第10話 ちょっと話を遡り、転生した頃の話しだ(8)
俺の蹴りは、容赦なく変態野郎の身体を打ち据えた。
闇は深く、冷たく、静寂が辺りを包み込む。前世の記憶が鮮明に蘇り、熱く燃え上がる血潮が全身を駆け巡る。
まるで、あの時の俺が今ここに降り立ったかのように。
静寂の中、変態の呻き声が獣の遠吠えのように闇夜に響き渡る。
「うっ……」
「あっ……」
「つぅ……」
「いつ……」
「ああ……」
「うぐっ……」
その声は不気味で哀れだが、俺の憎悪はさらに燃え上がる。
蹴りは奴の屈んだ身体を容赦なく叩きつける。
変態フリチンマンはエビのように痙攣し、オットセイのように呻いた。
俺の怒りは奴の身体に集中していた。
蹴るたびに憎悪が胸を焦がし、冷たい闇の中で奴の痛みが俺の血肉に染み込んでいくようだった。
俺は冷たく、荒々しく、歪んだ笑みを浮かべる。
やがて、変態フリチンマンは力尽き、地面に崩れ落ちた。
その瞬間、俺の視界に映ったのは、震えながら涙をこぼす黒髪の少女だった。
制服は可憐で、闇の中にぼんやりと浮かび上がっている。
顔は歪み、恐怖に震えていたが、どこか凛とした強さも感じさせた。
俺は彼女を見つめ、胸の奥で何かが熱く燃え上がるのを感じた。
恐怖と絶望の中でも、彼女はまだ逃げようとしない。
その弱さが俺の怒りをさらに掻き立てる。
蹴り続けた変態フリチンマンに最後の一撃を叩き込みながら、俺は荒々しく叫んだ。
「──今すぐここから逃げろ! どこでもいい、近くの家に飛び込んで助けを求めろ! そしてすぐに警察に電話しろ! 婦女暴行に遭ったと伝えろ! わかったな! お姉ちゃん、早く立て! 逃げるんだ! 今すぐに!」
俺の声は闇を切り裂き、少女の震える身体に重く響いた。
彼女は震えながら上半身を起こすが、その瞳は怯えと絶望で揺れていた。
だが、黒髪の美少女は足をすくませ、まるで逃げることを拒むかのように動けなかった。
俺が急かしても、その震えは止まらず、声は掠れ、ただ呟くだけだった。
「でも……」
異世界ファンタジーの定番のように、彼女は腰を上げられず、俺だけがこの地獄のような《《あの場》》から逃げることを強く願った。
焦燥と苛立ちに押し潰されそうになりながら、俺は必死に告げた。
「俺のことはどうでもいい! 君だけは今すぐ逃げろ! 家に飛び込んで電話をかけろ! 絶対に後ろを振り向くな! 早く、今すぐに!」
《《あの時》》の俺は、可憐なブレザー制服の黒髪美少女に向かって、己の命を顧みず、荒々しく命令を叩きつけた。
俺は彼女を守るために全力を尽くしていた。
暴漢魔──変態フリチンマンが迫る中、俺は叫び声を荒げ、拳と蹴りを叩き込んだ。
「うりゃぁああああっ!」
「わりゃぁああああっ!」
「なめてんじゃねぇ! こらぁあああっ!」
俺は威勢よく、荒々しく、声を闇に響かせ、彼女に逃げることを強く促した。
腕を振り上げ、必死に『早く逃げろ!』『今すぐ逃げろ!』とジェスチャーを交え、彼女に命令を叩きつけた。
だが、喧嘩の最中にそんな余裕はなかった。
長引く視線の逸れは命取りになる。
俺は黒髪の美少女を守るため、殺伐とした空気を背に、膝をつき、震え、怯える彼女の運命を賭けて戦いに挑んだ。
これはタイマン勝負──逃げも隠れも許されない。
俺は変態フリチンマンに強烈な蹴りを叩き込もうとしたが、彼女のことが頭をよぎり、攻撃は鈍くなり、勢いも破壊力も次第に失われていった。
「うぉ、おおおおおおおおおおおおっ!」
だから変態フリチンマンは、自分の身体に蹴りの痛みをあまり感じないことを悟った。
奴は変態、痴漢。どうしようもない男だが、黒髪の乙女は自分のものだと、暗闇の中で遠吠えのような叫びを上げ、復活の狼煙をあげた。
その瞬間、変態フリチンマンは俺の蹴りを掴み、両腕でしっかり抱え上げ、上半身を起こして俺を地面に押し倒した。
その時に両者の力関係は、確実に逆転したのだと感じた。
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