛そうに話し出した。そして二人の目を見ようとせず、帽子を深くかぶったまま、震えるような声で続けるのだった。
「事実上、戦争には敗れた。そしてどうにか休戦に至ったものの、そのあまりの代償大きさに悪魔族の看護婦だったターコイズはロイヤル陛下に再びこのような戦争が起きないよう、異議を申し立てた。だが、それは不可能に等しかった。戦争はまた必ず起こる。50年置きに。それはこの色彩戦争に立たされている全ての魔族の宿命のようなものだ」
ライトはそういうと、魔力ポケットから何やら手に収まるサイズの小さな絵の入った額縁を取り出した。そこには眼鏡をかけ、とても大人しそうで優しそうな美しい女性の姿があった。名前の通り、髪の色と目の色がターコイズブルーだった。
「綺麗な人・・・」
ピュアライトが取り出した絵を見てそう呟いた。コバルトもその絵を見て同じことを思った。とても美しくて優しそうだ。
「そして彼女は、とうとう陛下と言い争いになり、話がまとまらず、青い国を自ら出ていった。彼女に救われた、慕っていたたくさんの魔族はとても深い悲しみに覆われた。俺もその一人だ」
ライトの目から一筋の涙が頬を伝わって溢れ落ちた。ライトは顔を見せたくなかったのか、帽子を深く深く被り、顔を一切あげようとしなかった。
「ライト・・・」
ピュアがその様子を見て驚く。ああ、ライト、よっぽどのこの人のことを慕っていたのね。そうね。だってとっても優しそうだもん。ピュアはそう思ってライトを見ていた。
「そしてその後、ターコイズは紫の国に行き、国の頭首と話し合いをし、難民の受け入れの国を壁で覆い作り上げた。その壁はとても特殊な石でできていて、魔族が触るとまるで雷に当たったかのように弾かれる。どこで手に入れたのかはしならないが。そしてターコイズはそれ以来、青い国に戻ってくることはなかった」
ライトは右手で自分の顔を覆った。その目からは涙が溢れていた。そして涙を流しながら再び話を続けた。
「俺は・・・俺はあいつに何度も救われてきたのに、あいつが国を出るとき、何もしてやれなかった。あいつについていって協力することも、あいつを引き止めることも」
「けどライト!きっとまた会えるわよ!だってその国はその人が立ち上げたんでしょう?その透明の国に行けばきっとまた会えるわよ!」
「いや、クリーム、ターコイズは元々体の強い魔族ではなかった。そして死期を悟っていたのだろう。自分が死ぬ前に最後何ができるか、そう思ってきっと立ち上げたに違いない。あれは50年前のことだ。もうあいつはきっと生きていない」
ライトは顔をぐしっと拭うと二人と目を合わせて向き合った。そして真摯な表情で向き合うとこう言った。
「クリーム、コバルト、この黄色い国の一件が片付いたら透明の国に行こう!俺はあそこに行かなくちゃなならない。あのターコイズが作り上げたあの国を、俺はこの目で見なくてはならない。あいつの残した意思を、見届けるんだ!そしてあのシャルトルーズにも再び会おう!あいつがいったい何者なのか、確かめなくては!」
「うん!ライト、ありがとう!この戦い絶対負けられないね!絶対に行こう!コバルト!よろしくね!」
「ああ、クリーム、ライト、こちらこそよろしく頼むよ!俺もまたあの少年に会ってみたい!」
二人と一匹はそう決意を固めると、この黄色い国での戦いが終わったら透明の国に向かうことを決意した。それもあってかこの戦いは絶対に負けられない、そしてクリームはそのターコイズという魔族が立ち上げた透明の国のことも、そこから来たあの少年が何者なのかも絶対に知りたいと、心からそう思っていた。




