第29話 雨の日
「……」
今日は雨が降っていた。鞄を机に置いて、教材たちを取り出す。折り畳み傘を持ってくるのを忘れたせいで僕はしっかり濡れてしまった。頭をハンカチで拭きながら教材の様子を確かめる。教科書は少しだけ湿っているが、少し干しておけば問題なさそうだ。
机の上に世界史と国語の教科書を広げて置いておきながら、ボーッと教室を眺める。
「――」
今日は電車が遅延していたからか、時間がギリギリになってからたくさんの人が教室に入ってきた。それでも空席がポツポツと空いている。
村雨の席も空席だった。それに気づいた自分が嫌だった。自分で村雨を振っておきながら、誰よりも傷ついて、可哀想なフリをしている。
――いつまで引きずるつもりなの?
いつまで引きずるつもりなのだろう。ずっと、ずっと引きずるんだろうな。
――みっともない。
その通り。僕はそういう人間だから。
――それは、不誠実だ。
……。わかってる。わかっている。
「ぁーい。おはようございまぁす。みなさんまだ揃ってないみたいですねぇーー」
ネズがホームルームを始めようと教壇に立った。しかし遅延のせいでまだ来てない人が数名いる。
村雨など他の生徒も少し遅れて、慌てたように教室に入ってきた。村雨は雨で濡れた髪をてしてしと整えている。
それに魅入りそうになった僕は、また自嘲する。
……僕が悪い。今はそれで良いだろ。




