耐久配信になってしまう
『当然、出口はあるよな!』
『出口、どこ……ここ……?』
『嘘やろ』
『これで徒歩帰りとか鬼畜すぎんか』
『クソゲーみたいな仕様やめーや』
『ドンドンドン!(絶望)』
『ま、まあ、伝説のクソゲーと違ってエンカウント率は低いから』
『黄〇のオードかな?』
「出口はありません」(半ギレ)
『よし、解散』
『オワタwww』
『声に怒気こもってて草』
『え、マジでないの?』
「ないですね」
影山はため息をつき、元来た通路へと戻る。
「朝日ちゃん、サポートをお願い」
「うん。最短ルートでも結構な道のりだけど……一緒にがんばろうね」
こうして今回のダンジョン探索は長丁場となった。
さらに道中はレーザートラップもかいくぐらないといけない上、嫌がらせなのかスケルトンとのエンカウント率も高かった。
体力と集中力もゴリゴリ削られる。
だが、長時間の戦いにはある程度の耐性がある。
(社畜時代に深夜まで残業したことなんて、何度もあるし……)
ふと思い返すと、元上司は決まって先に帰っていたことを思い出す。
影山以外にも既婚者の男が嫌いな傾向があり、そういった境遇の部下に繁忙期は大量の仕事を振っていた。
『俺は最後まで見届けるぞ』
『眠いので落ちます』
『風呂食ってくる』
『今戻ったけど、まだやってて草』
『なっがいなぁ……』
『景色変わらんのが地味にやだよな。進んでいる気がしない』
『ニキ様と夜遅くまで過ごせる♥』
『ニキ、ファイトだ!』
時刻は22時を回る。眠気が襲い始めた。
「もうここで寝ようかな……」
『すごいこと言ってて草』
『絶対ダメ』
『死ぬぞ』
『諦めないで』
「ダンジョンにも耐久配信ってあるんですか」
『あるよ』
『レアモンスター出るまで帰れないとか』
『もちろん今のニキみたいに、長引いて、結果耐久みたいな感じになっているのもあるよ』
「そうなんですか……」
気分転換に雑談をしつつ、何度も戦闘をこなし、罠を回避し――ようやく、スタート地点へと辿りついた。
壁破壊をすると、久々にダンジョンの空の下に出られる。
影山は思わず、両腕をおおげさに広げた。
「やっと出られた……!」
『やったあああああああ!』
『おつかれ!』
『さあ帰ろう!』
『俺も思わずガッツポーズ出たわ』
『“〇ョーシャンクの空に”みたいなポーズで草』
『解放感すごそう』
ダンジョンの出口まで移動する頃には、なんと0時を回っていた。
影山は疲労感のにじむ顔と声で、配信を締めくくる。
こんな時間なのに、接続数は40380と表示されていた。
「みなさん、今日はお疲れさまでした」
『おつ!』
『またね』
『大変だったね><』
『おやすみ!』
配信を終了する。
「朝日ちゃんもお疲れ。今日はキツかったよね」
「えへへ、私は大丈夫だよ。それよりもニキさんが、たくさん休まないと」
いわゆる深夜テンション的な補正がかかったのか……影山は朝日へ意外な提案をした。
「明日は配信休みにしよっか。いつもお世話になっているから、なにかお礼がしたいな」
「え!?」
「なにがいい?」
ほぼデートの誘いだ。
単純にお礼の気持ちから出た言葉であったが。
朝日はモニターの前で顔を赤くしながら、小さく呟いた。
「え、えっと……喫茶店……一緒にいきたい……」
そう言われて、影山は初めて自覚を持ち、頬が赤く染まる。
「わ、わかった。明日、いこうか」
「うん……」
そういうことになった。




