推しと初デート 2/3
「会計は私がしておくね」
「え? いや、いいって。元は俺が朝日ちゃんを労おうと思ってのことだから」
「そ、それなら、”次”は影山さん奢りがいいかな~……なんて」
「次? そっか。わかった、そういうことなら」
「っ! う、うん! 次、ね!」
(やった~! また影山さんとデートしていいってことだよね!)
朝日は伝票をとり、嬉しそうにカウンターまでいく。
影山は一足先に階段を降りて、外へと出た。
空は快晴で、穏やかな風が気持ちいい。
(休みというのは、やっぱり良いものだな)
なんてことを、ぼんやりと考えていたら。
「ねえねえ、今ひとり~~~? あたし達と遊ばなーい?」
「っ!?」
1人になっていたのは一瞬だというのに、運悪く女の子に逆ナンされる。
しかもオフショルダーやへそ出しなど、肌の露出がやたらと多い、派手な雰囲気のギャル達だ。さらに人数が3人もいる。
「いや、えっと、一緒の人がいるから」
「え~~~?」
「彼女かな?」
「じゃあ獲っちゃおう~」
なんて言われて、ズイズイズイ、と距離を詰められてしまう。
甘い香りが鼻を刺激して、うろたえてしまった。
男としての本能だって、反応しないわけじゃない。
「あの、その……」
「きゃー♥ 困ってる顔かわいい~」
「一緒に楽しい事しちゃうー?」
「今おっぱい見たでしょ~」
そんな困った影山の元へ、会計を終えて階段を降りた朝日がやってくる。
早々に逆ナンされる影山を見て、朝日は驚愕した。
(ちょ、ちょっと目を離しただけで女の子に囲まれてる!? と、というか、こういうのって普通は逆だよね……)
~朝日のスーパー妄想タイム~
朝日は男達に囲まれ、ナンパされている。
「へい、彼女~。俺らと遊ぼうぜ」
「きゃっ!? い、嫌です! 離してください!」
パシン、とナンパ男の手を、颯爽と現れた影山がはたき落とす。
「朝日ちゃんに触るな」
「な、なんだてめぇは!」
ナンパ男の怒声をよそに、影山は片手で朝日を抱き寄せる。
「このお姫様は、俺だけのものだ」
~完~
(きゃああああ、ありがとうございます――じゃなくて! 影山さんを助けないと!)
と、朝日が妄想している間に、影山は気がついて「あ、じゃあ、失礼します……」と言って抜け出してきた。
逆ナンギャル達が、舌打ちをして朝日をジロジロ見た。
「あとちょっとだったのに」
「お邪魔虫~」
「あーあ、せっかく良さげな男だったのになぁ」
逆ナンギャル達が不機嫌そうに去っていく。
「な、なんかごめん、朝日ちゃん」
「え? うんうん、大丈夫だよ」
すぐに影山は来てくれた。
だというのに、朝日は内心でモヤモヤした。
勝手に逆ナンされたのは影山の方で、彼からナンパしたわけじゃない。
というかそもそも、2人は付き合っているわけではないのだ。
それなのに……嫉妬してしまう。
(おっぱいの谷間見てた……むぅ。私だって大きいのに)
こんな感情は良くないと、もしかすると影山にとって迷惑になるかもしれないと思いつつも、イライラした。
「影山さんはスターだからね~、モテモテになっちゃうのはしょうがないよ」
朝日の声は不機嫌であった。影山はあれ、と思ってしまう。
「スターなんて……おおげさな」
「まんざらじゃなさそうだったね」
「そんなことないって。むしろ困ってたよ」
「前にも言ったけど、ホイホイついていっちゃダメだからね! 成功した配信者さんはそういうので失敗してるんだから。例えばね――」
朝日は歩きながらペラペラと、女性トラブルで炎上した配信者達の事例を上げていく。
どう考えても朝日の独占欲から来る警告なのだが、影山は真面目な性格なので、勉強として素直に、そして真剣に聞いていた。




