第14話 ちょっと話を遡り、転生した頃の話しだ(12)
俺はその時、焦燥と苛立ちに押し潰されそうになりながらも、必死に告げた。
「俺のことはどうでもいい! 君だけは今すぐ逃げろ! 家の中に飛び込んで、電話をかけろ! 絶対に後ろを振り向くな! 早く、今すぐに!」
《《あの時》》の俺は、可憐なブレザー制服の黒髪美少女に向かって、己の命を顧みず、荒々しく命令を叩きつけた。
俺は彼女を守るために全力を尽くしていた。
暴漢魔──変態フリチンマンが迫る中、俺は叫び声を荒げ、拳と蹴りを叩き込んだ。
「うりゃぁああああっ!」
「わりゃぁああああっ!」
「なめてんじゃねぇ! こらぁあああっ!」
俺は威勢よく、荒々しく、俺の声は闇を切り裂き、彼女に逃げることを強く促した。
俺は腕を振り上げ、必死に『早く逃げろ!』『今すぐ逃げろ!』とジェスチャーを交え、彼女に命令を叩きつけた。
だが、喧嘩の最中に、そんな余裕はなかった。
長引く視線の逸れは命取りになる。
俺は黒髪の美少女を守るため、殺伐としたこの場の空気を背に、膝をつき、震え、怯える彼女の運命を賭けて戦いに挑んだ。
これはタイマン勝負──逃げも隠れも許されない。
俺は《《変態フリチンマン》》に強烈な蹴りを叩き込もうとしたが、彼女のことが頭をよぎり、攻撃はどこか鈍く、勢いも破壊力も次第に失われていった。
「うぉ、おおおおおおおおおおおおっ!」
だから《《変態フリチンマン》》は、自分の身体に、蹴りの痛みを余り感じないことを悟った。
奴は変態、痴漢。どうしようもない男だが、黒髪の乙女は自分のものだと、暗闇の中で遠吠えのような叫びを上げ、復活の狼煙をあげた。
その瞬間、《《変態フリチンマン》》は俺の蹴りを掴み、両腕でしっかりと抱え上げ、上半身を起こして俺を地面に押し倒した。
その時に両者の力関係は、確実に逆転したのだと感じた。
◇◇◇
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