第30話 第29話 悪役令嬢、寝所同居宣言。そして翌日は火縄銃訓練でまた修羅場
◆火縄銃訓練、開始直後から地獄
吉法師姫の号令で火縄銃訓練が始まった瞬間――草原は煙と火花と悲鳴で満ちた。
「火縄に火をつけて……こう構えるのよ?」
吉法師姫は優雅に構える。
その姿はまるで悪役令嬢が銃を持った絵画のようだ。
だが――
他の全員は地獄だった。
◆成政、泣きながら竹千代に抱きついて誤射未遂
「ひぃいいいいいいっ!! 火縄銃こわいですぅうううっ!! 竹千代君!!」
成政は泣きながら俺に抱きつき、火縄銃の銃口が俺の胸に向く。
「いや!! 銃口こっち向けるな!! 俺が死ぬ!!」
「竹千代君を守るために……。わたし撃ちますぅうううっ!!」
「守るために撃つな!!」
火縄の火が銃口に近づき――
《ボッ!》
火花が散り、煙が上がる。
「ぎゃああああああああああっ!!」
俺は煙まみれになった。
成政は泣きながら叫ぶ。
「竹千代君!! ごめんなさいぃいいいっ!! うち……うち……す……す……す……」
「す……?」
「す……す……す……き……」
「また言ったぁああああああっ!!」
成政は泣きながら地面に倒れた。
◆新介、竹千代を守りすぎて吉法師姫と衝突
新介は火縄銃を片手で構え、鬼武蔵と慶次を睨む。
「竹千代君に近づくな!! ぼくは本気で撃つぞ!!」
「撃つな!!」
俺が新介に叫ぶ。
吉法師姫が優雅に火縄銃を構えながら言う。
「新介……あんた、竹千代を守りすぎよ?」
「姫さまでも近づかせません!! 竹千代はぼくの専属の一番槍だ!!」
「……は?」
空気が凍った。
吉法師姫の眉がピクリと動く。
「新介……。あんた、アーシに逆らうの?」
「逆らう!! 竹千代はぼくが守る!!」
「……面白いわねぇ?」
吉法師姫の火縄銃の銃口が新介に向いた。
「ひぃいいいいいいっ!! 姫さま!? 怖い!!」
やはり土壇場になると新介も尾張の悪役令嬢さまが怖いから、両手を上げ──バンザイ! 白旗を振る!
だから俺が間に入り。
「吉姉さま、穏便に……。気が立つなら、俺のことを殴って……」
俺が新介を庇うから、テンプレ通りに、俺がいつも尾張の悪役令嬢さまにボコられる。
◆小平太、火縄銃を使った新しい《《遊び》》を発明
小平太は火縄銃を持って跳ね回る。
「竹千代くん!! これ、火が出るんだよ!! すごいね!!」
「遊びじゃない!! 銃は遊びじゃない!!」
小平太は火縄銃を地面に向けて撃った。
《ドンッ!》
地面が爆ぜ、土が舞い上がる。
小平太は満面の笑み。
「竹千代くん!! これ、地面が跳ねるよ!! 楽しいね!!」
「楽しくない!! 俺の命が軽い!!」
小平太はさらに新技を発明した。
「竹千代くん!! 火縄銃ジャンプしよ!!」
「しない!! 絶対しない!!」
◆鬼武蔵、嫉妬で火縄銃の反動を力で抑え込む
鬼武蔵は火縄銃を構え、顔を真っ赤にして叫ぶ。
「竹千代!! 昨日も今日も姫さまと寝たんだろ!! 嫉妬したんだぞ!! 反動を力で抑え込むんだぞ!!」
「抑え込むな!! 銃が壊れる!!」
鬼武蔵は火縄銃を撃った。
《ドンッツツツ!!》
反動で地面がえぐれた。
「ぎゃああああああああああっ!!」
俺はまた煙まみれになった。
鬼武蔵は真っ赤な顔で叫ぶ。
「竹千代!! 嫉妬で強くなったんだぞ!!」
「強くなるな!! 俺が死ぬ!!」
◆慶次、火縄銃を二丁持ちして暴走
慶次は火縄銃を二丁持ちし、豪快に笑った。
「竹千代!! これ、二丁持ちできるぞ!! 最高だな!!」
「最高じゃない!! 値段も高いし危険!! 危険だぁあああっ!!」
慶次は二丁同時に撃った。
《ドンッ!》
《ドンッ!》
地面が二箇所同時に爆ぜ、煙が草原を覆う。
「ぎゃああああああああああっ!!」
俺は煙の中で転げ回った。
慶次は笑う。
「竹千代!! 弟分よ!! 強くなれ!!」
「弟分にするな!!」
俺は天下御免の傾奇者のヤンキー姉ちゃんへと不満を告げた。
◆池田恒興と前田利家、逃げていたが捕縛され訓練参加
恒興と利家は遠くで震えていた。
「もう嫌だぁあああっ!! 火縄銃怖い!!」
「逃げようぜ!! 絶対死ぬ!!」
だが――
吉法師姫の家臣……柴田勝家が、力づくで二人を捕縛した。
「ひぃいいいいいいっ!! 連れていかれる!!」
「やめろぉおおおおおおっ!! 離してぇええええええっ! 勝家さまぁあああああっ!」
吉法師姫は満足げに言う。
「勝家ごくろうさま……」
「いいえ、いいえ」
「恒興、利家……。あんたたちも訓練に参加しなさい?」
「嫌だぁああああああっ!!」
「姫さまぁあああああっ! 許してくださいぃいいいいいいっ!!」
鬼武蔵が火縄銃を構えて叫ぶ。
「お前ら!! 竹千代に近づきすぎだ!! 撃つぞ!!」
「撃つなぁぁぁぁぁぁ!!」
《ドンッ!》
《ドンッ!》
恒興と利家の二人は仲良く、涙を浮かべ叫ぶが、間一髪弾丸が外れた。
◆草原は煙と悲鳴と修羅場で満ちた
火縄銃の煙が草原を覆い、姫武将たちの悲鳴と怒号が響き、俺は煙まみれで転げ回り、恒興と利家は泣き叫び、鬼武蔵は嫉妬で暴走し、新介は姫さまと衝突し、成政は泣きながら誤射し、小平太は新しい遊びを発明し、慶次は二丁持ちで暴走し――
吉法師姫は高台から見下ろし、悪役令嬢スマイルで言った。
「ふふん……竹千代、いいわねぇ~。楽しいでしょう~? 尾張での人質生活も悪くはないでしょう~? あんた! こんなに争われるなんて、幸せ者じゃない?」
「幸せじゃないです!! 死ぬ!! 俺死ぬ!!」
俺が真っ青な顔で、毎日のように首を振ってみせても、吉法師姫は火縄銃を肩に担ぎ、満足げに頷いた。
「でも……竹千代。! あんたはアーシのものよ?」
俺は煙の中で倒れながら思った。
(尾張……怖い……。マジで怖い……。でも……なんか……楽しい……。これ、俺の生前の理想と憧れ……。完全に戦国ラブコメじゃん……。修羅場ハーレムじゃん……。そして今度は銃じゃん……)
尾張の草原に、今日も戦国ラブコメの狂気が響いていた。
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