元ネオファンキングと壁破壊ニキ
若い男のオペレーターから、Aランク級の危険な魔力が測定されたことを告げられるも、ユーマは逆に気合が入った。
データベースと照合しない未発見モンスターということも発覚し、高ぶっていく。
「久々の大物だぜ!」
右手にネオファン作成の剣を持つ。
だが、その剣には刃がなかった。刀のようなデザインの、ブルーの持ち手と銀色の鍔があるだけ。
ユーマはその剣に魔力を流し込んだ。
瞬間――ガチガチガチという音と共に、日本刀のような反りのある刃が、魔力の氷によって形成されていく。
透明感のある、薄い青の美しい刀だ。
アイシクルブレード。氷に形成する刀は極めて頑丈かつ変幻自在で、場面によっては長さや形を変えたりして柔軟に対応することが出来る。
「おし、いくぞ!」
ユーマが氷の刀を持って前へ出る。
その動きは高レベルの探索者特有の、素早いものであった。
だが――巨躯である金色の狼はそれすらも上回る動きで駆け、ユーマの背後へと回った。
「っ、やるな!」
ユーマは素早く振り返る。
金色の狼が体当たりするのを、横へ大きくステップして回避。
すれ違いざまに右の前足と、右の後ろ足を斬った。
鋭い太刀筋。だが、刃は皮と肉に阻まれて硬い感触が返ってくる。
しかし全く斬れていないわけではなく、しっかりと切れ目が入っていた。
右の前足に関しては肉が裂け、血が出ている。
背後にいると、金色の狼の尻尾がぶん! と一振りされ、それを紙一重で回避した。
鋭い一振りによる突風を感じながら、ユーマは好戦的に笑う。
「たしかに強そうだが、動きは十分についていけてる!」
ユーマと金色の狼の壮絶な戦いが繰り広げられる。
戦況はわずかに、ユーマが押していた。
決定打があるわけではないが、地道に刀によるダメージを金色の狼へ与えられている。魔力も体力も温存しつつ、着実に攻撃を重ねていた。
少しずつ、金色の狼の動きが鈍っていく。
勝てる。そう思った時だ。金色の狼は――大きな遠吠えを上げた。
そのあまりに大きな声量に、ごごごごご、と地面が揺れる。
「っ、な、なんだぁ……?」
金色の狼の瞳が、赤く光る。
ゾクゾク、とユーマの全身に鳥肌が立つ。
金色の狼のまとう雰囲気が変わり、勢いよく突進した。
地面の揺れと、放たれた魔力のせいでユーマの反応は一歩遅れた。そしてその遅れが、致命的となる。
「っ、ぐわぁ!?」
どすん、と。猛スピードのダンプカーに突っ込まれたかのような衝撃が、襲いかかった。
ユーマの体が跳ね上がり、地面に転がる。脳が揺れ、内臓がダメージと共に跳ねて、口から血を吐く。
ぶつかる寸前に刀を長くし、金色の狼の瞳を傷つけることに成功した。右目から血が流れている。だが――それに怒ったかのように大きな鳴き声を上げ、さらにユーマへ追い打ちをかけようと接近してくる。
「くそ、やべっ……!」
体当たりのダメージは深く、ユーマは逃げるのがやっとになる。
金色の狼も出てきた頃よりは弱っているが、赤い魔力によってパワーが上がり、攻撃力の凶悪性が増している。
『やばい』
『ユーマ逃げて!』
『無茶するから……』
『やっぱこういうのはパーティーじゃないと』
「1人で倒すから、話題になるんだろうが……!」
口では強がるも、走り回るうちに体力も削られる。
危険だと判断したオペレーターが、救難信号を発信。
そこからねばっていたが、追いつかれた。
激痛が全身を走り、膝をつく。
金色の狼は口を開き――炎のブレスを吐いた。
「っ! そんなことも、できんのかよ……!」
ユーマはガードのため、氷の魔法を放とうと魔力を込める。
だが――間に合わない。
動きが鈍っている。かつての自分の全盛期が遠い。
ユーマは自分自身に呆れた。
(俺……なにしてんだろうな……)
迫る炎に、思う。
走馬灯のように、過去のことが蘇る。
成り上がることも、モテたことも体験した。
同時に、裏切られたことも。
(目標。見失っちまったよなぁ……)
一体、なにを目指しているのだろうか。
これからどうしたいのだろうか。
ユーマがそんなことを葛藤した瞬間――ゴオオオオオオオ! と、炎が何者かに受け止められる。
目の前には、緑色の魔力のラウンドシールドを展開し、ガードする壁破壊ニキの姿が。
「助けに来た」
救難信号を受け取った影山は淡々と、そう告げてきた。




