104話 黄色い声
「まあいい。アプリコット、報告ご苦労だった。これにより奴らはいずれここまでたどり着くだろう」
クロムは報告内容の腑に落ちない部分はあったが、とりあえずコバルト達が自国に来たということを受け入れる姿勢をとった。やはり何かしら動きはあっただろう。
「クロム様〜♡」
レモンが王座に座っているクロムのもとに向かい、横から抱きつく。クロムはレモンのその行為に対して非常に鬱陶しそうな顔をしてそのまま右ストレートを思いっきりレモンの頬に喰らわす。
バコオォオン!レモンはクロムからパンチを喰らうと口と鼻から血を吐いて吹き飛んだ。そして床に横たわるとものすごく幸せそうな表情を浮かべながらこう言った。
「えへへへへ。これで9回目のクロム様からのお仕置きね。あぁークロム様のパンチなんていいのかしら♡」
ゴールドはその様子を見てため息をついた。あぁー、こいつも何を言ってもダメだし、暴力が罰にならない。もうどうしようもない。
「クロム様、ダメです。もはやこいつには打擲は罰になりません。むしろ喜ぶだけです」
「そんなこと言ったって殴るしかねえだろ!ああ、鬱陶しい!口で言ってもわからないやつには手を出すしかねえだろ!」
クロムがイライラしながらそう怒鳴りつける。そうするとレモンが立ち上がって、ぶりっこのような仕草でクロムに問いかける。
「えぇ〜クロム様ぁ!あたしのこと嫌いですかぁ?あたしは誰よりもクロム様をお慕い申し上げておりますのに♡」
「レモン、前にも言っただろう!俺は女に興味はない!わかったらもうひっついてくるな!」
クロムはレモンに強い口調でそう言った。何度言っても分からずくっついてくるこの女が鬱陶しくてたまらないのだが何も言わないわけにもいかない。
そのやり取りを見ていて怪訝な表情を浮かべている魔族がいた。アプリコットだ。自身が恋愛についてそれなりに熟知しているし、同じ男の気持ちがわかるはずなのに、どうしてもクロムの様子がわからなかった。
(クロム様はなぜここまでレモンを拒むのだろうか?レモンは悪魔族の中でもかなりの美しさを誇り、上級魔族であるのに。同じ男としてこのレベルの女子に迫られたら嬉しいのが普通だと思うのだが)
そう思ったアプリコットは恐る恐る、思い切ってクロムに問いかけた。
「クロム様、一つお聞きしたいことがあるのですが」
「ん?なんだアプリコット?」
「クロム様は殿方であられるのに、女性に興味がないということは、男性に興味がおありなのですか?貴方様のご年齢で、色情がないということもありえないと思うのですが、私は同じ男として理解しかねまして」
アプリコットのぶっ飛んだ質問にクロムは顔が真っ赤になった。そしてその隣でゴールドがものすごいため息をついて下を向いていた。
「あ!理解致しました!私は見たことがないのですが、青魔族頭首コバルトは相当の美少年だとレモンから聞いておりましたので、だからクロム様はあのコバルトにお会いするのを楽しみにされているのですね!お側にお支えさせていただいている身でおりながら察することができず申し訳ありません!男同士とは盲点でした!クロム様の恋が実るよう心よりお祈り申し上げます!」
次の瞬間、クロムは王座から一瞬で移動し、跪いているアプリコットを蹴り飛ばした。アプリコットはそこから吹っ飛び壁に叩きつけれた。
「アプリコットォォォ!貴様!」
クロムが顔を真っ赤にして、息を切らし、ものすごい剣幕でそこに佇んでいた。アプリコットは蹴り飛ばされた先でなぜ蹴られたのか理解が出来ず、不思議な顔をしていた。ゴールドはものすごいため息をついて、いたがレモンがその様子を見てものすごい興奮しだした。
(ク、クロム様があのコバルトと!?え?え?そ、それってそれって!)
ブシューという大きな音と共に大量の鼻血がレモンの鼻から吹き出す。あまりにも興奮しすぎてクロムに殴られた時に出血した量よりはるかに多い量の鼻血が出た。レモンはど変態だった上に腐女子だったのだ。
ものすごく満足そうな顔をて鼻血とよだれを垂れ流しながら、レモンはそこに寝転んで両手で頬を押さえていた。もはや桃源郷にレモンは行ってしまったようだ。
『はぁはぁ!コバルト、愛しているぞ!どうだ俺のは?』
『あぁー!クロム!俺も愛してる!おっきくて気持ちいいぜ!』
(こんな具合にクロム様が攻めでコバルトが受けね!体位はやっぱり対面座位がいいわ♡あんなワイルドでカッコいいクロム様に掘られる、あんな可愛いコバルト、たまんないわ!)
一人で倒れ込んで妄想にふけるレモン、クロムの言動を理解し、称賛の言葉を送ったはずなのにキレられ蹴飛ばされたのが理解できないアプリコット、その二人の様子を見てゴールドは気が滅入ってしまった。
(なぜ黄魔族にはこう、まともな幹部がいないのだ。レモンはど変態だし、アプリコット様は天然というか世間知らずというかズレているというか。まともな仲間が欲しいものだ)
その後、クロムはものすごい剣幕で部屋から三人を追い出した。ゴールドが何回か扉を叩き、声をかけたが応答がなかった。まあそれはそうか、あんなこと言われればこうなって無理もない。
そしてレモンは部屋を追い出されても相変わらず地べたに倒れ込んで鼻血を出しながら桃源郷にいた。アプリコットは部屋を追い出されてもなぜクロムが怒っているのか理解できずずっとクエッションマークが頭に浮かんでいた。そしてゴールドはもうこんな奴らと一緒に行動するの嫌だと心から思っていたのだった。




