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【透視チート】会社をクビになった俺、ダンジョン配信でバズって人生逆転する  作者: 音有五角
第一章「ダンジョン配信者、影山 光」

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素手でスライム倒したら、視聴者が少し増えてきた

 ドローンと共にしばらくダンジョン内を移動すると、ぽよんぽよんと跳ねる、3匹目に遭遇した。


『本来であれば素手は危険なので、無理しないでくださいね』


「……どうも」


 視聴者のコメントに、短く小さいながらもあいづちを打つ。

 実際、素手は無謀だ。

 格闘はガントレットと呼ばれる武器をつけるが、それでもない。

 “素手縛り”でない限り、やるメリットはないだろう。

 影山は跳ねるスライムへ向けて、駆けていく。

 スライムが体を変形させ、こちらへ体当たりをしかけた。


「っ!」


 動きを見ながら、そして出来るだけスマートかつコンパクトに動くよう、意識する。

 スライムの体当たりを、1回、2回、3回と回避。

 そしてすれ違いざま。ここだと思った影山は――“透視”を発動。

 瞳が青く光り、両目がじんわりと熱くなる。

 スライムの真ん中に、丸くて青白い”点”が浮かんだ。


(打撃だと、形が変わった!)


 点は拳サイズで小さい。

 けれど、なんとかそこへ当ててやると意気込む。

 影山は右腕でポイントめがけ、パンチを放つ。

 いかにもケンカすらしたことのないような、横から振るう無駄の多い素人パンチ。

 しかしその右拳は、運良く“透視”が示すポイントにバチン! と当たる。


「っ、いたっ……!」


 スライムは見た目よりもしっかりと硬い。まるで硬い泥を殴ったかのようで、拳がズキッと痛んだ。

 手応えだけなら、攻撃できたという感覚はない。むしろこちらにダメージが跳ね返った。しかしスライムはびくっ!!! として、全身をブルブル震わせた。

 そして地面へぐて~~~とチーズのように伸びて、その体が光となって溶けた。

 残ったのは、魔石だけだ。


「やった……!」


 影山は喜んだ。

 今度は、スライムを一撃で倒すことに成功。

 コメント欄も湧いた。いつの間にか、人が増えている。


『おおおおっ!』


『え、待った。この人、素手でスライム倒してる?』


『しかも今の、ワンパンだった?』


『なぜ、フォームもなさそうな素人パンチが通用する?』


『素手縛り? 高レベルの人かな?』


『配信のタイトル初心者マークついている。高レベルではないはず』


 配信初心者は、タイトルに自動で若葉マークがつく仕様だ。


『高レベルでスライム狩る必要ないやろ』


『固定コメ見たけど、どういうことかわからない。素手で力を発揮する、特殊なスキルってこと?』


『だとしたら、苦行スキルじゃん。ガントレットすらダメってことだろ?』


『てか、どんなスキルでも、攻撃力のない素手でワンパンはありえん。だって駆け出しがスライムに時間かかってモタつくのは、パーティーでもあるあるだぞ』


 アプリで接続数を見る。

 8人。全体で見ればかなり少ない方だが、想定を超えているため、影山は驚いた。

 なにせ駆け出し無名探索者。しかもしゃべりが上手いわけではない、男1人の寂しい配信なのだ。

 正直、1人も来ないと思っていた。


(えっと。視聴者が増えた時は、あいさつした方がいいか)


 参考に好きな「あさひチャンネル」を思い出しつつ、頭を軽く下げた。


「初見さん、コメントありがとうございます……」(ボソボソ)


 が、カメラでギリ拾えるくらいの小さな声であった。


『なんて?』


『声が小さい(笑)』


『コミュ障かな?』


『でも、こういう人好感もてる』


『しかしこの静かな男、素手でスライムワンパンである』


『スライムをワンパン? 普通に気になる』


『まあ、配信に関しては強制ですからね。全体から見れば珍しいですが、しゃべるのが嫌々という人もいるでしょう』


 配信という華々しさに憧れて、探索者になる者は多い。影山のように、放送なのにしゃべるのが好きじゃないというのは、視聴者にとって新鮮なようだ。

 影山は壁を背にして座り、休憩。

 そして状況整理がてら、コメントとやり取りしようと考えた。

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