2戦目。透視能力について考える。
二体目のスライム。初戦闘と比べると、影山の動きには明らかな安定感が生まれた。
スライムの動きは単調だしわかりやすい。
動く前にはべこっと身体が歪み、変形する予備動作が、どうしても発生する。
それさえ理解し、見切れれば怖い相手ではない。
そして影山は、飲み込みが早かった。
まだ素人らしい無駄は多い。だが丁寧に回避し、ナイフの攻撃も当てられているため、戦えている。
ただ、課題もある。透視スキルが、上手く扱いきれないのだ。
先ほどは偶然“線”を一発でなぞれたが、動く相手の弱点に細い刃を当てるのは難しい。
しかもチャンスが少なく、見えるのはたった1秒。
さらに影山の感覚では、透視を発動している状態でないと、”線”に効果が出ないように思えた。
スキルレベルはまだ、1。進化の余地はある。
上がれば扱いやすくなるのだろうが、今はダメだ。
その結果。2戦目は、14回という攻撃を重ねての撃破となった。
「……はぁ、はぁ」
岩に背を預けつつ、影山は肩で大きく息をした。
安定して戦えた内容だが、疲労は一戦目より強い。
『さっきより動き良かったですね! 時間はかかりましたが』
たった1人の視聴者のコメント。
情けない戦闘内容だが、飽きずに見てくれているようだが。
影山は返事をした。
「透視スキルの“線”に、狙った場所へナイフが当たらないんです」
『たまに目が光ってましたね。その時に脆い所である”線”が見えるんですか?』
「そうです」
『当てやすい武器を探すのはどうですか? 例えば、打撃は? 細いナイフよりやりやすいのでは』
「……なるほど」
他の武器でも有効なのかは、検証していない。
そうなると、打撃でも弱点を突ける可能性があるということだ。
「試しに、次は素手で挑んでみます」
もし拳でOKなら、話が広がる。棍棒などの打撃武器も有効だろう。
武器の面積が広いし、細いナイフより当てやすいかもしれない。
そう考えてナイフをしまうと、すぐにコメントが打たれた。
『えっ、スライム相手に素手で挑む気ですか?』
「打撃武器なんて、今はないですし」
『攻撃力1で素手縛り(笑)普通ならただの舐めプですよ』
「でも、透視スキルとして試したいんです」
『じゃあ固定コメントつけた方が良いですね。“ユニークスキル検証のため素手で戦ってます”って感じでしょうか』
「え?」
『素手縛りは過激な危険系ダンジョン配信者の定番なので、コメント欄が荒れるんですよ』
危険系――いわゆる迷惑系に近いタイプで、わざと危険な状況を作って視聴者を稼ぐというやり方だ。
当然、あまり良いことではない。
勘違いされるのは、たしかに都合が悪いだろう。
「わかりました。書いておきます」
固定コメントを入力していく。
『それにしても、動きの上達が早いですね。何か運動してました?』
「いえ……ただ、仕事で体は動かしていました」
アルバイトで済むような作業を、残業で押しつけられるのは定番だった。
休憩ほぼなしで十時間以上の肉体労働という日もある。
マイナス10度の冷蔵庫で、重い荷物を延々と運ばされていた。
(嫌なこと思い出したな……)
気分を切り替えようと考え、影山は立ち上がる。
次のスライムを探し始めた。
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