第29話 悪役令嬢、寝所同居宣言。そして翌日は火縄銃訓練でまた修羅場
◆吉法師姫、ついに寝所に布団二つ持ち込み【同居宣言】
模擬戦が終わり、俺がボロ雑巾のようになって寝所に戻ると――
ドンッ!
障子が勢いよく開いた。
「竹千代、入るわよ?」
「ひぃっ!? 吉姉さま!? また来たの!?」
吉法師姫は、なんと 自分の布団を二つ 抱えていた。
「今日からここ、アーシの寝所ね?」
「寝所って言ったぁぁぁ!! しかも布団二つって何!? 同居!? 同居なの!?」
吉法師姫は当然のように布団を敷き、当然のように俺の枕を半分奪い、
当然のように俺の腕をつまんだ。
「竹千代……。あんた、昨日も今日も……。他の子らにデレられて嬉しそうだったでしょ?」
「嬉しくないです!! たぶん!!」
「嘘ね?」
「ひぃいいいっ!!」
吉法師姫は俺の布団に潜り込み、俺の肩に頭を乗せた。
「竹千代……。あんたはアーシのもの……。だから寝る時もアーシのそばにいなさい?」
「いや、寝所同居はルール違反では!?」
「アーシは織田家の姫よ? ルールはアーシが作るの」
「ひぃぃぃぃぃ!!」
吉法師姫は布団をぎゅっと寄せて言った。
「竹千代……。あんた、今日の模擬戦……。アーシのために頑張ってたでしょ?」
「いや、死にかけてただけです!!」
吉法師姫はふっと笑う。
「……可愛いわねぇ、竹千代」
その声は覇王でも悪役令嬢でもなく――少女の独占欲そのものだった。
俺は心臓が止まりそうになった。
(尾張……怖い……。でも……なんか……嬉しい……。これ……完全に同居じゃん……。戦国ラブコメじゃん……。マジで吉法師姫最高!)
俺は心の中で歓喜すれば、吉法師姫にじゃれて、そのまま寝落ちをした。
◆翌朝:吉法師姫も交えて、火縄銃訓練開始
翌朝──
俺が寝不足でふらふらしていると――吉法師姫が火縄銃を肩に担いで現れた。
「竹千代、今日の訓練は火縄銃よ?」
「火縄銃!? 昨日は槍だったのに!? 俺、死ぬ!!」
吉法師姫は悪役令嬢スマイルで言う。
「安心しなさい! 火縄銃はね。《《当たらなければ安全》》なのよ?」
「当たったら危険じゃん!!」
そこへ姫武将ハーレムが集まる。
◆成政(泣き虫令嬢)、火縄銃を持って震える
「ひぃいいいいいいっ!! 火縄銃こわいですぅぅぅ!! 竹千代君!!」
「いや、銃口こっち向けるな!!」
成政は泣きながら火縄銃を構える。
「竹千代君を守るために……撃ちますぅうううっ!!」
「守るために撃つな!! それと俺の方向に撃つな!!」
俺は間一髪──死なずに助かった。
◆新介(勝ち気姫武将)、火縄銃を片手で構える
「竹千代君!! ぼくが守る!! 火縄銃でも守る!! 姫さまにも負けないよ!!」
「いや、姫さまに勝とうとするな!!」
新介は火縄銃を片手で構え、鬼武蔵と慶次を睨む。
「竹千代君に近づくな!! 次近づいたら撃つぞ!!」
「撃つな!!」
俺が叫び、諫めて、鬼武蔵と慶次の二人は新介に猪武者らしく、猪突猛進──
火縄銃って、案外当たらないものね……。
◆小平太(元気姫武将)、火縄銃を《《遊び道具》》扱い
「竹千代くん!! これ、火が出るんだよ!! すごいね!!」
「遊びじゃない!! 銃は遊びじゃない!!」
小平太は火縄銃を持って跳ね回る。
「竹千代くん!! 撃ってみよっか!!」
「撃たない!! 俺に向けない!! やめろぉおおおおおおっ!」
いや、俺……。マジで死ぬかと思った。
◆鬼武蔵、嫉妬で火縄銃の照準が竹千代に向く
鬼武蔵は火縄銃を構え、顔を真っ赤にして叫ぶ。
「竹千代!! 昨日も今日も姫さまと寝たんだろ!! 嫉妬したんだぞ!! 照準がぶれるんだぞ!!」
「ぶれるな!! 俺に向けるな!! 吉姉さまが勝手に来ただけだから」
俺が、自分の頭を振り、両手を振り、鬼武蔵に落ち着けと言われても、火縄銃のレバーが引かれた。
だから俺は、踵を返して──慌てて逃げた。
◆慶次、火縄銃を《《棍棒》》として使う
慶次は火縄銃を見て笑った。
「竹千代!! これ、殴るのにちょうどいいな!!」
「銃で殴るな!! それは火縄銃で、《《銃剣》》は付属していないから、殴る道具じゃない!!」
俺が諫めても、慶次は火縄銃を肩に担ぎ、豪快に笑う。
「竹千代!! 今日も弟分として鍛えてやる!!」
「弟分にするな!!」
相変わらず、意味のわからないことを告げる、筋肉脳の慶次を俺が諫めても……
俺は奴にライフルで殴られ、絶叫を上げた。
◆吉法師姫、火縄銃を構えながら独占宣言
吉法師姫は火縄銃を構え、俺の背中にそっと手を添えた。
「竹千代……。あんたはアーシのものよ?」
「吉姉さま! 火縄銃構えながら言うな!! 怖い!!」
吉法師姫はふっと笑う。
「竹千代……。今日もアーシのそばで頑張りなさい?」
その声は――
覇王の声でも悪役令嬢の声でもなく、少女の独占欲そのものだった。
俺は心臓が止まりそうになった。
(尾張……怖い……。でも……なんか……楽しい……。これ……完全に戦国ラブコメじゃん……。尾張最高……。尾張美人最高……。異世界修羅場ハーレムじゃん……。アニメやライトノベルの世界じゃん……。そして今度は銃じゃん……。いかにも織田信長らしい……)
尾張の草原に、今日も戦国ラブコメの狂気が響いていた。
◇◇◇




