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再起転生 ~借金まみれの三十一歳、貴族の赤ん坊になったので今度こそ魔法と人生を楽しみたい~  作者: ぬゑ
私の最初の一歩

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天然温泉と大人の色気


もしこの世界に神様がいるとしたら……。 前世で童貞のまま借金まみれでくたばった俺に、ようやく特大のボーナスを支給してくれたに違いない。


ボコボコと音を立てて湧き出る、火山岩をくり抜いた天然の湯船。

洞窟内には温かい湯気が立ち込め、硫黄と鉱物の心地よい匂いが鼻腔をくすぐる。照明は、岩肌に掲げられた二本の松明が落とす橙色の光だけ。


そして――その幻想的な空間の真ん中に、ヴェラがいた。


彼女は迷いなく革ジャケットを脱ぎ捨て、ブーツを脱ぎ、灰色の麻シャツを頭から無造作に引っ張り上げた。


前世の三十一年ものの童貞脳が、音を立ててショートした。


松明の陰影に浮かび上がったその肉体は、戦うために鍛え上げられた極上の芸術品だった。

背筋のしなやかな筋繊維が、信じられないほど引き締まった細いウエストへと流れている。だが、本当の暴力は彼女がズボンを脱ぐために横を向いた瞬間に炸裂した。自然の重みでたわむ豊かな胸の傾斜、肉感的な太もものライン。そして脇腹や肩に残る古傷が、彼女の持つ野性的な大人の色気を限界まで跳ね上げていた。


ごちそうさまです。本当にありがとうございます。この素晴らしい世界に祝福を。


天井の鍾乳石を凝視して平静を装おうとしたが、七歳児の眼球は強力な磁石に吸い寄せられるように、チラチラとその肢体を盗み見てしまう。


ヴェラは黒髪を革紐で頭上にまとめると、湯船の石段を降り、胸元までザブンと浸かった。 そして、骨抜きになったような色っぽい吐息を漏らす。


「あぁぁ……極楽だねえ。全身の細胞に魂が戻ってくるよ」


彼女は目を細め、湯船の縁に両腕を乗せた。 その体勢のせいで、ただでさえ規格外の胸がさらに強調される。そして片眉をピクリと上げて、こちらをジト目で見つめてきた。


「なんだい坊や、突っ立ったまま化石にでもなる気かい? さっさと脱いで入りな。あんた、全身から蠍の体液の匂いがプンプンしてるよ」


「は、入るよ今!」 喉を詰まらせ、耳まで真っ赤に染まるのを感じながら叫ぶ。


上着とズボンを脱ぎ捨て、下着一枚になって湯の中へ飛び込んだ。

彼女の圧倒的なプロポーションに比べれば、俺の七歳児の小さな体はあまりに貧弱だ。顔面が茹でダコのように赤くなっているのを誤魔化すため、急いで湯に鼻先まで沈めた。


……湯加減は最高だった。 熱い湯がジンジンと染み渡り、山登りと坑道の死闘で強張っていた筋肉を芯からほぐしていく。


俺は二メートルほどの安全距離を保ち、湯船の隅っこに陣取った。


ヴェラは小馬鹿にしたように笑いながら、自分の肩にお湯をかけた。


「なんだいテオ、アタシとお風呂に入るのがそんなに恥ずかしいのかい? レイナの貴族様は、家族で混浴すらしたことがないのかねえ?」


「……そういう問題じゃないだろ」 お湯の中でブクブクと泡を吐きながら抗議する。 「少しは人前で裸になる恥じらいとかないのかよ」


「人前ぇ?」 彼女はケラケラと喉を鳴らして笑った。

「あんたは七歳の子供だよ。アタシからすりゃ、雨に濡れた子猫と一緒さ。あんた相手に恥ずかしがってたら、鏡の前で服を着替えるのだって恥ずかしくなるよ」


雨に濡れた子猫ねえ……。 この子猫の中身が、三十過ぎたオッサンの視線で全身舐め回すように見てるって知ったら、崖から投げ落とすくせに。


ヴェラは目を閉じ、岩肌に頭を預けた。 パチパチと松明が爆ぜる音と、天井から滴る水滴の音だけが静かに響く。


不意に、彼女が片目だけを開けて湯気の向こうの俺を見た。


「ねえ、テオ」 「何?」


「あんたの下顎のその傷跡……どこでこしらえたんだい?」


言われて、濡れた手で顎の古傷を触った。すっかり忘れていた。


「二歳の時だよ。背伸びして上級の雷撃魔法を暴走させて、部屋の床で盛大に自爆したんだ」


ヴェラは三秒ほど固まり、次の瞬間、洞窟を揺るがすような大爆笑を上げた。


「二歳で自爆ゥ!? ギャハハハハッ! あんた、生まれつき頭のネジが外れてたんだねぇ!

普通の二歳児はベッドから落ちて泣き叫ぶもんだよ。それを高圧電流で自爆って何だい!?」


「……好奇心旺盛だったんだよ」 思わず苦笑いが漏れた。


だが、ヴェラの笑い声が静かに収まり、その表情が柔らかく緩んだ。彼女は水面に浮かべた自分の手のひらを見つめ、脇腹の古傷をそっと撫でた。


「でもね……今日の坑道での動き、見事だったよ」


驚いて目を瞬かせた。ヴェラが素直に他人を褒めるなど、滅多にないことだ。


「並の温室育ちのお坊ちゃんなら、火気厳禁と言われた時点でパニックを起こして泣き叫ぶところさ」 彼女は低く、落ち着いた声で続けた。

「だけどあんたは眉一つ動かさなかった。冷静に間合いを測り、小刀で爪を弾き、死角から土で刺し殺した。昨日の訓練の成果を、一晩で実戦に落とし込んでみせたんだ。……あんたには、本物の戦士の肝が据わってるよ」


胸の奥が、お湯とは違う熱さでジワリと満たされていくのを感じた。


下世話な興奮でも、照れ隠しでもない。 もっと深くて、温かい何か。


前世の三十一年間、俺は誰からも必要とされず、「使えない奴」として扱われ続けてきた。命がけの修羅場を乗り越え、誰かに背中を預けられ、真っ直ぐに認められる――そんな経験は、一度だってなかったのだ。

歴戦の傭兵からのその言葉は、俺の魂の奥底にあった劣等感を、優しく溶かしてくれた気がした。


「……ありがと、ヴェラ。でも、あんたが前衛でガッチリ受け止めてくれたからだよ」


ヴェラはニッと笑い、湯の中で腕を組んだ。

「当たり前さ。そのためにあんたの親父さんから大金をもらってんだからね。ま、相棒が最初の角でくたばらないタフな奴だと分かって安心したよ」


翌朝。山の空気はどこまでも澄み渡り、冷たく心地よかった。


ダゴベルトから銀貨の詰まった報酬袋を受け取り、乾燥肉やパンの差し入れをリュックに詰め込む。監督は「最高の傭兵どもだ!」と何度も手を振って見送ってくれた。


朝日に輝く大剣を背負い、俺たちは尾根を下る一本道へと踏み出した。


「それで隊長、次はどこへ?」 腰のナイフの位置を確かめながら尋ねる。


ヴェラは羊皮紙の地図を広げ、南へと指を滑らせた。

「チビキのギルドへ戻って完了報告を出し、残りの報酬を受け取る。……で、あんたが良い子にしてたら、次の遠征の前にヴェイン邸へ数日里帰りさせてやってもいいよ」


俺の手が、無意識にジャケットの内ポケットへと伸びた。 そこには、チビキの市場で買ったあの空色の髪飾りが、大切に仕舞われている。


「……そいつは最高だね」 俺は自然とこぼれた笑顔で答えた。


目の前には、どこまでも果てしない道が続いている。 そして俺は今、この世界で一歩一歩を踏み締めて生きている実感を、心の底から噛み締めていた。

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