第407話 流石静岡、上手いな! (4)
生前よく見ていた、あの少女の背中──
リフティングが上手くて、いつも楽しそうにボールを蹴っていた。
名前は思い出せないけれど、確かに綺麗な子だった。
その記憶が蘇るたび、足は自然とリズムを刻む。
《ポン、ポン、ポン──》
「……あなた」
氏真がすぐ側で見ている。
「けっこう上手じゃない」
「そ、そうか……?」
「ええ、少なくとも……」
一歩近づく氏真。
「わらわの前で、そんなに格好つけるくらいにはね」
「か、格好なんてつけてねぇよ!」
「うそ、顔に出ているもの」
また氏真の距離が近い。
その瞬間──
《コロッ》
先ほどの木鞠がまた転がってくる
「ちょ、危な──」
氏真の足が取られ、身体が前に傾く。
「うわっ──!」
反射的に、俺は氏真を抱きとめる。
華奢な身体が俺の腕の中に収まる。
驚いた息が俺の胸元に触れる。
「……っ、あなた……」
「だ、大丈夫か……?」
「ええ……でも……」
氏真は俺の胸に手を置いたまま、ゆっくりと顔を上げる。
午後の光が彼女の瞳に映る。
「あなた、やっぱりずるいわ」
「な、何がだよ……」
「だって──」
ほんの少しだけ微笑む氏真。
「こんなふうに抱きとめられたら……。いつもよりも意識してしまうでしょう?」
俺の心臓は普通の恋愛でラブコメしているように大きく跳ねた──蹴鞠よりもずっと大きく。
そして気づく。
──生前の記憶の少女の背中と、今腕の中にいる氏真の姿が、どこか重なって見えた。




