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第493話 甲斐の虎の影(1)
【信玄視点・戦国ファンタジー × 戦記 × 英雄の影】
甲斐・躑躅ヶ崎館……。
深夜の静寂を破るように、焚かれた香の煙がゆらりと揺れた。
武田晴信――後の武田信玄公は、文机に広げられた地図をじっと見つめていた。
その視線は、東海道の一点に吸い寄せられている。
「……三河の若木が、今川の庇護のもと育っているか」
晴信は、ゆっくりと扇を閉じた。
その仕草は静かだが、内に秘めた覇気は山のように重い。
「竹千代……いや、松平元康か……。いずれ名を改め、徳川家康と名乗る男よ」
晴信は、自分の姉……。今川義元公の正室……。氏真姫の母定恵院から得た情報で、未来を見通すような眼差しで呟いた。
「この若木、ただの人質では終わらぬ……。いずれは東海を支える大樹となるやもしれぬ」




