第22話 泣き虫デレ、勝ち気デレ、元気デレの三姫武将が竹千代を取り合う!
◆草原の地獄訓練が終わった直後
俺が草原に転がり、息も絶え絶えになっていると――
三人の姫武将が、なぜか俺の周りに円陣を組んでいた。
吉法師姫は腕を組み、満足げに見下ろしている。
「ふふん……竹千代、今日も最高だったわ……。さ、三人とも――《デレ》の時間よ?」
「デレの時間って何!? 俺、何されるの!?」
吉法師姫は悪役令嬢スマイルで言う。
「竹千代を巡って、三人で争いなさい?」
「争うの!? 俺を巡って争うの!? やめてぇええええええっ!!」
◆佐々成政(泣き虫デレ)
成政は涙目で、俺の袖をぎゅっと掴んだ。
「た、竹千代さまぁ……さっきは……ごめんなさいぃぃぃ……」
「いや、泣きながらタックルしてきたのは君だよね!?」
「うぅうううっ……。でも……竹千代君が倒れたの見て……胸がぎゅってして……」
成政はさらに涙をぽろぽろこぼす。
「竹千代君が痛いの……。いやですぅ……。だから……。うちが守りますぅ……」
「守るって言いながらタックルしてくるのやめて!!」
吉法師姫は満足げに頷く。
「成政、いいわねぇ~! 泣きながらデレるの、可愛いわよ~?」
「ひぃいいいいいいっ!! 姫さまぁああああああっ!! 言わないでぇええええええっ!!」
成政は真っ赤になって泣きながら俺の背中にしがみつく。
(いや……可愛いな……? 泣き虫デレって破壊力あるな……)
◆毛利新介(勝ち気デレ)
新介は拳を握りしめ、顔を真っ赤にして俺の前に立つ。
「竹千代!! さっきの勝負……うち、ちょっと手加減した!!」
「してなかったよね!? 完全に本気だったよね!?」
「う、うるさい!! ……その……竹千代が倒れた時……。うち……心臓が変な音したんだよ!!」
「変な音って何!?」
新介は耳まで真っ赤にして叫ぶ。
「竹千代が……。殴られて倒れるの……。嫌なんだよ!! だから……。うちが守る!! 姫さまにも負けねぇ!!」
吉法師姫の眉がピクリと動く。
「新介……あんた、竹千代に気があるの?」
「き、気なんてねぇ!! ただ……。その……。竹千代が弱いから……守りたいだけだ!!」
「それ、気があるって言うのよ?」
「姫さまぁああああああっ!!」
新介は地面にしゃがみ込み、顔を覆った。
(いや……勝ち気デレって破壊力あるな……。ツンデレより攻撃力高いぞ……)
◆服部小平太(元気デレ)
小平太は満面の笑みで俺に飛びついてきた。
「竹千代くん!! 今日もいっぱい遊べて楽しかったね!!」
「いや、遊びじゃないよね!? 訓練だよね!?」
「遊びだよ~! 竹千代くんと遊ぶの、うち大好き!!」
「好きって言ったぁぁぁぁ!!」
小平太は俺の手を握り、キラキラした目で告げてくる。
「竹千代くんが転んだ時……。うち、すっごく心配したんだよ? だから……もっと強くなってね!! そしたら……もっと遊べるから!!」
「遊びのために鍛えるの!? 目的が軽い!!」
吉法師姫は満足げに笑う。
「小平太、いいわねぇ。元気デレは、見てて楽しいわ」
「楽しいって言うな!! 俺は楽しくない!!」
(いや……元気デレって破壊力あるな……。純粋すぎて逃げられない……)
あの頃の俺は、不満を思うわりには、楽しんでいたところもあった。
◆三姫武将、竹千代を巡って修羅場化
成政は泣きながら俺の袖を掴む。
「竹千代君……。私が守りますぅ……」
新介は拳を握りしめて叫ぶ。
「いや、守るのはぼくだ!! 成政殿!! 君は泣いてばっかりだろ!!」
小平太は笑顔で告げる。
「うちは遊びたいだけだよ~! 竹千代くんはうちの遊び相手!!」
「遊び相手って言うな!!」
三人が同時に俺を巡って言い争いを始める。
「竹千代君は私のですぅ!!」
「いや、ぼくのだ!!」
「うちの遊び相手だよ!!」
「いや、所有権争いするな!!」
吉法師姫は腕を組み、満足げに笑う。
「ふふん……。いいわ……。竹千代を巡って争う姫武将たち……。最高の眺めだわ」
「眺めって言うな!! 俺は観賞用じゃない!!」
吉法師姫は俺の頭をぽんぽんと撫でる。
「竹千代……。あんたはアーシのものなんだから……。もっと強くなりなさい?」
その瞳は――
悪役令嬢の狂気と、少女の恋心が混じった危険な光だった。
でも《《あの頃》》の俺は震えながらいつも思っていた。
(尾張……怖い……。でも……なんか……楽しい……)
尾張の草原に、今日も戦国ラブコメの狂気が響いていた。
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