103話 黄色い報告
三人と一匹は料理が決まると、それを頼んだ。ほとんどがシャルトルーズのおすすめの料理で、シーフードや洋食が多かった。
「おおお、うまそうだにゃ!どれどれ!」
ライトはフォークとナイフを使い、丁寧に行儀良く切って食べてゆく。シャルトルーズはライトの食べっぷりに思わずほっこりした。なんだか食欲旺盛な猫だなあと。
「あーマスター!あとすまん!ビールくれにゃ!」
「おいライト、お前さっき酔っ払ってたばっかりなのにまた酒飲むのか?」
「もちろん!ここはカフェアンドバーだろう?昼間っから酒飲むのもありだにゃ!んでせっかく黄色い国に来たんだから名産品の黄色いビール飲むんだにゃ」
ライトは運ばれてきたビールを飲むと酔っ払って陽気になった。そしてシャルトルーズやコバルトと嬉しそうに食事を続けた。
(まあ、今はこんな感じで楽しそうだからいっか。せっかくこの国に来たんだし、それに何か彼といると絶対的に安心できそうな雰囲気だし、まあ今は楽しめばいっか)
クリームはそうかんがえながらとりあえずみんなと食事を楽しんだ。シャルトルーズのとても陽気で楽しそうな雰囲気にすっかり馴染んでしまい、とりあえずその場はあれこれ考えるのをやめた。
そしてその一部始終をカウンターの中からサルファーがじっと眺めていた。シャルトルーズ、どこであの三人と出会った?そして何故ここまで連れてくることができた?
「シャルトルーズ、すまない、私は少し席を外す。何かあれば裏にいるからいつでも呼んでくれ」
「ああ、はい、マスター!」
シャルトルーズにそう伝えると、サルファーは裏口から出ていった。そして空をじっと見つめていると空からバサバサバサと、一羽の黄色い鳩が降りてきて腕に止まった。
「カナリー、ご苦労だった。繋いでくれ」
「はい、サルファー様」
カナリーという黄色い鳩の目がキラリと光る。そして何やらザザーと音がすると、その鳩に向かってサルファーは話しかけた。
「こちらサルファー、アプリコット様、報告いたします。仰せの通り、青魔族たちは変装をしていますが、黄色い国にやってきた模様です。人間の姿をしている鳥族と、悪魔族の少女、そして猫に三人組です。ただいま私の店に滞在しております」
サルファーがそういうと、カナリーの体を通して今度はアプリコットから声が届いた。どうやら伝書鳩ならぬ通信鳩のようで無線機のような役割を果たせるようだ。
「よくやった、サルファー。それにしてもまさかこんなにも早く見つけるとは、一体なにかやったのか?」
「いえ、私の店で働いている者がどうやらたまたま接触したようです。そして何故か私の店に連れてきました。彼には何も教えていなかったのですが、運がいいというか引きが強いようです」
「何!?こんなにも早く接触し、そして店に連れてくることができたというのか
?その者の名は?」
「はい、シャルトルーズという戦士ではない悪魔族の子供です」
(シャルトルーズ……??)
アプリコットはその名を聞いて首を傾げた。聞いたことのない名だ。そして悪魔族で戦士ではないだと!?そして子供だと!?そんな何も特徴がないような魔族がこんなにも早く接触し、店まで誘導したというのか?
「わかった。報告ご苦労だった。とりあえず泳がせて様子を見ておけ。間違っても戦いを挑んだり捕らえようとしたりするな。お前らの敵う相手ではない」
「は、かしこまりました。アプリコット様」
アプリコットは通信を切ると、サルファーの報告の中にあったその子供のことが気がかりで仕方がなかった。シャルトルーズ?聞いたことがない。そして何故そんな聞いたこともない魔族がいの一番に接触できたというのか?これは偶然にしてもどうも不自然だった。
「念のため、クロム様に報告しておくか」
アプリコットは王宮の外から中に入り、王の間に向かった。
「失礼いたします、クロム様」
「入れ」
クロムが中からそういうとアプリコットは王の間に入った。そして王座に座っているクロムの前に跪くと、こう言った。
「クロム様、ご報告いたします、青魔族たちはただいまオーストの町に到着した模様です。そしてサルファーの店に誘導することに成功した模様です」
「何?もう接触したというのか?あの戦いから数日しか経っていないというのに。そしてサルファーの店までたどり着いたというのか?あいつが誘導したのか?」
「いえ、どうやらシャルトルーズという戦士でない子供が誘導に成功したようです。悪魔族だと言っていましたが」
「シャルトルーズ?聞かぬ名だな。一体何者なのだそいつは?サルファーの部下か?」
「いえ、サルファーの店で働いている子供のようなのですが、私も全く聞いたことのない名でして」
アプリコットからの報告に対し、クロムも首を傾げた。全く聞いたことのない魔族が誰よりも早く接触し、誘導したというのか?偶然にしてはできすぎている。一体どういうことだろうと。
「失礼いたします、クロム様」
ちょうどその時、王の間の扉の奥から声がした。クロムはこれはちょうどいいと思い、声の主を部屋に通した。そしてそれは緑の国で戦ったレモンとゴールドだった。
「レモン、ゴールド、ちょうどいいところに来た。今アプリコットから報告を受けたところなのだが、シャルトルーズという名の子供を知っているか?悪魔族のようなのだが」
クロムは間髪入れずに二人に問いかける。しかしその質問に対し、レモンもゴールドも全く聞いたことのない名だったので、答えようがなかった。
「いえ、聞いたことのない名です」
「クロム様、私も知りません。その者がどうかなされたのですか?」
レモンの問いかけに、アプリコットが一部始終を話した。二人はその話を理解したが、やはり知らないものは知らなかった。
(この国の上級魔族である、この三人ですら知らないとは。一体何者なのだ?そいつは)
クロムはアプリコットの報告によって、コバルトたちが来たことよりも、その得体のしれないシャルトルーズの存在が気になって仕方なかった。黄魔族で誰よりも早く敵に接触し、店に誘導した。そしてその存在を誰も知らないという奇妙な状況。黄色い国で起こった出来事でこんなことは初めてだった。




