102話 黄色い髪と瞳を持つ少年
「とりあえず返すね、はい」
「ああ、ありがとう」
クリームはその少年からライトを受け取ると何やら得体のしれない雰囲気を感じ取った。しかしそれは敵である危険信号などではなく、何故か安堵のような懐かしい感じだった。
「ライト・・・」
クリームはライトを見ると、もはや完全に出来上がっている姿がそこにあった。ライト、敵地だというのにこの有様。こんなことは絶対にあり得なかった。
「あなた・・・誰?」
クリームは恐る恐るその少年に問いかける。一体この少年は何者なのか?見た目は完全に黄魔族で悪魔族であろうが魔力はまるで感じない。おそらく戦士ではないだろう。
「申し遅れました。僕はシャルトルーズ・イエロー・デーモンと申します。お姉ちゃんたち、見ない顔だね。違う街から来たんでしょ?」
「ああ、はい。私、クリーム・イエロー・デーモン。この子はライト・イエロー・キャット。よろしくね」
「俺はコバルト・イエロー・ルシファーだ。シャルトルーズ、よろしくな。実はまだこの街に来たばかりで何も知らないんだけど、よかったら教えてくれるか?」
コバルトが後ろから声をかける。彼もまた、この少年の不思議な感覚に何か惹かれるものがあった。戦士でないはずなのに、一体どういうことだろうと。
「うん!いいよ!じゃあさ、せっかくだしうちのお店にご飯食べにくる!?ここから近いからさ!」
シャルトルーズはそう言って二人をそこから連れ出す。二人はちょうど昼食を食べようと思っていたので、ありがたかった。それに敵国とはいえ、このシャルトルーズは何かを隠しているようだったが、悪いやつではなさそうだとコバルトは思った。
しかしクリームはどうしてもこの少年の正体を暴きたくて仕方なかった。いったいこの感覚は何?この少年は転生者ではない。自分と同じく異世界のものでもない。それは感覚でわかる。しかしただの黄魔族かと言われればそうではないとそれも同時にわかるのだった。
「ついたー!ここだよ!」
シャルトルーズに二人と一匹が連れられて、お店へ向かい、そこについた。そのお店は大通りに面していて、表に黄土色の看板に金色の文字で「amarillo」と書いてあった。中にはカウンター席と、円形のテーブルがいくつか並んでおり、外にはテラスもあり、こじんまりとしていたが、お洒落なカフェだった。
「ああ、お帰りシャルトルーズ。ん?見ない顔だね。その人たちは友達かい?」
「ただいま!マスター!うん、さっきそこで知り合ったんだけど、お昼まだっていうから、折角だからうちの店で食べて行きなよって、連れて来たんだ!」
「ああ、そうだったんだね、いらっしゃいませ。どうぞお好きなお席へお座りください」
蝶ネクタイを結び、タキシード姿のおしゃれな格好をした、黄色い猫が、カウンターの中にあるワイングラスをナプキンでキュッキュと音をさせて拭きながらそう言った。そして二人と一匹が円形のテーブル席に座ると、その猫は水を入ったグラスを持ってきた。
「いらっしゃいませ、私、ここのマスターのサルファー・イエロー・キャットと申します。どうぞサルファーとお呼びくださいませ」
「はい、御丁寧にどうも。私はクリームといいます。こちらはコバルト。そして今ここで眠っているのがライトといいます、よろしくお願いします」
「これはこれは御丁寧にどうも、ごゆっくりなさってくださいませ」
サルファーは丁寧にペコリと頭を下げて挨拶すると、カウンターの中に戻っていった。お店には何人か他に客がいて皆酒を飲んでガヤガヤとしていた。それなりに賑わって繁盛しているようだ。
クリームはライトに水をあたえると、ライトはハッと我に帰って目を覚ました。そしてあたりを見回すと、そこにはクリームとコバルト、そしてシャルトルーズが席に座ってこちらを見ていた。
「ライト、目が覚めた?」
「ク、クリーム!コバルト!こ、ここはどこだ?えーっと、俺は今まで何をしていた!?」
ライトはようやく目を覚まして現状を把握するが、どうやら完全に今の状況を理解できておらず、今までの記憶もなかったようだ。
(ライト、やっぱり何も覚えてないのね。こんなこと初めて)
クリームがライトを膝下で抱えてそう思っていると、シャルトルーズがものすごい満面の笑みでライトに話しかける。
「目が覚めた?はじめまして!僕はシャルトルーズ!さっき久しぶりにそのままの猫の姿した君を見てちょっとからかいたくなっちゃってさ、マタタビあげたら寝込んじゃって。ごめんごめん、今まですっと寝てたんだよ」
「ああ、そ、そうなのか?ああ、はじめまして、私はライト・イエロー・キャットと申します、えと、それでこのお店は?」
「あはは、かわいいね!ここは僕が働いてるお店だよー。ま、せっかく来たんだからゆっくりしていってよ!」
シャルトルーズの天真爛漫で楽しそうな様子を見て、ライトとコバルトは敵地とはいえど、こうやって親切で明るい少年もいるのだなとほっこりした気持ちになった。ああ、彼は完全に敵ではない。戦士でもなさそうだし、こうやって子供ながら誰に対しても優しく親切な少年なのだろうとただそう思い、安心していた。
しかしクリームだけは、このシャルトルーズから感じる、何か得体のしれない感覚を未だに拭いきれずにいた。彼は敵ではない、悪いやつでもない。それはわかる。ただ何故ライトがここまで全く警戒もせず、そして記憶をなくしてまで安心できるほど手名付けられたのか、そして彼から感じ取るこの不思議な感覚はなんなのか、それを突き止めたくてたまらなかった。




