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大変なことが終わった後って結構はっちゃけるよね、って話。

気持ちの良い風が俺を包む。



「……やった……んだよ、な?」



浄化が出来たというのは漠然と分かる。あの気持ち悪い感覚がない。だけど俺が核を浄化したのは初めてだ。


し、したよな?第二ラウンドとかないよな?


前に立つデュラへと縋るような気持ちで確認しようとした時だった。



「クー様っ」


「でゅ、ふぶぅ!?」



デュラが勢い良く振り返って距離をつめたと思ったらそのまま俺を抱き締めた。

うん、つまり今現在俺はデュラたんに抱き締められています。……えぇぇぇ!?!?



「でゅ、でゅらさん!?」


「クー様っ!クー様!!やりました!核を!核を浄化したんですよ!!」



ぎゅうぎゅうと俺を強く抱き締めるデュラに戸惑いながらも、その言葉に、嬉しそうな声にジワジワとやっと実感がわいた。



「は、……ははは!わはははは!!やった!!やったんだぁぁぁぁ!!」



デュラに抱き付かれる瞬間反射で上げていた両手をそのままデュラの背中にまわす。俺も力の限りその小さな身体を抱き締めた。



ーードォォン!?ドォォン!?



「ぅお!?な、何だ!?」



が、突如デュラの張っていた結界に響く音と振動にビビる。

な、何だ!?魔物が来たのか!?と音がした方、俺の前を見て絶句した。

エイトさんがすんごい形相で結界を叩いています。



…………何やってんのぉぉぉ!?!?



「えい……、や、デュラ!デュラさん!助けて!!」


「……うにゅっ!?……っうわぁぁ!?!?」


「えぇぇぇ!?」



思わずデュラの頭へと手をまわして抱き寄せてしまう。と同時にすごい勢いで腕を弾かれたが。ショック。俺が抱き寄せてた事実があったのか分からん程の速い流れ作業でショック!



「……あ、ああ、あの、あの、あ、す、すいませんんんん!?」


「いや俺泣いても、や、ちょ、何でこの状況で結界解いちゃうのぉぉぉ!?」



ぎゃく、逆だよ!?仲間だけどあれで突っ込まれたら俺ヤバイよ!?腕と脚まだドラゴンさん状態だからね!?それで駆け足で来ちゃってるからね!?止めろよアルフぅぅぅ!!


ちなみにそのアルフさんはエイトがいた場所の隣でただただこっちをじっと見ています。おいぃぃ!?お前もどうしたぁぁ!?


まだデュラに抱き付いていた状態ならどうにかしてくれるかもと思った。でもデュラはシュバっ!?と音がしそうな勢いで俺の腕を弾き横へとずれてしまっている。弾かれたことに涙が溢れそうだが目の前に迫るそれに俺の脳は今までにないくらいにフル稼働した。

どうすればあれに殺されないですむのかを。それはもう、必死に。うん、本当に必死に考えた。


そしてある言霊を発したのである。



「おすわりぃぃぃ!?!?」



ーードグシャ!?



俺の前には闇の結界が張られている。というのもあの勢いのまま俺の言葉に反応したエイトは正しくその通りに行動した。具体的には腕を、脚を地面へと叩きつけスピードを殺しそのままお座りしたのである。俺への砂埃諸々を弾くという配慮結界を張った上に俺から30センチ前で。一瞬その優しさあんならドラゴン化状態解除してから来いやと思った。それでも無事じゃなさそうだけどな!


うん、まぁそれは置いときたくないけど置いといて、結界を消した後キラキラした目でエイトは俺を見上げてきた。次は?とその瞳が語っている。


あ、ヤバイ。と思った。これ前振りだと思われている、と。

犬のわんこ座りというより蛙の真似をしているような体勢ドラゴン。しかも手と足が少しどころかしっかり地面に埋まってるっていうか突き刺しているシュールなエイトを前に俺はもう一度頭をフル回転させなければならなくなった。

だがそう何回も案が出るはずがない。


うーん……。まぁ撫でたら喜んではくれそう……だよな?


一瞬よーしよし!と近所の犬にやってた光景が思い浮かんでしまう。まぁ今までの感じでエイトは喜んでくれそうだけど……今やるのは違う気がするし。


じっとエイトを見る。エイトも俺を見つめ返す。綺麗な漆黒の瞳。その中に、一瞬ドラゴンが映った気がした。



「あ、そっか……」


「クー?」



座っているエイトの前に俺も座る。地面の上に座ったことに驚いたのかデュラが慌ててマントを外そうとするが手で制した。

エイトは不思議そうに俺を見てる。思わず笑って、そして手を差し出した。



「クー?」


「手」


「ん」



反射のように土に埋めていた片手を引き抜いて俺の手に乗せる。ぼこっと土から出てきたことに引いたが乗せられた手に微笑んでしまった。



「ドラゴンの鱗ってこんな感じなんだなぁ」


「っ!?」



もう片方の手で撫でる。固いけど思ったよりも温かい。



「もっとひんやりしてんのかと思った」



へらりと笑った。

上から下へ、下から上へと撫でる。土も落ちたなと何度か撫でた後にエイトを見たら……。



「……っ」


「え?」



もう片方の手で顔を抑えてた。



「ちょ、おま、そっち土落としてねぇよ!」



いつの間に引き抜いたんだよ!?ええと何か拭くもの……あ、ハンカチ!?

とエイトの手を離してハンカチを仕舞っているポケットへ手をのばす。しかしその手は違う手に阻まれた。



「それは僕に使ってくれる約束だよね」



アルフだ。こちらもいつの間に距離を詰めたんだ。つか怖いよ。どうしたんだよ。



「え、や、そ……えっと……」



戸惑うが今それどころじゃなくね?とも思う。

エイト君のお顔土がついてるじゃん。だからほら、今こそハンカチっていうか。あ、そうか。少しだけどアルフの汗拭いたので拭ってやるなとそういうことか!!



「悪ぃ」



ポケットから離れる手に安心したのか離れるアルフの手。俺はそのままその手をエイトの顔へ、つまりは服の袖でエイトの顔を拭いた。



「クー様!?」


「レオンには悪いけど洗ってもらうし」



デュラが何か焦ってるけどレオンは別に怒りはしないと思う。俺が訓練でドロドロに汚しても頑張って訓練したんですねってむしろ嬉しそうに洗ってくれたし。うん、いい子。



「あ、アルフも守ってくれてありがとうな」



そうそう、約束も守らなくちゃなと再度ポケットに手をのばそうとして気づく。


俺の手も土だらけじゃん!?


エイトの手を乗せていたし土を払ったので当然両手が汚れていた。これじゃ汗を拭ってやる前にハンカチが汚れる。アルフもそれを言いたかったのかと気付きションボリしてしまった。



「ごめんな、アル……のぁぁぁ!?!?」



体が揺れたと思ったら視線がいきなり高くなる。……え!?俺アルフに抱き上げられてる!?



「ちょ、何だよ!?あ!?魔物か!?」



咄嗟にアルフの首へと腕をまわし辺りを確認する。飛ぶのか!?走るのか!?と警戒する俺にアルフがため息をついた。おい、お前がいきなり行動したんだろうが!



「クー」


「あ、はい」



しかし低い声に心の声は出せない。そんな俺に気付いてるのか何なのかアルフは覗き込むかのように視線を間近で合わせてきた。え、何!?



「僕も……ううん……クーはもう少し自分の影響力を考えて」


「…………え?」



それはあれですか。異世界の神子様としてもっとこう尊いって思ってもらえるような言葉とか行動をってことか。



「……ど、」


「ど?」


「努力します」



何とかそれだけ返したらすげぇ目を見開かれた。綺麗な緋色の目ですねー。イケメンコノヤロー。



「てか魔物じゃねぇなら降ろせよ。早くギル達の所に帰ろうぜ」



ふん!イケメンだからってふて腐れたんじゃねぇからな!報告だ報告!報告は大切です!



「……そうだね。戻ろうか。……エイト、いつまで足を地面に埋めてるのかな。……またクーに拭いてもらうの?」



ズボッと音がして瞬時にエイトが足を地面から引き抜く。首を左右にすげぇ降ってるけど大丈夫か!?っていうか俺の降ろせって言葉は無視か!?



「はやく、戻らないとね」


「……なぁ、それ速度的な意味じゃないよな!?な!?」



ーーーーー


「魔物達の動きが悪くなったからまさかとは思ったがまさかこんな短時間で核を浄化するとはな!さすがはウサ様だ!……と皆が讃えてるんだが……何だ、そのなりは……」


「……う、るせ……ぅぇぇ……」



ギル達の所に戻って来た俺は現在テント内にて簡易ベッドに寝かされています。あのあと本当に速い移動で着きました。馬より遅いけど速い!時々木に飛んだり下りたりしたしな!何なんだよ!俺頑張ったのにこの仕打ちかよ!


もちろん分かってる。魔物に会う前に俺をなるべく安全な場所まで移動させたかったのは!でも!それでも!?もうちょっと何かあっただろと思うのは俺の心が狭いのか!?



「……アルフ王子」


「……うん」


「……ほぉ。それはそれは災難で」



ギルがアルフから俺へと視線を移す。というかすげぇ同情した目で俺を見下ろしてる。悪かったな想像以上に貧弱で!!



「これもこれで魅力だが。……気を付けろよ、クー」



え、同情した目で見られた上にこれ以上気を付けるって何を?と思った俺に気付いたのかギルが耳元へと顔を寄せてくる。何?内緒話か?


つか、え?今クーって言っ……



「まだまだ小さなもんだが……。こいつらが自覚して吹っ切ったら……やべぇぞ」


「……ひぁっ!?」



ギルは良い声で囁いた後ペロリと俺の、耳を、……舐めた。



「ぎゃああああ!?!?!?」



その衝撃が強すぎて俺はギルが耳元で囁いた言葉を、綺麗サッパリ忘れたのである。

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