11 僕たちの秘密
「ミカ! トリー!」
トリーに魚を食べさせて、僕も食事にしようとがぶりと唐黍にかじりつく。窓の外からアキが顔をのぞかせたのは、ちょうどそんなときだった。
「昼はこれからだな? 良かった」
テーブルにちらりと目を走らせて、それからアキはにかっと笑うと玄関のほうに駆けていく。そして僕が口の中を空にしようと四苦八苦している間にあがってくると、両手に持った荷物の片方、手籠をずいと差し出した。
「パンと腸詰め! 一緒に食おうぜ」
「う、うん」
「こっちは保存用。むこうに置いておくから」
僕が籠を受け取ると、アキはさっさと台所に向かって行った。そして座っていろと身振りで示し、鼻歌を歌いながら荷物を開けると棚の空いた場所に中身をどんどん置いていく。布に包まれた丸いものは恐らく固パン、少し重そうなのはチーズだろう。ごつごつしているのは燻した腸詰めだろうけど、こんなにたくさんなにか祝いごとでもあったのだろうか。
「ねえ、そんなに……どうしたの?」
「ん? ばあちゃんが持ってけって──ほら、早く開けないとトリーが食っちまうぞ?」
「あっ。ちょっと、トリー。これは食べられないよ」
はっと見ればトリーが籠に被せた布を引き出して、頭を突っ込む直前だ。慌てて手籠を引き寄せ抱えると、トリーは「ぎゃー」と文句を言った。
「だめだめ。これはトリーの食べ物じゃないの。はい、テーブルから降りて。トリーの椅子はそっちでしょ」
くるるーう、きゅーう
「さっき『お腹いっぱい』って言ってたろ? 食べるんなら残した魚を食べなよ」
ぐるぐるるー、きゃう
「ほら、お前ら。いいかけんにしろよ。冷めちゃうだろ」
荷物を置いたアキが腰掛けて、早く食おうとせっついた。トリーをいなしながらもパンと腸詰めを取り出すと、あたりにふわっと香ばしい匂いが広がって、僕の腹を直撃する。
「うわっ、美味しそう!」
「焼きたてだからな。腸詰めもまだ冷めてないだろ?」
「うん、あったかい! 凄い! 僕、こんなの久しぶりだよ」
唐黍の黄色とリコの赤、そして菜っ葉の緑でテーブルは色とりどりに賑わっている。そしてそこにパンと腸詰めがあるだけで、ありふれたいつもの食事がとても豪華に見えてきた。僕もアキも腹の虫がぐうぐうなって、挨拶もそこそこに2人で料理にかじりつく。
「はむっ……やっぱできたては旨いな!」
「うん! この腸詰め、すっごく美味しい!」
「だろ? このぴりっとした辛味が絶妙だよな」
きゃるるーう、くーうぅ
「僕、こんなの初めて食べた」
「へへ。父さんが去年、珍しい香草を買ったんだ。ばあちゃんが育ててさ、それを使った初めての腸詰めなんだけど──ミカ。よだれ」
え、と口元をぬぐったら、アキは違うと首を振る。視線の先を辿ったら、トリーが自分の席で食い入るようにパンを見つめてだらだらよだれをたらしていた。ぽた、ぽた、と口の端からこぼれたよだれが両前足を濡らしているのに、トリーはそれにも気づいていない。
「あーっ、もう。そんなに食べたいの?」
「ひとくちやれば? 悪いものじゃないんだし」
「うーん、いままで僕のもの欲しがったことなんてなかったのにな……じゃあ、ちょっとだけだよ?」
パンをちぎって差し出すと、トリーは嬉しそうに声をあげ、ぱくっと音を立てて食いついた。そして草と同じように味わっていたけれど、すぐに口を開けてパンの欠片をぽとりと落とす。
きゅー……
前足の間に落としたパンを、トリーは不思議そうに眺めていた。それからふんふん匂いを嗅いで、ちろりとなめて味を確かめ困ったように「きゃう」と鳴く。
これ、ちっとも美味しくないよ。
いい匂いなのにがっかりした、とトリーがあまりにも情けない顔をするものだから、僕もアキもついくすりと笑ってしまう。
きゅうぅ
「ごめんごめん。トリーの口には合わなかったね。ほら、しょげないの」
抱き上げて、口と前足を濡らした手布で拭いてやる。そして翼の上から撫でてやるとトリーは僕の胸にしがみつき、尻尾をくるりと僕の腰に巻きつけた。
少し元気になったけれど、トリーはまだ些細なことで落ち込んでしまうんだ。だから僕はこんなとき、トリーを膝に乗せて食事をとることになっていた。
「飯食うときもそれじゃあ、大変だな」
「そうでもないよ。最近はさ、家の中なら離れていても平気になってきたからね」
確かにトリーの羽が抜けて間もないころは大変だった。ご飯も食べない眠らない、そしてなにもかもが怖いようで、片時も僕のそばから離れることができなかった。だけどいまはトリーもずいぶん落ち着いて、食欲もそこそこ戻ってきた。まだ前と同じとはいかないけれど、今日は魚をほとんど残さず食べることができたんだ。だから片手で食事をすることぐらい、僕は全然苦にならない。
「愛されてるなあ……トリー、おまえ、わかってるか?」
きゅーう、くるるーう
もちろんだよ。ボク、幸せ。
トリーが絶妙な声音で鳴き返し、すりりと頬をすり寄せた。僕はそんなトリーがたまらなく可愛くて、首筋をくすぐるようになでてやる。するとトリーはきゅんきゅん鼻を鳴らしながら僕の頬をなんどもなめて、「ありがとう」って伝えてくれた。
「あー、はいはい。聞いた俺が馬鹿でした」
「そうだよ、アキ。トリーはホントに賢いんだよ?」
「……なんかさ、ミカ。おまえ、前より酷くなってない?」
アキはぐったりと肩を落として大きく息を吐きだした。そしておっくうそうに腸詰めをひとつつまむと仰向いたまま口の中に放り込む。
いかにも呆れたと言わんばかりだったけど、ちっとも腹は立たなかった。だって僕は決めたんだ。なにがあってもトリーとは離れない。絶対守ってみせるって。
「でもさ、こんなときだから……せめてそばにいてやりたいって思うだろ?」
左手でトリーの頭を撫でながら、フォークを取ってテーブルの上に手を伸ばす。できたての腸詰めは、ひとくちかじるとぷりっとした肉の中にぴりっとした辛味がきいて、本当に美味しかった。僕はじっくり味わい飲み込んで、それから顔をあげてアキのほうに向き直る。
「飛べなくなって、トリーはものすごく落ち込んだんだ。下手したら病気になって死んじゃうかもって……凄く心配した。だから」
「うん。わかってる。それに俺がさ、あんなこと言ったから……余計に」
「…………」
図星だ。
アキの話を聞いてから、僕はひとりが怖かった。少しでも目を離したらトリーがどこかに行ってしまうんじゃないかって、ずっと不安だったんだ。だからトリーが「抱っこして」ってくっついてくるのに僕も甘えてしまっていた。
「ごめんな。だけど、もう大丈夫──じゃ、ねえ!」
叫んでアキが手を伸ばす。
けれどほんの少し遅かった。
僕がはっと目をやると、トリーはフォークに残った腸詰めにかじりつき、そして羽をすべて逆立て固まってしまっていた。
──ぷしゅっ、ぷしゅっ、きゅう
「はい、お水」
きゅーうぅぅ
涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を拭いてやる。トリーは水を飲んで両手で顔を洗う仕草をすると、僕の脇にぎゅっと頭をつっこんだ。口の中に辛味の余韻が残っているのか翼はまだふんわりと膨らんで、ぴすぴす鼻を鳴らす音が聞こえてくる。その背中を優しく撫でて、僕はトリーに言い聞かせた。
「わかったろ? もう僕のもの食べちゃダメだよ?」
ぎゅるるーう、ぎゃうぎゃ、ぎゃ!
ボク、また騙された。こんなの食べるなんておかしいよ。
文句は勇ましいけれど、尻尾を丸めて僕にしがみついた姿では、可愛いだけで迫力なんてありはしない。アキと顔を見合わせ声を出さずに笑っていると、アキがトリーをのぞき込む。
「なあ、元気出せよ。トリーのお土産はさ、ちゃんと別にあるんだ」
ズボンのポケットに手を突っ込むと、アキがなにかを取り出した。手の上に乗せられたのは丸くて平べったい小さな容器。それに思わず息を呑むと、トリーが「どうしたの?」と顔を引き出し僕の胸に顎を乗せた。
ぱちぱちと瞬いて、小首をかしげたトリーのことをアキが呼ぶ。トリーは首を仰け反らせてアキを見て、そして黒い瞳をぱちりと大きく見開いた。
きゃー……きゅるっ
すぐさまトリーは僕の膝から飛び降りて、アキの元に向かって行った。視線はもう小さな容器に釘付けで、ほかはなにも見えていない。
ばあちゃんの傷薬。
高価なそれが「トリーのお土産」だなんて、それはつまり──
動けなくなった僕を余所に、アキはトリーと楽しそうに遊んでいる。アキが容器をつまみ、高く掲げて後退するとトリーは首を伸ばして後足だけで立ち上がり、とことこ2本足で追いかける。笑いながら容器を振ると、トリーは右に左に移動して、ときおりぴょんと飛び跳ねる。アキはトリーに取られまいと背伸びをしたり手を大きく横に振ったり忙しなく動くから、ついにトリーはアキの身体に飛びついた。
身体を登ってアキの頬をぺろりと舐めて、トリーは可愛らしくおねだりする。それに満面の笑みを浮かべると、アキはトリーを抱き上げ椅子に座って真面目な顔で語りかけた。
「ちょーだい!」
きゃう!
「トリー。『ちょーだい』だ」
くーう、きゃう!
「『ちょーだい』って言えたらやるよ」
きゃう、きゃう!
「アキ、無理だよ」
「わかってるって。だけど教えなきゃ覚えないだろ?」
なー、とアキがトリーの頭を撫でるのに、僕はゆっくり頭を振った。
口に出すのは正直つらい。でも、黙っているのも胸のつかえになっていた。
「違うんだ。トリーはもう──喋れないかもしれないから」
「え?」
ふと、アキが動きを止めた。どういうことだと問う眼差しに、息を飲み込み覚悟を決める。トリーは変わるかもしれないと、アキに告げるために僕はなけなしの勇気をふり絞った。
◇ ◇
爽やかな森の香りに包まれて、トリーは心ここにあらずといった様子ですっかりアキに身を任せてしまっている。そんなトリーの翼を撫でながら、アキはへにゃりと目尻を下げた。ようやくトリーが懐いたのが嬉しいのだろう、さっきからずっと頬が緩みっぱなしだ。
「俺はさ、心配することないと思うけどな」
「でも。飛べなくなってから、トリーはひとことも喋っていないんだよ」
「こないだ会ったのは……3、いや、4日前か? そんときよりトリーはずっと元気になってるよ」
だからもう少しして羽が生えればまた元気に喋りだす。大丈夫だ心配するなとアキは言う。だけど僕の不安は消えなかった。
トリーが卵から孵ったときはまるっきり鳥だった。それが成長してドラゴンになり、そしていま、虹色の羽も風切り羽もなくなった。これから残った羽も全部抜けて、トリーにツノが生えるかも。そしてどんどん大きくなって、トリーはマスタードラゴンになるかもしれない。
そう告げたらアキはくすっと吹き出した。
「それは違うよ。言ったろ? トリーは『小さなドラゴン』だって」
「……うん……けどマスタードラゴンじゃなくても、別のドラゴンかもしれないじゃないか」
「はあ。そんなに心配ならさ、あのじいちゃん──教主さまに訊いてみれば?」
「それ……トリーのことを教えてくれたおじいさん?」
「そ。実はさ、じいちゃんは教主をこの夏で引退するんだって。そんで秋になったらこの村に来たいって言ってるんだけど……どうする?」
アキの言葉に息が止まる。
その人は僕とトリーにとっての恩人だ。それにいまもたったひとりで僕らを守ってくれている。だからずっとお礼を言いたいと思っていた。けれど「教主さま」だったなんて。教主さまはあのときの、父さんと母さんが死んだときの──
とっさに声を出そうとしたけど喉はすっかり干上がって、掠れ声すら出なかった。そんな僕にアキは優しく微笑みかける。
「返事は後でいいさ。収穫祭までに決めてくれれば。──ほら、そんな辛気くさい顔するなよ。せっかくのお祝いなんだからさ」
アキは「なー?」と同意を求めてトリーの喉をくすぐった。トリーは眠そうにしていたけれど、やがてアキの指と遊びだす。細かく動くアキの指を両手で掴んで甘噛みし、お腹をぽんと叩かれ身をよじる。そしてすぐまたアキの指を捕まえて、とひとしきり遊んだ後はぱっとアキの膝から飛び降りて、僕に抱っこをねだってきた。
「あーあ、やっぱりミカがいいのかよ」
きゅーう、くるくるるー
「ちぇ、さっきはあんなに媚びてたのにな」
頭を掻いて、アキは口をとがらせる。身体を押しつけ甘えるトリーを抱いていると、僕もようやく喋れるようになってきた。そこで大きく深呼吸をして、ずっと気になっていたことを聞いてみた。
「……ねえ、アキ。『お祝い』って、なに?」
「ん? あの草が『あれ』だったから、そのお祝い」
「違う! あの草は薬草なんかじゃ──」
きゅう、きゅう
「──っぷ。もう、トリー!」
声を荒げた僕の口をトリーがぺろぺろ舐めだした。「やめて」と手のひらで遮っても、トリーは鼻で押しのけ舐め回す。
どうして急に、と不審に思ったその瞬間、僕ははっと気がついた。トリーが心配そうに鼻を鳴らして僕のことを見つめている。トリーは僕を気遣ってくれたんだ。
「……ごめん」
くるるーう
「ミカ、心配するなって。『お祝い』っつっても半分口止めみたいなもんだから」
「口止め……?」
「そう。『あれ』が生えてた場所は、秘密にしておいてくれってな」
わけがわからすぽかんと口が開いてしまう。そんな僕に片目を閉じて、アキは早く話したくてうずうずするのか小鼻をひくひく動かした。
アキの話はこうだ。
「ばあちゃんの傷薬」に使う薬草のなかでも一番大切なのは「あれ」、つまり「トリーの草」だ。だけどこの薬草はなかなか厄介な草らしい。
まずこの草はスミレと同じぐらいの大きさで、葉っぱの形もよく似ているから花が咲かないうちは見分けるのが難しい。そしてただでさえ少ないうえに年によって生える場所がまちまちで、冬になると枯れてしまう。次にどこに生えてくるかわからないから毎年捜すのが大変だった。だったら育てようと株を持って帰っても、すぐに萎れて枯れてしまう。
「ばあちゃんは種を取って蒔いてみたけど、一度も芽が出たことはないって言ってた。だから山で捜すしかないんだよ」
「そうだったんだ……」
「うん。あの草はさ、森の動物たちも怪我したときには食べにくるから、見つけたのを全部採ったらだめなんだ。でもみんながどんな草か、どこに生えているのか知っていたら、あっというまになくなっちまうだろ?」
だから、と続けてアキは晴れやかな笑顔をみせた。
「これは俺たちだけの秘密だ。ミカもさ、パンと腸詰め食ったんだから、誰にも言うなよ?」
「う……うん」
はめられた。
いや、少し違うけれどそんなようなものだろう。
けれど強ばった肩から力が抜けて、僕はほっと胸をなで下ろす。草のことを誰にも言ってはいけないのなら、トリーが見つかることもないだろう。そう思ったら少しだけ安心できた。
「うちじゃ、ほら。母さんがダメダメだろ? だからばあちゃん、あの薬はもう作れなくなるかもってずっとやきもきしてたんだ」
「確かにおばさん、菜っ葉と雑草の区別がつかないもんね」
思い出して顔を見合わせ僕らはぷっと吹き出した。小さなころにアキの家で食事をご馳走になったとき、出されたスープに雑草が入っていたことがあったんだ。しかもおばさんは、それが菜っ葉だって信じてまったく疑っていなかった。だからそれ以来、ばあちゃんはおばさんに薬草について教えるのを諦めたって聞いている。
「料理はうまいのに、不思議だよね」
「名前もちゃんと知ってるんだぜ? なのに葉っぱの形がわからないんだからなあ」
「ねえ。そういえばさ、アキは『あれ』って呼ぶけどあの草に名前はないの?」
「うん? もちろんあるさ。でもうっかり他人に聞かれたらマズいだろ? だからいつも『あれ』って言ってるんだけど……えーと、なんだったかな」
顔をしかめてアキは眉間を指で揉む。うーとかあーとか唸りながら考えて、そしてぽんと手を打った。
「思い出した! 確か……リュウ? リューなんとか」
「アキ……それ、思い出したって言わないよ……」
「しかたないだろ、『あれ』で通じるんだから」
そうして僕らは軽口を叩き合ってひとしきり笑い合う。目尻ににじんだ涙をふきながら、僕はほっと息を吐きだした。
もしあの草が本当に薬草だったら。そう思ったら怖かった。僕がトリーを守るんだ、絶対に離れないって決めていたけどやっぱりどこか不安だった。
けれど、トリーの草は僕らだけの秘密なんだ。だからここに欲深い商人たちがやってくることも、トリーが危ない目にあうこともない。そう思ったら、わだかまっていた重しが取れて、すうっと気持ちが楽になった。
(こんなに笑ったのは久しぶりだ)
心の隅でそんなことを思いながら、僕らはその日、楽しいひとときを過ごしたのだった。
◇ ◇
ランプを消して寝台に寝転ぶと、トリーが枕元でごろりと身体を横たえる。それからくーんと鼻を鳴らして僕の頬をぺろりとなめて、そしていつものように頬をくっつけ眠るための準備をする。僕はその滑らかな感触を楽しみながら、ぼんやりと天井を眺めていた。あたりは真っ暗、もちろんなにも見えないけれど、なんとなく目が開いていた。
「ねえ、トリー。どう思う?」
きゅー……
「トリーのことを教えてくれたおじいさん、教主さまなんだって」
くーぅ……
「やっぱりさ、お礼……しなきゃいけないよね」
父さんと母さんのことを思い出すと、まだ頭の中がぐちゃぐちゃになってくる。もちろん教主さまは悪くない。それどころかトリーのことで、いまも助けてもらっている。だから会ってきちんとお礼をしたいけれど、いざそのときに、なじってしまいそうで怖かった。
「僕……どうしたらいいのかな……」
返事はない。耳を澄ませば規則正しいトリーの寝息が聞こえてくる。子守唄のようなその音に、あくびがひとつこぼれ出る。
時間はまだある。難しいことは後にして、今日はもう寝てしまおう。そう思いながら「おやすみ」とトリーの耳の後ろを撫でたときだ。
(──!!)
ざらりとしたその感触に、眠気はどこかに吹っ飛んだ。




