第6話 ちょっと話を遡り、転生した頃の話しだ(4)
会社帰りの、あの夜の出来事だった。
いつもは歯車のように同じ道を往復するだけの俺が、その日はなぜか、す〇家の牛丼弁当を無性に欲し、普段とは違う裏通りを選んだ。
街灯もまばらなその道は、漆黒の闇に包まれ、まるで戦場の夜襲のような緊張感が漂っていた。
冷たい風が肌を刺し、遠くで猫の鳴き声が不気味に響く。
突然、耳を裂くような女性の悲鳴が闇を切り裂いた。
「きゃぁっ!」
俺は自転車を止め、辺りを見回す。
だが、闇に紛れて姿は見えない。
それでも、かすかな息遣いと震える声が、確かにそこにいることを告げていた。
恐怖と混乱が入り混じったその叫びは、俺の胸を締め付ける。
一度は気のせいだとペダルを踏み直すふりをしたが、理性はすぐに勝ち、俺は自転車を止めた。
この闇は、まるで戦国の夜戦の死角のようだ。悪党どもが蠢く場所……
あの悲鳴は、空耳などではない。女性が凌辱されている。
俺は、阿呆な正義感に駆られ、彼女を救おうと決意した。
この後に待つ災厄を知りながらも、俺は動かずにはいられなかった。
誰もいないアパートの灯りも、牛丼弁当も、好きなアニメも、すべてを捨てて……
冷たい夜風が肌を刺し、心臓の鼓動が耳元で響く。
視界はほとんどなく、手探りで進むしかない。
だって夜の路地裏は、まるで漆黒の絹幕が張り巡らされたかのように、月の光すらも遮り尽くしていた。
冷たい夜風が肌を撫で、遠くで虫の声がかすかに響く。
そんな闇の中、俺の五感は鋭く研ぎ澄まされ、微かな動きと息遣いを確かに捉えていた。
俺はただのアラサー男、だが胸に燃える正義の炎は誰にも負けない。
闇夜に紛れ、彼女を見つけ出す決意をさらに固める。
俺は足音を忍ばせ、周囲の気配に神経を研ぎ澄ませながら、一歩一歩、彼女のもとへと近づいていく。
いまだに俺は、耳を澄ませば、あの忌まわしい記憶が鮮明に蘇る。
「……人の声か?」
しかし、女性の声は聞こえない。気のせいか、あるいは俺の空耳かもしれないと、震える心を必死に押さえ込んだ。




