第9話 ちょっと話を遡り、転生した頃の話しだ(7)
そんな少女が襲われている現場に、喧嘩っ早く正義感に溢れた転生後の徳川家康が通りかかるなんて、運命の悪戯以外の何物でもなかった。
あの時の俺は、後に神様や女神様が日本で流行の異世界転生を授けてくれるとは夢にも思わなかった。
それでも俺は、黒髪の美少女を守る騎士として、悪党が身体を起こそうとした瞬間──
「はぁっ!」と気合を込めた回し蹴りをその顔面に叩き込み、闇夜に響く音と共に、馬鹿はあっさり吹き飛んだ。
俺は躊躇わず、再び奴に詰め寄った。
街灯もない闇の底、冷たい空気が肌を刺す中、俺は荒れ狂う獣のように吠えた。
暗闇に沈むその場は、まるで死の匂いが染みついたかのように重く、殺伐としていた。
ヒロインが凌辱されそうになっているのを目の当たりにし、俺の中の中学生時代のヤンキー魂が燃え上がった。
「クソがぁあああああっ!」
もうどうにでもなれ、そんな狂気の叫びと共に、俺は怪獣フリチンマンの顔面を狙い、利き足の甲で蹴りを叩き込んだ。
まるでサッカーボールを蹴るように、冷酷に、容赦なく。
奴は後ろへ倒れ込み、地面に顔を覆い隠しながら丸まったが、俺の怒りは収まらなかった。
「てめえ、許さねえ!」
あの時の俺はそのまま変態野郎の顔と腹を蹴り続けた。
俺は奴の肝臓を狙い、必要以上に何度も蹴りつける。
俺の血は荒々しく、純粋な日本男児の誇りを宿している。
俺は瀬戸内海の水軍の末裔であり、徳川家康公の源氏の血も流れている。
だが、織田信長の平家の血も混じっているためか、俺の中の狂気は深まるばかりだった。
幼い頃から喧嘩に明け暮れ、気性は荒く、手がつけられなかった。
だからこそ、俺は止まれなかった。殴る蹴るの快感に溺れ、暴力の渦に飲み込まれていった。
「うりゃああああああっ!」
「わりゃああああああっ!」
俺は唸り、吠え、まるで獣のように暴れ狂った。
「てめえ、許さねぇぞ! ぶっ飛ばすからな、覚悟しろ!」
夜の路地裏は、冷たい風が骨の髄まで染み渡るように吹き抜けていた。
街灯の薄明かりがぼんやりと影を落とし、湿ったアスファルトは月明かりに鈍く光る。
まるで、この世界の闇が俺の怒りを映し出しているかのようだった。
(4話)




