たすけて
『飽きてきたな』
『透視はルート開拓以外映えないからな~』
『文句あるなら見るな』
『短気なキッズはすぐイライラするなぁ』
『切り抜きから来ました。武器破壊に罠破壊、どれも何回でも見られるくらいにかっこいいです』
『このシーンが一番好きとか、みんなある?』
『スライムグーパン撃破』
『切り抜きじゃないけど、DQNこらしめたやつ』
『ブラックバード狙撃』
『アックスオーガの武器破壊かなぁ。素手で戦うっていう珍行動も見れたし』
『トレントの魔法破壊』
『狂気のタトゥー・バジリスク狩り』
『ファンサ♥』
『壁破壊は何度でも見れる』
『見どころが多すぎるんだよなぁ』
『透視スキルはチート級の強さ』
『その内ダンジョンの真理へ辿り着いたりするのかな』
(俺がなにも喋ってないのに、よく盛り上がれるな……)
そんなことを思ってしまう。
朝日の解析を頼りにしつつ、慎重に進んでいた。
ペースが速いわけではないので、時間がかかる。
それでもコメント欄は楽しそうだったし、音声で聞いているだけでライブ感があって、影山としてもモチベーションになっていた。
しかしながら地味な絵面が続いているのも事実で、飽きてきたというコメントも見受けられる。
実際、そのくらいのキツさはあった。10時から潜り始めたというのに、現在の時刻は17時だ。
「ニキさん。そこの通路を右に曲がると、大きなフロアに出られます」
「了解」
朝日の言う通り、影山が出たのは今までとは違う開けた大部屋であった。
部屋の隅は角で、四角になっている。
『おお?』
『ついにゴールか?』
『待った。なにかいる』
部屋の中央に佇むのは、緑色の肌をしたゾンビであった。
爛れた緑色の皮膚。うつろな白目。
四肢のある人間と同じ構造で、全裸だが性別は判別できない。
影山に気が付くと、べちゃ、べちゃ……と、湿った音を立てながら歩き始めた。
『ひいいいい!?』
『なんだあれは???』
『ぞ、ゾンビ?』
『やはりホラー展開!?』
『TALKだ!』
『あんなの仲間にしたくねぇよ!?』
「あわわわ、怖いよ、二キさん」
「元は人間だったのかな」
「残酷で怖いこと言わないでください!?」
しかしそんな影山の言葉を肯定するかのように、ゾンビは声を発した。
「たすけて」
「タスケテ」
「助けて」
女の子の声であったり、老人の声であったり、男の声であったりしていた。
朝日も含め、コメント欄が恐怖する。
『怖い』
『ひえええええ!?』
『まさか過去に、ダンジョンで死んだ魂か……?』
『ヤバいヤバい』
『ガチじゃねぇか』
(そうかな……)
ホラーとかそういうのに強い影山は、淡々としていた。
実際、よく聞くとゾンビの発する声は、例えるならばAIっぽさのある、無機質な人間の声なのだ。
感情のこもった、ホラーっぽい「たすけて」ではない。
とはいえ、たしかに不気味なのには変わりなかった。
影山はウォールブレイカーを構え、前へと出る。




