105話 黄色い足跡
一方こちらはコバルト達
三人と一匹は食事を終えると店を出た。ライトはビールを3杯も飲んで酔っ払ってフラフラになっていたのでコバルトが抱えていた。
「はゃ〜、飲みすぎたにゃ。なんだか気分いいにゃ〜」
「全くもう、ライト、お前いい加減にしろよな!」
シャルトルーズがその様子を見てクスリと笑った。そして次にこう言った。
「三人とも一緒にご飯食べれて楽しかったよ。これから街を回るんでしょ?観光か何かかな?訳あって僕は一緒には回れないからまたね」
シャルトルーズはそういうと店の中に戻って行った。そしてサルファーの前に行きこう言った。
「マスター、ありがとうございました。今日はちょっと用があって」
「ああ、シャルトルーズ、いつもありがとうな。ほら、今日の分だ」
サルファーはシャルトルーズに何やら封筒のようなものを渡した。どうやら日当で働いているようで手当てみたいだ。
「ありがとう」
「ああ、気をつけて帰れよ」
シャルトルーズが店を出るとくるりと振り向いて店を見渡した。そしてサルファーをじっと眺めてにっこりと笑うとこう言った。
「そうだ、さようなら」
ペコリとお辞儀をするシャルトルーズ。サルファーは「ん?」と思ったが特になにも考えず見送った。
シャルトルーズが再び二人と一匹の前に姿を現す。そしてコバルトに近づき、ライトの頭を撫でた。ライトは頭を撫でられるととても気持ちよさそうにしていた。
「バイバイ、またね」
シャルトルーズはそう言ってその場を離れようとした。クリームは慌てて彼の腕を掴み引き留めた。
「待って!お願い!教えて!あなたは誰なの?あなた、私たちのこと、この世界のこと、何か知っているの?」
クリームがすごい剣幕でシャルトルーズに問いただす。彼女はこの世界について自分自身についてなにも知らなかった。だけど何故か彼から何か不思議なものを感じ取った。この少年は何かきっと知っているのだろう。
「んー、そうだな、僕が知ってることなら教えてあげてもいいけど、けどただってわけにはね」
「お願い!教えて!私にできることならなんでもするから!」
「え?本当!?それは嬉しいなー、じゃあさ、お姉ちゃんすっごく可愛いから僕の彼女になってくれるならいいよー」
シャルトルーズの突然の大胆な発言に不意をつかれたクリームは顔が赤くなった。え?な、なにそれいきなり!
「な、ちょ、ちょっと!お前なに言ってんだよ!い、いきなりそんなこと言ったってそんなの承知するはずないだろ!」
「んー?なんでそっちのお兄ちゃんが口挟むのさ、僕は今このおねーちゃんに聞いてるのに」
シャルトルーズはそういうと猫みたいにゴロゴロっとクリームに近寄って頬擦りをした。その様子は照れながらでも甘えながらでもなく、なんの悪びれる様子もなく自然体な感じでそうしているのだ。ハンタがコバルトにすり寄った時とは随分感じが違う。
「ちょっと!お前なにしてんだよ!」
コバルトが間に入ってクリームからシャルトルーズを引き剥がす。シャルトルーズはキョトンとしたのちにコバルトの顔を見てクスリと笑った。
コバルトは気が動転していて自分でもなにをしたのかよくわかっていなかった。とりあえずとっさに体が反応してそうなったようだ。
そしてクリームその様子を見てポーッとしていた。え?え?コバルト、私にやきもち焼いてくれてるの?嬉しい嬉しい♡
「ふーん、そのおねーちゃんはおにーちゃんのものなんだね。残念。かわいいから彼女にしたかったのにぃ」
「ちょ、いや別にそんなこと!」
「あー違うの?ま、いいや。とりあえず彼女になってくれないならなにも教えないからいいもーん」
そういうとシャルトルーズはプイッと後ろを向いてそのまま走って行ってしまった。ポーッとしていたクリームはハッと我に帰り、彼を追いかけた。
「ちょっと!待って!」
とある建物を曲がって走っていったシャルトルーズ。クリームは後を追いかけ建物を曲がった途端に彼を見失ってしまった。
(え?どこに行ったの?)
クリームはあたりを見回して彼を探す。しかしどこにも見当たらない。魔力も感じなかった。
「そんなに僕から何か聞きたい?」
クリームは後ろから声がしたので振り向くと、そこにはシャルトルーズの姿があった。え?いつからそこにいたの?やっぱりこの子何か普通の魔族とは違う!クリームはそれを確信した。
「はい!どうか、どうかお願いします!私、あなたに聞きたいことがあるの!」
「うーんじゃあさ、ここで話すのもなんだから場所を変えよう。とりあえずお姉ちゃんたちはこの国に用があって来たんだよね?その用件を終わらせた後でいいかな?この国で話すのもなんだし、『透明の国』で僕は待ってるからね。その時話そう」
「え?透明の国?それは一体?」
「ま、今言えることはそれくらいかな。じゃあまたね。きっと来てね、待ってるからね」
シャルトルーズがそういうとあたりにドゥーっとすごい風が吹いた。そして黄色い国の黄砂が舞い、クリームはとっさに顔を手で覆った。そして黄砂が収まると、もうそこにシャルトルーズの姿はなかった。あの一瞬の間に彼はここから消えてしまったようだ。
一人残されたクリームはそこに茫然と立ち尽くしてた。透明の国?それは一体どこなのか
?聞いたことのない国だ。そこで彼が待っているというのか?
そしてクリームは彼の発言を聞き逃さなかった。この国に用があって来ている?ということはこの国の住人でないということを彼には見破られていたというのか?本当にあの少年は一体誰だったのか?クリームは彼がいなくなった後も気になって仕方がなかった。




