第14話 尾張の悪役令嬢様との思い出(3)
鬼武蔵、ツンデレ化する……
そう、《《あの日の事件》》以来、鬼武蔵はなぜか俺に対して態度が変わった。
「……竹千代、今日の稽古、遅れんなよ。別に待ってるわけじゃねぇけど」
「え、なんで、可成ねえちゃん、ちょっと頬赤いの?」
「赤くねぇし! 尻揉まれたこと、忘れてねぇからな!!」
ツンツンしながらも、妙に距離が近い。
いや、近い。
近すぎる。
アラサー脳の俺は混乱する。
(え、これ……もしかして、ギャルゲーのように好感度上がってる? いやいや、尻揉んだだけで好感度上がるわけないだろ。 どんなギャルゲーだよ……)
俺が脳内で、鬼武蔵のことを考えていると決まって、恒興・利家の茶々を入れてくる。
「竹千代~、お前モテるなぁ~」
「尻揉んだだけで姫武将に懐かれるとか、どんな才能だよ」
「吉法師姫さままで楽しそうにしてたしなぁ~?」
「恒ちゃんの言う通りだ! 竹千代~」
「やめろ! お前ら! 誤解を広げるな!!」
恒興と利家はニヤニヤしながら俺を囲む。
「でもよ、竹千代……」
「姫さま、あれ絶対嫉妬してたぞ?」
「はぁ!? なんでそうなるんだよ!」
「だって、鬼武蔵が怒鳴った瞬間! 姫さまの眉ピクッて動いたし!」
「『尻触るなんて度胸あるわねぇ?』って、あれ絶対牽制だろ」
「やめろぉおおおおおおおおおっ!!」
アラサー脳の俺は処理しきれない。
戦国ラブコメ、難易度高すぎる。
俺が絶叫を上げようが戦国ラブコメ相撲は毎日のように行われる。
尾張のヤンキー姉ちゃんは本気で、俺を張り手してくる。
「おい竹千代! そんな甘えた態度じゃ戦場じゃ通用しねぇぞ!」
「うるさい! 黙れ! 岡崎を舐めるな!」
鬼武蔵はにやりと笑い、俺の隙を見逃さない。
「隙あり~~~!」
可愛い唇が開いた瞬間── ボクシングのフックが俺の顔面に炸裂し、 続けて腹に正拳突きが叩き込まれた。
「あがッ……うぐっ……!」
俺の口から変な声が漏れ、膝をつく。
「竹千代、顔がゆるんでるぞ? まだ尻の感触を思い出してるのか?」
「やめろ! その話題はやめろ!!」
さらに――
すらりと伸びた足で前蹴り。 そして回し蹴りの延髄蹴り。
「ぶぅっ!」
俺の鼻から血が吹き出す。
「ぎゃぁああああああああああっ!」
「うぎゃぁあああああああああっ!」
俺の絶叫が草原に響き渡る。
「竹千代は面白いな~~~! マジで笑える~!」
その後―― いつものように俺がボロ雑巾のようになった姿を見て、 尾張のおおうつけ・悪役令嬢さまは腹を抱えて笑い転げる。
「きゃははははははは~~~! 竹千代、最高よ! もっとやりなさい!」
「吉姉さま!? 俺は芸人じゃないんですけど!?」
「いいのよ、面白いんだから~」
……この人、絶対に天下取るわ。 メンタルが強すぎる。
◇◇◇




