第7話 ちょっと話を遡り、転生した頃の話しだ(5)
あの時の俺は、自転車を止め、息を潜め、闇に包まれた周囲の音に敏感になっていた。些細な物音すら逃さぬよう集中し、自分の息遣いも最小限に抑え、女性が危険に晒されているのではないかと探索を続けていた。
しかし、あれからは女性の息遣いや呻き、悲鳴、助けを求める声は一切聞こえない。聞こえるのは遠くの国道や県道を走る車の排気音、マフラーの響き、そして救急車や消防車のサイレンばかりだ。
「火事か……本当に多いな」
俺も火の元には気をつけねばと心に誓ったが、やはり空耳だったのだろう。犯罪や事件がないのが何よりだと、苦笑いを浮かべる。
その時、かすかな呻き声が闇を切り裂いた。
「……人の呻き声?」
確かに聞こえた。俺は足を止め、辺りを見詰めながら耳を澄ませた。
《ガサッ》
《ガサガサ》
地面を蹴る音、何かが動いた。俺の全神経は耳に集中する。
《パチン!》
誰かが誰かを叩く音が闇に響いた。
「間違いない、誰かが乱暴されている!」
「ぎゃっ!」
《バチン!》
男性の悲鳴にも似た声が耳に届く。
「や、やめてください!お願いです!」
漆黒の闇の中、少女の声が俺の鼓膜を鋭く刺激した。場所も特定できた俺は、迷わず駆け出した。
後先考えず、戦国の英雄たちのように、俺は彼女を救うために走ったのだ。少女の悲痛な声が聞こえた方へと、俺は駆け足で向かう。
◇◇◇
「うりゃああああああああああああっ!」
《ドンッ!》
暗闇の中、俺は瞬時に状況を見極めた。
黒い服の男が制服姿の少女に馬乗りになり、彼女の叫び声が闇を切り裂く。
彼女はまだ幼く、恐怖に震えながら必死に助けを求めていた。
「助けてください!お願いです!」
その声が届く前に、俺は彼女のスカートを乱暴に捲り上げ、汚らわしい手で彼女を押さえつける変態の姿を見つけた。
男の手は冷たく、強引に何かを押し込もうとしている。俺の心臓は激しく鼓動し、怒りが全身を駆け巡った。
ためらうことなく、俺は一気に距離を詰め、全力で変態男の背中にラ○ダーキックを叩き込んだ。
強烈な蹴りが変態男の背中を打ち抜き、変態は闇の中へと吹き飛ばされた。
俺は痴漢、変態男による少女への性的暴力を断固として阻止し、彼女の尊厳を守り抜いた。
だが、俺の行動はここで終わらなかった。
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