壁に“点”が見えた
『打撃を試してみて、どうでしたか?』
「“線”から“点”に内容が変わりました。ナイフよりは当てやすいです。確証はないですが、武器によって弱点の形が変わるのかもしれません」
弱点を付与し、見抜く“透視”。
その内容はシンプルながらも、色々と試しながら戦うほどに底が見えない。
どうすればもっと使いこなせるのか、弱点を突けるようになるか――考え、試し、分析するだけで心が躍った。
『なんの話?』
話についていけない視聴者のコメントが流れたので、影山はユニークスキル“透視”を説明した。
すると、コメント欄がドンドン加速する。
『透視……聞いたことのないスキルだな』
『弱点の属性を分析するスキルはあった気がするけど、それとは違う感じだよね』
『”点”とか”線”なんてもの、ないんだよなぁ』
『一撃必殺のスキルで草』
『透視こっわ。チートやん』
影山は休憩を切り上げ、歩き出す。
「……とりあえず、もっと戦ってみます」
戦いは続いた。3体目、4体目、5体目――。
無駄な動きを削り、透視を軸にした立ち回りを意識。
素人の荒さが少しずつ減り、積んだ経験値による技術が生まれた。
コメント欄がざわつく。
『飲み込みが早い』
『てか、この人喋らんね』
『無言でスライムをワンパンする配信』
『面白そうだし、強くなりそう。フォローした』
『これは伸びる配信者の予感』
『良いのを発掘したぜ』
(なんか、褒められる……)
社畜時代、人から褒められたことなどはない。
そのせいか、なんだかくすぐったい気分である。
配信も戦闘も問題なく進んでいき――10体目のスライムを倒した瞬間、脳内にシステム音が鳴った。
『――影山 光のLVが2へ上昇しました。HP+5 MP+1 攻撃+1 防御+1 魔力+1 精神+1 俊敏+5』
影山 光 LV1→2
HP 20→25
MP 3→4
攻撃 1→2
防御 3→4
魔力 2→3
精神 3→4
俊敏 11→16
スキル:透視LV1
初のレベルアップ。本来ならば、喜ぶべきことだ。
だが――影山の胸には不安がよぎっていた。
「あの、みなさん。これって強いですか?」
カメラへ向けて、ステータスを見せる。
ふと、アプリを確認すると接続数は29まで伸びていた。
(うわ、なんか増えている)
『すまん、弱い』
『俊敏以外はしょっぱい』
『俊敏エグイ伸びと初期値やな……なんだこれ?』
『スピードあるのは、弱点突くスキルと相性良さそう』
『てか、このステでスライムをワンパンって、透視ヤバすぎだろ』
予想していたが、数値は低いようだ。
普通にショックである。
『無言だけど、これは落ち込んでるな』
『ステータスの数値を上げる方法はあるよ!』
影山は顔を上げ、そのコメントに食いついた。
「本当ですか? ここから強くなれます?」
『不利な条件に身を置くこと。定番は格上とのバトル。スライムは同格判定だからボーナスがないかな~』
『ただしこの方法は危険』
『まあ、スライムじゃ伸びないかもね』
(格上との戦闘……危険は増える。でも……)
スライムのタックルで強い危険を感じた瞬間が、脳裏をよぎる。
怖い。だが同時に、期待と向上心も芽生える。
(才能だけじゃなく、努力で強くなれる要素がある……)
小さな希望だが、かけてもいい可能性だと思った。
(奥に進むか……ん?)
視界の先にある、硬い砂壁に漠然と違和感を覚えた。
なにかに導かれるような、未知の感覚だ。
「……透視、起動」
瞳が青く光り、強化された視界で見る。
砂壁の一点――そこには拳サイズの“点”が青白く光っていた。
影山は壁へと向かう。
『お?』
『どうしたの?』
『唐突な壁ガン見で草』
透視の長いクールタイムを待ち、再び発動。
影山は右拳を握りしめ――青白い“点”を殴った。
ズドンッ!!! ドドドドドドドドド!!!
砂壁が爆音と共に崩れ落ていく。そして人が通れるほどの、ドーム状の穴が開いた。
その先には、通路が続いている。
「……よし」
影山は無表情で、静かにガッツポーズ。
しれっとやったが、この”ダンジョンの隠し通路が発見される映像”は、世界初のものだ。
前代未聞の偉業に、コメント欄が爆発する。




